番外編
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恵が高専に入学し、みんなでお花見してお祝いパーティーをした数日後…
満開だった桜はすべて散り、葉桜となっていた
私は七海くんと久しぶりの合同任務で飛行機に乗り、島根県へとやって来ていた
出雲縁結び空港に着くと、ご当地キャラのしまねっこ像や出雲阿国のオブジェが飾られていた
島根と言えば出雲大社が有名で旧暦の十月・神在月と呼び
八百万の神々が集まり人々の縁を結ぶ神議(かみはかり)がおこなわれる社として有名だ
まぁ私たちは有名スポットには行かず、七海くんとタクシーへと乗ると
とある山の中にある村へと向かっていた
今から向かう村には数十人しか住んでいない小さな村なのだが、その村の山の中で学生十四人が変死体で発見されるという事件が発生した
どうやら十四人は山の中の廃墟とかしたある屋敷へと、肝試しをしに遊びに来ていたようだと書類には書かれていた
警察も犯人が分からず村の人達が祟りだと気味悪がり、依頼してきたようだ
呪術師であるならこの案件は呪霊の所為だと理解できるが、非術師の警察達に解決できない案件だ…
「私一人の任務だった筈ですが、特級術師である由奈さんに来てもらって申し訳ないですね。今日はよろしくお願いします」
「七海くんは私の先輩だからね〜変に気を遣わないでね。この案件は一級術師の七海くんで大丈夫だけど、私の感が騒いでね〜夜蛾学長に言って合同任務にしてもらったのさ」
「そうですか。それよりもよくあの五条さんが泊まりがけのこの任務を承諾しましたね…」
由奈のことが大好きで、自分以外の異性は全員敵と見ているはずなのに…
由奈さんとの泊まりがけの任務を簡単に行かせることなどしないはず
七海くんはiPadで今回の任務の情報を見ながら私に問いた
窓を少し開け風を感じながら、顎に手を当て新緑が広がる山を見つめた
「いや、本当あの悟には手を焼いたよ…この任務が終わったら一週間私を好きにしていい条件で折れてくれたんだよね…はぁ、帰りたくないな〜」
七海くんみたいなしっかりした大人になってくれたらいいんだけどね〜
悟にそれを望むのは無理か…
私の言葉を聞いた七海くんはご愁傷様ですと言うと憐れんだ目で私の肩を叩いた
長い時間タクシーでの移動で揺れが眠気を誘い、私はいつの間にか寝てしまっていた
七海くんに肩を叩かれ目を開けると、辺り一面田んぼと畑が広がる長閑な村へと着いていた
「ごめん!寝ちゃってた、荷物持つよ!」
「由奈さんはまだ子供なんですから、大人に甘えていいんですよ」
そう言って七海くんはタクシーの運転手さんにお金を払うと、自分の荷物と私の荷物を持って村へと歩き
村の家は下見板張の壁の瓦は赤い石州瓦でつくらた家々が並んでいた
赤というより橙色に近い瓦の色だった
小さな村なのでホテルや旅館もないので、民宿をされてる家が一箇所あったので
そこの宿に予約をいれていたのでその宿へと七海くんと向かった
民宿の玄関前には三毛猫達が三匹丸まってお昼寝をしており、それを見た私は癒されそっと猫の頭を撫でてあげた
「あらけー!ごだっしゃい!」
玄関が開くと、手ぬぐいを頭に巻いている可愛らしいおばあさんが出迎えてくれた
七海くんも私も方言で話かけられたので何て言っているかわからず、どう返せばいいのかわからず固まっていた
「お母さん、方言丸出しで都会の方には通じませんて!ごだっしゃいは方言でいらっしゃいってことなんです。こんな田舎までよく来てくださいまして、どうぞ上がってください!」
奥から五十代ぐらいの女性が走って現れスリッパを出して部屋へと上がるよう促し、先程のお婆ちゃんの方言の意味を教えてくれた
「宿泊予約していた七海です、お邪魔します」
七海くんと私は玄関で靴を脱ぎ、泊まる民宿の部屋へと上がった
階段を上がり、広々とした和室へと通された
「このお部屋をお使いください、浴衣はこちらに用意してますのでお二人とも使ってください。お風呂は十七時から二十一時までの内に入ってください、温泉ではないですが檜風呂になってます。お夕食は十八時からこちらに持って来ますね。お布団はこちらにありますので、寝るときにご自分で敷いてもらうようになってますので。」
「わかりました、ありがとうございます。それで遺体が発見された山の中の廃墟の屋敷に行くには山へは何処から登ったらいいのか教えてもらいたいのですが」
民宿のお母さんは七海くんと私にお茶を入れていた手を止め、少し暗い表情で固まった
「話したくないなら大丈夫ですよ、自分達で調べますので」
私はそっとお母さんの震える手を握り、落ち着かせるように撫でた
「いえ大丈夫です。ここの民宿の裏に山への入り口がありまして…古いですが一本道なのでずっと登っていけばあの廃墟とかした屋敷があります。あそこは村の人達は絶対に行きません…貴方のような若い方にアレをお願いしてしまう私達は愚かな大人ですね」
「確かに由奈さんは学生でまだ子供ですが、大人の私より強いですよ。安心してください、廃墟にいる輩は私達が祓いますので」
七海くんは入れてくれたお茶を飲むと、晩ご飯までには帰ってきますと言って私を連れて民宿の裏にある入り口へと向かった
裏に回ると確かに人が通れる道があったのでそこを登って呪霊のいる場所へと歩き始めた
七海くんは腕時計を眺めると針は十六時過ぎを指していた
「晩御飯までには終わらせないとね〜出雲そばにしじみ汁!楽しみだね、七海くん」
「そうですね、早く帰って檜風呂も入りたいですし。十六時までに終わらせて下山しないといけませんね」
民宿の夕食は何が出るのか話しているうちに、学生達が殺害された廃墟の屋敷へと着いた
まだ昼だが山の中は薄暗く、いつの時代かわからないが昔は立派な屋敷だったのだろう
塀は朽ち果て屋根は崩れ落ち、割れた瓦や柱が散乱していた
七海くんが帳を下ろし私達は廃墟の屋敷へと一歩入った
すると呪霊の生得領域に入ったのか…
廃墟にいたはずの私達は神社にあるような大きな注連縄が張り巡らされた暗闇の中にいた
七海くんは符を巻いた大振りの刃物を手に持ち、まだ見ぬ呪霊へと警戒しつつ先へと進んだ
「情報では一級呪霊でしたが、特級に部類に入りそうですね…由奈さんの読みが当たりましたね」
「私の予感は当たるからね〜」
煙草に火をつけると吸い始めた私に、七海くんはいい加減辞めたほうがいいですよといつものように叱られた
「いた」
進んでいた足を止めると、目の前に顔がない小さな赤ん坊が中に浮いていた
「またキタ。マま、殺シて食ベヨウ。僕タチの敵ダ!」
暗闇から細身の背が高い黒髪の女が現れた
「坊ヤの願イは…母ノ私ガ聞いテあゲル」
女の呪霊の腹から無数の手が伸びて来て、七海くんと私を殺しにかかってきた
無数の手に触れないように逃げ回りながら、私は呪霊を分析していた
意思疎通ができる呪霊か、七海くんだけだったらやばかったね
女の呪霊は一級ぐらい、赤ん坊の方が特級ってとこかな…
厄介だね…
「七海くん、女の方お願いできる?」
「大丈夫ですよ、由奈さんは赤ん坊をお願いします!」
七海くんは呪霊の無数の手を大振りの刃物で切り落とし、女の呪霊を真っ二つに切り裂いた
倒したと思った呪霊は祓われておらず、切り裂かれた身体がくっつき再び蘇り
七海くんへと襲いかり、七海くんは攻撃から逃げていた
「へ〜、やるね。君があの呪霊を操ってるんだ。呪霊が呪霊を操るなんて初めて見たよ。」
「アレはマまダ!君ハ特別!僕ノマまニしてアゲる!」
顔がない赤ん坊は何本もの注連縄を私に放ち、私は紫電呪術で電流を放って払い落とし
た
だが再び何本もの注連縄が私を捕らえようと巻きついてきた
キリがないと瞬時に判断した私は七海くんの側へと移動し、吸っていた煙草の火を消し投げ捨てた
「七海くん私の側にいて、手っ取り早く領域展開して祓うわ。」
七海くんは私の隣に立つと頷いたのを見た私は手を赤ん坊へと向け、指を鳴らすように構えた
「領域展開 迅雷風列」
私の領域展開は激しい雷と強烈な雨風の領域
雷・雨・風の三種類を使い、領域内に入った時点で激しい雷に打たれ死ぬ…
私の領域内に閉じ込められた赤ん坊と女の呪霊は激しい雷を絶え間なく浴びせられ、さらに強烈な風に身体を切り刻まれた呪霊は跡形もなく祓い消え去った
呪霊が祓えたので生得領域は消え、廃墟の屋敷の中に私達は立っていた
「赤ん坊の方が特級呪霊だったんですね。私一人なら祓えませんでした、ありがとうございます。それに時間通りです」
七海くんの時計を見ると十七時ぴったりだった
祓え終えた私達は山を降りた
「よかった〜。それにしても…最近呪霊の質が上がって来たね。この案件といい…少し心配だな」
「先程の呪霊、初めて出会うタイプでしたね。呪霊が呪霊を操る…驚きましたよ」
「恨みや後悔…恥辱などの人間の身体から流れた負の感情が具現し、意思をもった異形の存在が呪霊。人がいるかぎり呪霊は永遠と生まれる…人と呪霊が仲良く暮らせたら、一番平和なんだけどね〜ねぇ、七海くん」
私の話を聞いた七海くんはそっと優しく抱きしめてくれた
「貴方は夏油さんみたいに闇に堕ちないでくださいね…由奈さんはまだ子供なんですから、大人に甘えていいんですよ」
その言葉を聞いた私はギュッと抱きしめる手に力を入れた
「大丈夫だよ、心配してくれてありがと〜七海くんにはいつも甘えさせてもらってるよ!さぁお風呂入って夕食食べよ〜せっかくの泊まりなんだからゆっくり満喫しよ♪」
山を降りると宿が見え私達が帰ってきたことにお婆ちゃんとおばさん達は泣いてありがとうございますと頭を下げて喜んでいた
汗をかいたのもあって私と七海くんは夕食の前にお風呂に入ることにした
一緒に入っても大丈夫だよと七海くんには言ったが何故か怒られ、檜風呂は私が入ることになり
七海くんは露天風呂があったのでそっちに入ることになった
檜風呂は温泉じゃなかったけど凄く気持ちよくて、先程の呪霊の闘いを忘れさせてくれるぐらい極楽の気分だった
浴衣に着替え部屋へと入ると、先に風呂から上がり部屋に七海くんが戻っていた
お風呂に入ったのでいつも見慣れている七海くんとは違ってなんか新鮮だった
下ろし髪の毛にサングラスを外した浴衣姿の七海くんは凄くエロくて、私は少し頬を赤く染めた
「いつも二つのお団子に髪を下ろしている由奈さんしか見たことなかったので、髪を結ってない姿はなんか新鮮ですね」
七海くんも私と同じことを考えてたんだ
なんか似たもの同士だね〜
「ありがと、髪の毛長いからねクリップで留めてあげたの」
くるっと七海くんの前で回り、髪を留めているリボンの形をしたクリップを見せた
すると襖が開いて、民宿の女将さんが夕食を運んできてくれた
机には山菜料理や出雲そばが並び凄く美味しそうだった
「お二人とも村の為にありがとうございました!我が民宿の夕食を堪能してください。」
女将は一礼すると部屋から出て行った
私と七海くんは手を合わせ夕食を頂いた
お腹が空いていたのもあって二人とも全部完食して、デザートのプリンも完食した
出雲そばが美味しかったので、恵達へのお土産は出雲そばを買って帰ってあげようと私は決めた
食べ終わってお茶を飲んでいると女将さんが食べ終わった皿を下げにきてくれた
七海くんが食べ終わってゴロゴロしている私を見て、布団を敷いてくれた
「そう言えば、いつもはうるさく連絡が来るのに五条さんから連絡来てないんですか?」
「気が狂ったように電話してくるから携帯置いてきたんだよね〜せっかくの泊まりがけの任務だから、ゆっくりしたくてさ」
なるほどと頷くと七海くんは私に気を使ったのか、自分の布団を端に敷いて私の布団から遠い場所にわざと敷いていた
「本来なら二部屋とるべきだったんですが、この民宿は一部屋しかないんですよ。なので布団を引き離して敷きますね」
私は七海くんの布団を無理矢理くっつけた
「離さなくていいよ、二つここに敷いて一緒に寝よ。甘えていいんでしょ?」
私の言葉に反論できなかったのか七海くんはため息を吐くと、五条さんには内緒ですよと言って電気を消して布団へと入った
内緒ねと言って私も布団の中へと入った
東京の賑やかな夜とは違い…
静かすぎるこの地の虫たちの声が微かに私の耳へと聞こえてきた
眠れないのもあって、私は布団の中から窓の向こう側に輝く星を見つめていた
布団の中で黙っていた七海くんが口を開き、私を見つめた
「由奈さん…
ずっと思っていたことなんですが…
夏油さんがいないこの世界はあなたにとって幸せなんですか?
由奈さんにとって最愛の人だったはず…
最愛の人を五条さんに殺されてるのに、どうしてあなたは五条さんの隣にいることができるんですか?」
「珍しいね、七海くんから傑の名が出るなんて。そうだね…傑がいない世界は悲しいよ。私は傑の隣にいたかったからね。
でもね…死んだ傑は私の中に記憶として生きてるよ。
愛してる傑に悟を任せられたら死ねないでしょ〜
それに悟の描く呪術界を手助けしたいのもある。
恵や真希達…大好きな人達がいるこの世界は…私にとって幸せだよ。その中にはもちろん七海くんもいるからね〜♪」
そう言って七海くんのサラサラな前髪を撫でると
あなたが幸せなら私は何も言いませんと言い、少し頬を赤く染めていた
私は七海くんにおやすみと伝えるといつの間にか夢の中へと導かれてしまった
由奈
悟の声が聞こえる…
夢なんだからもう少しだけ寝かせなさいよ
由奈!起きてって!!
うるさすぎて目を覚ました私は何故か七海くんの布団に入り、七海くんを抱き枕のように抱きついて寝てしまったようだ
そして何故か私の頭上に目隠しを外した悟が立っていた
「おはよー!由奈が携帯置いていくからさ、任務終わって直行で会いにきたよ♪僕って優しいでしょ!」
ぺこちゃんのように舌を出し笑っていた悟を無視して、七海くんの布団の中へと潜り寝ようとしたが悟に布団を奪われ失敗に終わった
布団を剥ぎ取られた七海くんが目を覚ました
「あっ、七海起きた?おはー!てか由奈から離れてくれない?」
悟にいわれて七海くんは私に抱きつかれている状況に固まった
寝相が悪かったようで浴衣が少し崩れて、胸が丸見えの状態だった
「七海くん、おはよ〜なんか悟が来ちゃったみたいなんだよね。起きて朝ごはん食べよ」
起き上がり欠伸をする私に七海くんはすかさず乱れた浴衣を直してくれた
「ねぇねー。もしかして七海さ…由奈襲っちゃった感じ?」
「五条さんじゃないんですからしませんよ、由奈さんが寝ぼけて布団に入っていただけです。それよりも何故五条さんがここにいるんですか?」
「大好きな由奈が七海と泊まりがけで任務に行ったからさー、やっぱ気になるじゃん♪しかも携帯忘れて連絡出来なかったから来ちゃったわけ。民宿のおばちゃんには伝えてあるから朝ごはん食べよーぜ」
悟の我が道を行く行動に七海はため息を吐くと顔を洗いにいった
それと同時に女将さんが朝食を悟の分含めて、三人分用意して持ってきてくれた
「急に一人増えちゃってすみません」
「いいのよ、こんなイケメンさんの頼み事ならおばちゃん聞いちゃうわよ♪」
女将さんは笑って配膳をすませると部屋から出て行った
顔を洗った七海くんも来たので三人で手を合わすと朝ごはんを食べた
食べ終わって民宿の女将さん達にお世話になりましたとお礼を述べると、女将さんとお婆ちゃんはこっちこそありがとうございましたと深々と頭を下げ
呪霊を祓ったことに感謝された
タクシーを呼んでいたので私達は乗り込み、飛行機に乗って高専まで帰るので空港まで向かった
「んで今回の呪霊、由奈の予感通り特級クラスだったわけ?」
背が高いので悟は助手席に乗り、後部座席に座る私へと話かけた
「私の予感的中〜しかも意思疎通ができて呪霊が呪霊を操る特級だった。」
「ふーん、呪霊のレベルがあがってきてるのか…まぁ七海が死ななくてよかった。せっかく島根来たからさ、出雲ぜんざいとどじょう掬いまんじゅうと彩雲堂の若草食べて帰りたいんだよねー!ってことで観光して帰ろー!」
悟の提案に七海くんは嫌ですとバッサリ拒否した
「七海に権利ねーからね、三人で行くの強制だよ!飛行機の時間まであるの知ってるんだから!」
「七海くん、諦めて。悟行く気満々だから」
七海くんは深い溜息を吐くと好きにしてくださいと言い、その言葉に悟は笑い
この後飛行機の時間まで嫌と言うほど島根県の甘いものをたらふく食べ歩きをしてから、私達三人は飛行機に乗り東京へと帰った
甘い物を食べすぎた七海くんは飛行機に乗ったのもあって、高専へ帰った後は体調を崩してしまいずっと眠っていた