退院したあと
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フードを被り夜の街を当てもなく歩いていると黒塗りの高級車が道路に止めてあり、いかにもそっち系の方が乗っているのか厳ついスーツ姿の男達が10人ほど並んでいた
この道通るのはやめよーっと…
絶対ヤクザ関連の人達だと勘づいた私はわざと反対の道を通ろうとしたが、向こう側に帽子を深く被った男がナイフを持っているのに気がついた
チラッとしか見えなかったため、車の付近に立っている厳つい男達の目には入ってなかった為気づいていなかった…
さっきチラッと見えたのナイフだったよね…
店から出てくる奴を狙うつもり?
はぁ…目の前で刺されるのは胸糞悪いしな…
見ちゃった手前、仕方ないから助けるか
ビルから黒い着物着てグレーの羽織に身を包んだお爺ちゃんが杖をつきながら出てきた
ナイフを持った男はビルから出てきたお爺ちゃんを見ると走り出したので狙いがあの人だと理解した私は身体が勝手に動き、車を飛び越えお爺ちゃんの前に立つとナイフの男の顔面に蹴りを入れ地面に叩き込んだ
私の突然の行動にスーツに身を包んだ男達が一斉に私を取り囲み、胸元から拳銃を取り出し私の頭に銃口を向けた
「貴様!何者だ!?」
「オマエ達やめねぇか!チャカを終え!堅気のお嬢さんに失礼だ」
「この男がナイフでお爺ちゃんを刺そうとしてたから蹴り倒しただけ。目の前で死を見るのはもう嫌だったからね…ただそれだけのことだから」
地面で伸びている男の体を厳つい男達が調べるとナイフが出てきて"本当だ…,っと呟き私の行動を理解してくれたようだ
「オマエ達よりも堅気の娘さんの方が洞察力が優れておるの、オマエ達この男を連れて下がれ」
ダンディなお爺ちゃんは厳つい男達の上司らしく、命令すると倒れた男を連れ去りその場からいなくなった
「お嬢さん、儂を助けてくれてありがとう。お嬢さんが気づかなかったら儂は刺されておった。お礼をさせてほしい、美味しいお店でもご一緒にいかがかな?」
「私が勝手にしたことだからいいよ」
ダンディなお爺ちゃんだがヤバそうな匂いがぷんぷんしているのでその場から早く立ち去りたかったが、お爺ちゃんは私の手を掴み逃しはしなかった
「まぁそう言わずに…こんな時間をふらついていては警察に捕まってしまうよ。美味しい和食などいかがかな?」
「親父…お若いからイタリアなどの方がよろしいかと…」
お爺ちゃんの隣にいた眼鏡を掛けたインテリ男が助言をするとそうか?っと納得し私を黒塗りの高級車に無理矢理乗せ車を走らせた
無理矢理乗せられた私はニコニコ笑っているお爺ちゃんの隣に座らせられ、インテリ眼鏡さんは助手席でノートパソコンを開き眺めていた…
さっきの会話と言いこのお爺ちゃんの雰囲気といい…
絶対普通の金持ちのお爺ちゃんではないよね…
はぁ…
やっぱ助けるんじゃなかった
「私今ご飯食べれないので…出来ればカフェみたいな感じのところでお茶飲むだけでいいんですけど…?」
「わかりました。なら親父、イタリアンは変更してお嬢さんでも飲めるノンアルのカクテルが美味しいお店にしますね」
わざとカフェとか言って困らせてお店に行かない展開にするはずだったのに…
インテリ眼鏡…マジで空気読めない…
インテリ眼鏡のスーツがいらん事を言い運転手に行き先を変更させて目的地へと車走らせた…
店の前に着くとインテリ眼鏡と運転手さんが車のドアを開けてくれたので車から降りた…
「お嬢さん、取って食うことなんてしないから安心なさい。ここは儂の飲みに来る店だから他に客もおらん、安心してお茶しよう!」
「いや…それが私にとっては安心できないんだけどな…」
溜息を吐きながらお爺ちゃんは私の手を握って店の中へと連れて行ってくれた…
そこは小さなバーカウンターしか席がなかったが、何故か壁が水槽になっていて綺麗な熱帯魚達が泳いでいた
お爺ちゃんがカウンターの席に座るように促してくれたので、逃げられない私は諦めて座った
お爺ちゃんはインテリ眼鏡に杖を渡すと私の隣に座り、インテリ眼鏡は後ろで立って待つようだ…
「悪いがお嬢さんにノンアルのカクテルを頼む、儂はいつもので」
お爺さんの言葉を聞いた年配のバーテンダーはお任せくださいと言ってカクテルを作り始めた
「儂は神水流環(たまき)と言うんだが、お嬢さんのお名前を聞いてもいいかな?」
「神水流…お爺ちゃんも神水流って言うの?珍しい苗字なのに凄い偶然!私は神水流樹って言うの」
「樹ちゃんと言うのかい…神水流は珍しい苗字だからね、これは驚いた…」
お爺ちゃんの目をじーっと見つめるとニコッと笑った
するとバーテンダーがお爺ちゃんに日本酒を注いだグラスを出し、私にルビーのような薄い赤色の綺麗なカクテルを作ってくれた
「シャーリーテンプルといって甘酸っぱいジンジャエールです。グレナデンシロップと言ってザクロのシロップでジンジャエールに入れて作りました、どうぞお飲みください」
作ってくれたカクテルは凄く綺麗で私は見惚れてしまった…
一口飲んでみるとジンジャーエールに甘さが加わり凄く飲みやすくて、頬が緩んでしまった
「凄く美味しい…ありがとうございます!」
「樹ちゃんが気に入ってくれて儂は嬉しいよ。助けてくれたのは嬉しいけど、こんな時間にましてや子供の君が出歩くのはよろしくないな…家の人との関係が上手くいってないのかい…?
「父とは仲いい関係だから心配しなくても大丈夫!ただ…最近大切な人の死を目の前で見ちゃってから1人で家にいても寝れないから街をふらふらしてただけ…」
圭くんがくれたピアスを触りながらカクテルを見つめていた
「そうか…大切な人を亡くしたのか…お父さんは家にいないのかい?」
「長距離トラックの仕事してるからほぼ家にいない、前は慣れっこだったんだけどね…
環お爺ちゃんはヤクザ?ただのダンディなお爺ちゃんじゃないよね、身なりがまず一般人じゃない。高価な着物に堅気にチャカの用語…そしてインテリ眼鏡の胸元に隠してる拳銃…私をここに連れてきて何が狙いな訳?」
私の言葉に驚きアハハッと豪快に笑った
「樹ちゃんの洞察力には恐れ入った!ここに連れてきたのは本当に助けてもらったお礼がしたかったからだよ、君の蹴りに惚れたのもある。きちんと挨拶をせねば…神羽会(しんわかい)会長 神水流環(かみづるたまき)だ、儂の息子が組みを動かしているからの…もう隠居のじじいだよ」
日本酒を一気に飲み私をニコニコ笑顔で見つめてきた
神羽会っていったら関東一の勢力を誇る極道じゃん…
一般人の私でも知ってる名前なんだけど…
マジか…私が助けなくても爺ちゃん大丈夫だったんじゃない?
「マジか…環お爺ちゃん、そんなヤバい人だったわけ。中坊の私が出しゃばってすみません!!」
椅子から降りて環お爺ちゃんに頭を下げた…
「組みの者達は気づいてなかったからの、本当に助かった。樹ちゃん東京の夜は危ないからね、寝れないときはここの店に遊びに来なさい。お金は気にしないでいい、儂の恩人に金を出さすことなどしないよ。カクテル気に入ったようだしいつでも遊びに来なさい。」
「いや…それは申し訳ないって言うか…」
「樹ちゃん、返事は?」
環お爺ちゃんの笑顔の下の無言の圧力に私は負けて首を立てにして了承すると、環お爺ちゃんは喜び抱きついてきた…
すると後ろで静かに立っていたインテリ眼鏡が環お爺ちゃんの耳元で何かを伝え、わかったと頷き私から離れた
「樹ちゃん今日は危ないから儂が家まで連れて帰ろう」
「いや…家教えるのはちょっと勇気ないからタクシーで帰ります…」
「そんな遠慮しなくても、儂と樹ちゃんの仲ではないか!」
「親父、堅気の娘さんですし。ここはタクシーで帰りたいと思いますよ」
インテリ眼鏡のヤクザさん!good job!
その言葉に思わず私は心の中で突っ込んだ
「そうか?ならお金は払おう、さぁ樹ちゃん。ちゃんと真っ直ぐ帰るんだよ」
「なんかすみません、ごちそうさまでした!ありがとうございました!」
環お爺ちゃんにお礼を述べ店から出ると、運転手さんがタクシーを捕まえてくれていたので乗り込んだ
インテリ眼鏡さん万札5枚タクシーの運転手さんに渡していた
「環お爺ちゃんありがとうございました、おやすみなさい」
「あぁ、また今度会おう。おやすみ」
関東一の神羽会の会長さんに見送られながら私は家へと帰って行った…
タクシーが見えなくなると環お爺ちゃんは黒塗りの高級車へと乗り込んだ…
「獅稀(しき)、神水流樹を調べろ…あの容姿にあの蹴り…似ている…」
「苗字を聞いて私も驚きました…親父、もう調べましたよ…神水流樹様の父親は神水流基様で間違いないです!」
インテリ眼鏡は獅稀と言う名のようで、ノートパソコンを自分の上司である環会長に渡した
そこには基と樹の写真と個人情報がすべて記されていた…
「こんな偶然があるのか…獅稀…。やはりアレは基の娘か…あのバカ孫が親になるとは…いい娘に育てたようだな。」
「瑞(みずき)様も驚くでしょうね、家出息子の基様が見つかり、その娘まで見つかったのですから」
「ひ孫に助けられるとは…神様の悪戯か…何せ今日はめでたい!!」
「親父、樹様が倒した男は日向組のチンピラだとわかりました。身体はあちらにきちんと送り返しておきました…」
「あのチンピラのおかげで樹と出会えたからな、殺してないだろうな?」
「樹様との出会いの日を血で染め上げませんよ」
「さすが獅稀…さて、帰ってあのバカ息子にひ孫とのデートした話しでもしてやろうかの」
ゲラゲラ笑うと黒塗りの高級車は東京の街を走り去り、2人がこのような話をしていたことなど私は知りもしなかった…