短編
神様なんて知らなかった。そんなものがいるなんて誰も教えてくれなかった。助けてくれるのはナイフ一本で、空から見守ってくれる誰かの視線なんて気づけるわけなかった。だからきっとばちが当たったんだろう。俺が大切だと思ったものはみんないなくなる。それはその神様っていうのを知らなかった俺への罰なんだ。
でも、それなら、最初に教えておいてほしかった。そうすれば、こんなことにはならなかったかもしれないのに。
「なあ」
「うん」
「お前も死ぬのか?」
「わかんない」
死ぬんだろうなあ、と俺は思った。今まで見送った仲間と同じ顔してる。お前もいなくなるんだなあ。俺を置いていくんだなあ。
「ナワーブくんは」
「うん」
「神様って信じる?」
知らないから、わからない。
そう答えたのに、返事は返ってこなくて、抱えた体からは力が抜けて、これからどんどん冷たくなって、それで、もう、動かない。
知らないことはいけないことだろうか。教えてもらえなかっただけでこんなにひどい仕打ちを受けなきゃいけないんだろうか。俺にはもうなにもわからない。わからなくて、苦しくて、胸をかきむしって叫んだ。叫んで、叫んで、そこで目が覚めた。
「ナワーブくん?」
となりで心配そうに俺を覗き込んでいるのは、さっき、たぶん、夢の中で俺を置いていったあいつだ。
「ゆめだ」
「悪い夢?」
「そう、だと、おもう」
「そっかあ。大丈夫だよ、もう大丈夫。怖かったね、もう平気だから」
「うん、うん」
抱きしめられて、その体があたたかくて、柔らかくて、とくとく、音が聞こえてくるのにひどく安心して、甘えるようにすり寄った。
「大丈夫、神様が守ってくださる。ずっとわたしたちのことを、見守ってくださるからね」
だから、ずっと、ここにいようね。なにがあっても、一緒にいようね。知らないはずの神様の声は、きっとこんな感じなんだろうな。甘くて、とろけるくらいに優しくて、心地いい。俺の神様。俺だけの神様。
「俺は信じるよ」
髪を梳く指にうとうとと舟をこぐ。空から降ってくるこの声だけが、俺を守ってくれる。
でも、それなら、最初に教えておいてほしかった。そうすれば、こんなことにはならなかったかもしれないのに。
「なあ」
「うん」
「お前も死ぬのか?」
「わかんない」
死ぬんだろうなあ、と俺は思った。今まで見送った仲間と同じ顔してる。お前もいなくなるんだなあ。俺を置いていくんだなあ。
「ナワーブくんは」
「うん」
「神様って信じる?」
知らないから、わからない。
そう答えたのに、返事は返ってこなくて、抱えた体からは力が抜けて、これからどんどん冷たくなって、それで、もう、動かない。
知らないことはいけないことだろうか。教えてもらえなかっただけでこんなにひどい仕打ちを受けなきゃいけないんだろうか。俺にはもうなにもわからない。わからなくて、苦しくて、胸をかきむしって叫んだ。叫んで、叫んで、そこで目が覚めた。
「ナワーブくん?」
となりで心配そうに俺を覗き込んでいるのは、さっき、たぶん、夢の中で俺を置いていったあいつだ。
「ゆめだ」
「悪い夢?」
「そう、だと、おもう」
「そっかあ。大丈夫だよ、もう大丈夫。怖かったね、もう平気だから」
「うん、うん」
抱きしめられて、その体があたたかくて、柔らかくて、とくとく、音が聞こえてくるのにひどく安心して、甘えるようにすり寄った。
「大丈夫、神様が守ってくださる。ずっとわたしたちのことを、見守ってくださるからね」
だから、ずっと、ここにいようね。なにがあっても、一緒にいようね。知らないはずの神様の声は、きっとこんな感じなんだろうな。甘くて、とろけるくらいに優しくて、心地いい。俺の神様。俺だけの神様。
「俺は信じるよ」
髪を梳く指にうとうとと舟をこぐ。空から降ってくるこの声だけが、俺を守ってくれる。
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