通形ミリオ
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(あらすじ)
BIG3のインターン説明回で腹パンを食らって以来、雪辱を晴らすべくミリオに挑み続ける1-Aの玖珠理。
ミリオが個性を使えなくなってもそれは続き、寮生活開始後は就寝前の人が少ない時間にこっそり抜け出して特訓に付き合ってもらっている。
──────────────────
「くっ、あぁっ!」
辛うじて受身は取ったものの、まともに投げられた衝撃はどうしようもない。肺が収縮し、息が詰まって咳き込んだ。
「いやー惜しかったね。読みは確実に良くなってきてるよ」
私を投げ飛ばした張本人、通形先輩が言う。満月を背負って歩み寄るその姿は至って余裕そうだ、こちらは既に疲労困憊で立ち上がれないと言うのに。
「前から気になってたんだけどさ」
未だうつ伏せに突っ伏したまま呼吸を整える私の頭付近に声が近付いてきた。この人は話しかける時、必ずそばに歩み寄ってくる。
「玖珠理さんはどうしてそんなに、俺に勝つことにこだわるんだい?確かに俺はかなり強いけど、他にも強い人、個性の使い方が上手い人は沢山いる。増してや今の俺は個性が使えないのに」
いつもの飄々とした口調で不思議そうに問いかける。この人はどこまで鈍いんだろう。
「そんなのっ……決まってるじゃないですか」
確かに学園トップから見れば一年坊なんて眼中にもないのかもしれないけど、ここまで来ると腹が立つ。ああ嫌だ嫌だ嫌だ、この人の前でだけは絶対に泣きたくないのに。早く肩を並べられるようになりたいのに。泣いてる暇があるなら早く立ち上がれ。
抑え込みたい涙も気持ちも、一度溢れたらもう止まらなかった。
「例え個性がなくても、誰がなんと言おうと、私にとって通形先輩はかっこいいヒーローなんですよ!ほんとっ……心底悔しいけど、あなたに憧れています。だからこそ!人としてもヒーローとしても、あなたに並びたいし、超えたいんです!」
通形先輩はあまりにも圧倒的過ぎる。戦闘力やヒーローとしての志の高さ・強さは勿論、何より人としてのあり方が。そこにいるだけで笑顔が生まれる、安心出来る。通形ミリオとはそんな人で、超えたくて堪らない私ですら、自分の前に立ってくれているこの人の存在に支えられている。だから憧れているのだ。ヒーローとして、先輩として、そして恐らく異性としても。
「全く、君は本当に強情だねぇ」
呆れたような口調はいつもの数段柔らかい。
不意に頭に乗った温かい重みが、わしゃわしゃと乱れた髪を更に乱していった。
「可愛い後輩にそこまで言われちゃ、手を貸すわけにいかないよね。ゆっくりでいいよ、君が立ち上がるまでちゃんと待ってるから」
やっとの思いで先輩の顔を見上げたら、満月を受けて輝く表情はやっぱり眩しくて、でも見たことないくらい優しくて、何故か余計に涙が滲んでくる。先輩の手が伸びてきて、頬をそっと拭った。
「あーあー、顔面涙と土でぐっちゃぐちゃだよ?」
「言い方……」
「よくこんなになるまでやるよね。まあ俺は君の一生懸命なところ、放っておけなくて好きだけどね!」
「……パンツ履かずにジャージ履くところ、私は嫌です」
忘れていた、何よりもこの先輩の1番腹が立つのは深い意味もなく「好き」を濫用するところだった。たはー!なんて気の抜けた顔で額を抑えている様が憎らしい。そしてこの大きくて温かい手を振り払いたくない自分の気持ちも。
いつかの天喰先輩の言葉を思い出す。確かに通形先輩は「太陽」のような人だ。
近付こうとすればするほどその遠さを思い知らされて、焦がれて、強烈に惹き付けられて目が離せない。
この人を追い続ける限り、ずっとこの悔しさと憧れに焦がされ苦しみ続けるんだろう。
それでも、今はまだ追いかけていたい。この眩しい割に優しい光が見守っていてくれるうちは。
BIG3のインターン説明回で腹パンを食らって以来、雪辱を晴らすべくミリオに挑み続ける1-Aの玖珠理。
ミリオが個性を使えなくなってもそれは続き、寮生活開始後は就寝前の人が少ない時間にこっそり抜け出して特訓に付き合ってもらっている。
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「くっ、あぁっ!」
辛うじて受身は取ったものの、まともに投げられた衝撃はどうしようもない。肺が収縮し、息が詰まって咳き込んだ。
「いやー惜しかったね。読みは確実に良くなってきてるよ」
私を投げ飛ばした張本人、通形先輩が言う。満月を背負って歩み寄るその姿は至って余裕そうだ、こちらは既に疲労困憊で立ち上がれないと言うのに。
「前から気になってたんだけどさ」
未だうつ伏せに突っ伏したまま呼吸を整える私の頭付近に声が近付いてきた。この人は話しかける時、必ずそばに歩み寄ってくる。
「玖珠理さんはどうしてそんなに、俺に勝つことにこだわるんだい?確かに俺はかなり強いけど、他にも強い人、個性の使い方が上手い人は沢山いる。増してや今の俺は個性が使えないのに」
いつもの飄々とした口調で不思議そうに問いかける。この人はどこまで鈍いんだろう。
「そんなのっ……決まってるじゃないですか」
確かに学園トップから見れば一年坊なんて眼中にもないのかもしれないけど、ここまで来ると腹が立つ。ああ嫌だ嫌だ嫌だ、この人の前でだけは絶対に泣きたくないのに。早く肩を並べられるようになりたいのに。泣いてる暇があるなら早く立ち上がれ。
抑え込みたい涙も気持ちも、一度溢れたらもう止まらなかった。
「例え個性がなくても、誰がなんと言おうと、私にとって通形先輩はかっこいいヒーローなんですよ!ほんとっ……心底悔しいけど、あなたに憧れています。だからこそ!人としてもヒーローとしても、あなたに並びたいし、超えたいんです!」
通形先輩はあまりにも圧倒的過ぎる。戦闘力やヒーローとしての志の高さ・強さは勿論、何より人としてのあり方が。そこにいるだけで笑顔が生まれる、安心出来る。通形ミリオとはそんな人で、超えたくて堪らない私ですら、自分の前に立ってくれているこの人の存在に支えられている。だから憧れているのだ。ヒーローとして、先輩として、そして恐らく異性としても。
「全く、君は本当に強情だねぇ」
呆れたような口調はいつもの数段柔らかい。
不意に頭に乗った温かい重みが、わしゃわしゃと乱れた髪を更に乱していった。
「可愛い後輩にそこまで言われちゃ、手を貸すわけにいかないよね。ゆっくりでいいよ、君が立ち上がるまでちゃんと待ってるから」
やっとの思いで先輩の顔を見上げたら、満月を受けて輝く表情はやっぱり眩しくて、でも見たことないくらい優しくて、何故か余計に涙が滲んでくる。先輩の手が伸びてきて、頬をそっと拭った。
「あーあー、顔面涙と土でぐっちゃぐちゃだよ?」
「言い方……」
「よくこんなになるまでやるよね。まあ俺は君の一生懸命なところ、放っておけなくて好きだけどね!」
「……パンツ履かずにジャージ履くところ、私は嫌です」
忘れていた、何よりもこの先輩の1番腹が立つのは深い意味もなく「好き」を濫用するところだった。たはー!なんて気の抜けた顔で額を抑えている様が憎らしい。そしてこの大きくて温かい手を振り払いたくない自分の気持ちも。
いつかの天喰先輩の言葉を思い出す。確かに通形先輩は「太陽」のような人だ。
近付こうとすればするほどその遠さを思い知らされて、焦がれて、強烈に惹き付けられて目が離せない。
この人を追い続ける限り、ずっとこの悔しさと憧れに焦がされ苦しみ続けるんだろう。
それでも、今はまだ追いかけていたい。この眩しい割に優しい光が見守っていてくれるうちは。
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