バカンスの始まり
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「んー!」
終着駅のホームに降り立ち、大きく伸びをする女。周りと比べると幾分小柄な身体に不釣り合いなバックパックを背負っている。なんせ、ここまで長かった。フィレンツェから各駅に止まる列車に乗って、ローマ・テルミニ駅で途中下車してついでに観光までしたものだからここネアポリスに到着するまで随分と時間がかかってしまった。
伸びをしてふぅ、と力を抜いて振り下ろした腕がちょうど通りかかった中年女性の肩に当たり怪訝な視線を向けられた。その視線にバツが悪そうに肩を竦めては歩き始めるこの少女……に見えるが立派な成人女性である……は岸辺さくら。ここイタリアから直行便の飛行機でも半日ほどかかるアジアの島国で生まれ育った彼女は幼い頃からの夢であった絵画修復士になるために高校卒業後フィレンツェの大学への進学を決めた。
そしてつい先日、数回目の夏休みが始まったのである。留学生ながら優秀な成績をおさめるさくらを何かと気に掛けてくれる教授が彼女に夏休みの予定を聞くと母国へ帰国もせずにだらだらと日雇いのアルバイトでもすると答えるので、『それならネアポリスに知り合いの腕利修復士がいる。今ちょうど猫の手が借りたいらしいので、旅行を兼ねて行ってみないか。日雇いのアルバイトよりずっと安いだろうが謝礼も出すそうだ』と提案したのだった。
もちろん二つ返事で承諾して、今日ネアポリスに到着したというわけだ。
ーーさてと。
駅で路線バスに乗り換え、自身で手配した宿を目指す。空いている席に座り教授にもらった地図を広げた。今やネットサーフィンでその場でなんでも調べられる時代であるが、生憎彼女はそういった通信機器は持っていない。わざわざ調べるのが好きだったし、常に誰かと連絡を取り合うのも鬱陶しい。そして何より紙媒体が好きだった。どうしてものときは大学の図書館にあるパソコンで十分事足りた。
バスを降りて地図片手に宿の場所の見当をつけ、
歩き出す。地図を読むのは得意な方だ。それに一度通った道は忘れない。迷子になったことなど一度もないのだ。
終着駅のホームに降り立ち、大きく伸びをする女。周りと比べると幾分小柄な身体に不釣り合いなバックパックを背負っている。なんせ、ここまで長かった。フィレンツェから各駅に止まる列車に乗って、ローマ・テルミニ駅で途中下車してついでに観光までしたものだからここネアポリスに到着するまで随分と時間がかかってしまった。
伸びをしてふぅ、と力を抜いて振り下ろした腕がちょうど通りかかった中年女性の肩に当たり怪訝な視線を向けられた。その視線にバツが悪そうに肩を竦めては歩き始めるこの少女……に見えるが立派な成人女性である……は岸辺さくら。ここイタリアから直行便の飛行機でも半日ほどかかるアジアの島国で生まれ育った彼女は幼い頃からの夢であった絵画修復士になるために高校卒業後フィレンツェの大学への進学を決めた。
そしてつい先日、数回目の夏休みが始まったのである。留学生ながら優秀な成績をおさめるさくらを何かと気に掛けてくれる教授が彼女に夏休みの予定を聞くと母国へ帰国もせずにだらだらと日雇いのアルバイトでもすると答えるので、『それならネアポリスに知り合いの腕利修復士がいる。今ちょうど猫の手が借りたいらしいので、旅行を兼ねて行ってみないか。日雇いのアルバイトよりずっと安いだろうが謝礼も出すそうだ』と提案したのだった。
もちろん二つ返事で承諾して、今日ネアポリスに到着したというわけだ。
ーーさてと。
駅で路線バスに乗り換え、自身で手配した宿を目指す。空いている席に座り教授にもらった地図を広げた。今やネットサーフィンでその場でなんでも調べられる時代であるが、生憎彼女はそういった通信機器は持っていない。わざわざ調べるのが好きだったし、常に誰かと連絡を取り合うのも鬱陶しい。そして何より紙媒体が好きだった。どうしてものときは大学の図書館にあるパソコンで十分事足りた。
バスを降りて地図片手に宿の場所の見当をつけ、
歩き出す。地図を読むのは得意な方だ。それに一度通った道は忘れない。迷子になったことなど一度もないのだ。