委員会のお手伝いシリーズ
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「委員会の手伝い?」
事務の仕事の空き時間がある日だけでいい、その時に忙しそうな委員会の補佐に入ってほしい。
学園長からそんなお願いをされた。「人手」で足りない予算を少しでも賄おうというわけだ。
「できる限りやってみます」
なんて言ったものの、正直私が役に立てそうなシーンは少ないと思う。不安もある。忍たまで仲良くしている生徒も数えるほどしかいないのだ。
「冰琉が居ればみんな張り合いが出るというものじゃ」
「そうだといいんですけど...足を引っ張らないように頑張りますね」
なんてやりとりがあったのが数日前。
「冰琉ちゃん」
優しい声色に振り返ると6年の善法寺伊作くん。
「伊作くん、お疲れ様」
授業が終わったのだろう、頭巾を外してリラックスしている彼の制服には土が付いている。
「お疲れ様。冰琉ちゃん、今日時間あるかな?よかったら少し手伝ってもらいたいことがあるんだけど」
「いいよ。今日はもうやる事も終わったから。保健室でいい?小松田さんにことわったらすぐに行くね」
助かるよ、と心底嬉しそうな顔で伊作くんは言った。私もつられて笑顔になる。待ってるね。そう告げて伊作くんは去っていった。
保健委員会の仕事をお手伝い。
ここなら比較的役に立てることがあるかもしれない。何より下級生が多くてみんな可愛い。手伝いというよりきっと癒しになるんじゃないかな。事務作業より張り切って保健室に向かう。
それにしてもどうして伊作くんは私の空き時間がわかったんだろう?
「こんにちはー」
ガラリと戸を開けると、まず畳に座る伊作くんが目に飛び込んできた。伊作くんの前にはこんもり積まれた数種類の乾燥薬草、かな。
「冰琉ちゃん!早かったね、どうぞこちらへ」
薬草をはさんだ向かいのスペースに促す伊作くん。でも伊作くん以外のメンバーがいない。保健室には委員長ただひとりのようだ。
「あれ?みんなは後から来るの?」
示された伊作くんの目の前、向かい合わせのスペース。そこに座りながら聞く。
「ううん、今日は僕だけなんだ。みんな実習や課題が多くてね」
「そっか。じゃあ1人じゃ大変だよね。私頑張るよ!」
下級生が癒しになるかもなんて目論見は外れたものの、ニコニコと楽しそうな顔で薬草の仕分けや保管を教えてくれる伊作くんにも十分癒される。それにこの作業なら私にも簡単。ただすごい量なんだけど。
「どの学年も実習が続いて、怪我も体調不良も多かったんだ。一気に薬が無くなってね。僕もなかなか時間が取れなくて」
でもこれは思ってたより時間が掛かりそうだ。苦笑しながら申し訳なさそうに言う伊作くん。
「でも冰琉ちゃんは都合もあるだろうから途中で切り上げていいからね?」
「うん、ありがとう。こういう細かいことは好きだから出来るだけするよ。伊作くんも疲れたら休むんだよ」
穏やかな時間が流れる。彼は優しくて落ち着いた声だから耳が心地がいい。下級生の話や今日の実習のこと(土がついたのは実技じゃなくただの落とし穴のせいらしい!)、取り留めのない雑談をしながら薬草をひとつまみずつ目視チェックと仕分け。
「そういえば、どうして伊作くんは私が今日暇してるってわかったの?」
「えっ」
びくりと肩を震わせた伊作くん。ただの質問に対しての反応に違和感を覚えながらさらに問う。
「もしかして...今日ずっと見てたとか?」
冗談めかして軽口を叩けば、伊作くんは慌てたように手と首をぶんぶんと振った。
「そ、そんなことしないよ〜。第一、僕も今日は一日中学科と実技で忙しかったんだから」
「ふふ、冗談だよ。今日は勘が良かったんだね?」
焦る伊作くんの姿がおかしくてつい笑い出してしまった。他人をずっと見張ってるなんて暇は誰にもないことはわかってる。
「そうそう。勘っていうか運が良かった」
「そうなんだね。ふふ、不運委員長が珍しいこともあるもんだ」
「冰琉ちゃんにそんなこと言われるなんて」
意外そうな伊作くん。でも彼の不運は有名だから。
「僕が不運で有名だなんて心外だなー」
伊作くんはあからさまに眉を下げた。
「もう少しかっこいい理由で冰琉ちゃんに知られたかった...」
ぽつりと呟く伊作くん。
あ、ちょっと落ち込んじゃったかも。
「伊作くんは不運でも有名だけど、優しい6年生としてもよく噂を聞くよ。いつもみんなのために頑張ってることも。今日だって一人で仕事してる。その合間にも保健室に来るみんなの世話だって...すごいことだよ」
伊作くんは顔を赤くしながらそんなことないよと言った。事実、委員会の後は自主練や課題もこなし、時には木彫りのアルバイトをすることもあると聞く。並大抵の体力気力じゃないと思う。
えらいえらいと大袈裟に伊作くんの頭を撫でると笑った。
「ありがとう。今日は冰琉ちゃんが来てくれたから頑張れるよ」
「私なんかでお役に立てるならいつでも力になるよ」
薬草はあらかた片付いた。
日はとっぷり暮れてしまった。
途中、冰琉ちゃんもういいよと何度か言われたけど始めたら投げ出すわけにはいかない。
「ふー、終わったねぇ」
「これでしばらくは困らないよ。本当にありがとう!」
肩が凝ったかも。でも仕分けして煎じたり練ったりして、きちんとしまった薬箱を見ると達成感でいっぱいだ。
「あぁ、もう食堂は終わってるね。冰琉ちゃん遅くまでごめんね」
「いいよ、おにぎりでも作って食べようか?」
食堂を借りて軽い夕食としよう。たまにはこういうのもいいかもしれない。
「今度、お礼をさせて欲しいな」
伊作くんが言う。
「いいんだよ、これも一応私の仕事なんだから。それに伊作くんと話せて楽しかったよ」
「僕も楽しかった...。ねぇ冰琉ちゃん」
体をずいとこちらに向ける。
「実は今日は冰琉ちゃんが空いてるって知って僕もワザと時間を作ったんだ」
「ええっ?!」
どういうことだろう?やっぱりさっきから違和感がある。
「2人で話してみたくて...それでさ、今度の休み、僕が冰琉ちゃんの予約入れてもいい?町に出掛けたいんだけど」
伊作くんの突然の打ち明けとお誘いに混乱してしまった。
「え、ちょっと待って、その前にどうして私の暇を知ってるの?やっぱり何かおかしい!」
「あーそれは...」
その先の伊作くんの言葉にさらに驚いた。学園長が私の名前の木札を作り、職員室掲示板にその日の暇な時間を記しているというのだ。
「そんなことされてたなんて...」
「今日が初日だよ。実は文次郎と長次、竹谷と揉めてね。じゃんけんでは僕は負けるから、いかに保健委員会が人手不足か先に学園長に直談判して冰琉ちゃんを手に入れたんだ!」
手に入れたって...。と思ったがあえて突っ込まず、朝からそんなことがあったなんてと軽いショックを受けていた。
「冰琉ちゃん、次の休みはいつ?予約、いいかな?」
甘い声と顔で迫ってくる保健委員会委員長。
私は彼がこんなに積極的だなんて知らなかった。まんまと次の休みの約束を取り付けられたけど、ほんとに大丈夫かな?
翌日、受付に来た留三郎に会って事のあらましをぶわーっと話した。留三郎が言うには、
「あいつは羊の毛を被ったオオカミだ」
だそうだ。1番冰琉を狙ってたし恐らく捕まえたら逃しもしない。パクッと食われる。逃げるなら今のうちだ。
なんて怖いお言葉ももらった。
でもこれが留三郎の作戦だったら?留三郎が冰琉を狙ってたりして?
と、へらりと笑うは同僚の小松田さん。
今度の休み、逃げるか向かうかしばらく悩みそうだ。
事務の仕事の空き時間がある日だけでいい、その時に忙しそうな委員会の補佐に入ってほしい。
学園長からそんなお願いをされた。「人手」で足りない予算を少しでも賄おうというわけだ。
「できる限りやってみます」
なんて言ったものの、正直私が役に立てそうなシーンは少ないと思う。不安もある。忍たまで仲良くしている生徒も数えるほどしかいないのだ。
「冰琉が居ればみんな張り合いが出るというものじゃ」
「そうだといいんですけど...足を引っ張らないように頑張りますね」
なんてやりとりがあったのが数日前。
「冰琉ちゃん」
優しい声色に振り返ると6年の善法寺伊作くん。
「伊作くん、お疲れ様」
授業が終わったのだろう、頭巾を外してリラックスしている彼の制服には土が付いている。
「お疲れ様。冰琉ちゃん、今日時間あるかな?よかったら少し手伝ってもらいたいことがあるんだけど」
「いいよ。今日はもうやる事も終わったから。保健室でいい?小松田さんにことわったらすぐに行くね」
助かるよ、と心底嬉しそうな顔で伊作くんは言った。私もつられて笑顔になる。待ってるね。そう告げて伊作くんは去っていった。
保健委員会の仕事をお手伝い。
ここなら比較的役に立てることがあるかもしれない。何より下級生が多くてみんな可愛い。手伝いというよりきっと癒しになるんじゃないかな。事務作業より張り切って保健室に向かう。
それにしてもどうして伊作くんは私の空き時間がわかったんだろう?
「こんにちはー」
ガラリと戸を開けると、まず畳に座る伊作くんが目に飛び込んできた。伊作くんの前にはこんもり積まれた数種類の乾燥薬草、かな。
「冰琉ちゃん!早かったね、どうぞこちらへ」
薬草をはさんだ向かいのスペースに促す伊作くん。でも伊作くん以外のメンバーがいない。保健室には委員長ただひとりのようだ。
「あれ?みんなは後から来るの?」
示された伊作くんの目の前、向かい合わせのスペース。そこに座りながら聞く。
「ううん、今日は僕だけなんだ。みんな実習や課題が多くてね」
「そっか。じゃあ1人じゃ大変だよね。私頑張るよ!」
下級生が癒しになるかもなんて目論見は外れたものの、ニコニコと楽しそうな顔で薬草の仕分けや保管を教えてくれる伊作くんにも十分癒される。それにこの作業なら私にも簡単。ただすごい量なんだけど。
「どの学年も実習が続いて、怪我も体調不良も多かったんだ。一気に薬が無くなってね。僕もなかなか時間が取れなくて」
でもこれは思ってたより時間が掛かりそうだ。苦笑しながら申し訳なさそうに言う伊作くん。
「でも冰琉ちゃんは都合もあるだろうから途中で切り上げていいからね?」
「うん、ありがとう。こういう細かいことは好きだから出来るだけするよ。伊作くんも疲れたら休むんだよ」
穏やかな時間が流れる。彼は優しくて落ち着いた声だから耳が心地がいい。下級生の話や今日の実習のこと(土がついたのは実技じゃなくただの落とし穴のせいらしい!)、取り留めのない雑談をしながら薬草をひとつまみずつ目視チェックと仕分け。
「そういえば、どうして伊作くんは私が今日暇してるってわかったの?」
「えっ」
びくりと肩を震わせた伊作くん。ただの質問に対しての反応に違和感を覚えながらさらに問う。
「もしかして...今日ずっと見てたとか?」
冗談めかして軽口を叩けば、伊作くんは慌てたように手と首をぶんぶんと振った。
「そ、そんなことしないよ〜。第一、僕も今日は一日中学科と実技で忙しかったんだから」
「ふふ、冗談だよ。今日は勘が良かったんだね?」
焦る伊作くんの姿がおかしくてつい笑い出してしまった。他人をずっと見張ってるなんて暇は誰にもないことはわかってる。
「そうそう。勘っていうか運が良かった」
「そうなんだね。ふふ、不運委員長が珍しいこともあるもんだ」
「冰琉ちゃんにそんなこと言われるなんて」
意外そうな伊作くん。でも彼の不運は有名だから。
「僕が不運で有名だなんて心外だなー」
伊作くんはあからさまに眉を下げた。
「もう少しかっこいい理由で冰琉ちゃんに知られたかった...」
ぽつりと呟く伊作くん。
あ、ちょっと落ち込んじゃったかも。
「伊作くんは不運でも有名だけど、優しい6年生としてもよく噂を聞くよ。いつもみんなのために頑張ってることも。今日だって一人で仕事してる。その合間にも保健室に来るみんなの世話だって...すごいことだよ」
伊作くんは顔を赤くしながらそんなことないよと言った。事実、委員会の後は自主練や課題もこなし、時には木彫りのアルバイトをすることもあると聞く。並大抵の体力気力じゃないと思う。
えらいえらいと大袈裟に伊作くんの頭を撫でると笑った。
「ありがとう。今日は冰琉ちゃんが来てくれたから頑張れるよ」
「私なんかでお役に立てるならいつでも力になるよ」
薬草はあらかた片付いた。
日はとっぷり暮れてしまった。
途中、冰琉ちゃんもういいよと何度か言われたけど始めたら投げ出すわけにはいかない。
「ふー、終わったねぇ」
「これでしばらくは困らないよ。本当にありがとう!」
肩が凝ったかも。でも仕分けして煎じたり練ったりして、きちんとしまった薬箱を見ると達成感でいっぱいだ。
「あぁ、もう食堂は終わってるね。冰琉ちゃん遅くまでごめんね」
「いいよ、おにぎりでも作って食べようか?」
食堂を借りて軽い夕食としよう。たまにはこういうのもいいかもしれない。
「今度、お礼をさせて欲しいな」
伊作くんが言う。
「いいんだよ、これも一応私の仕事なんだから。それに伊作くんと話せて楽しかったよ」
「僕も楽しかった...。ねぇ冰琉ちゃん」
体をずいとこちらに向ける。
「実は今日は冰琉ちゃんが空いてるって知って僕もワザと時間を作ったんだ」
「ええっ?!」
どういうことだろう?やっぱりさっきから違和感がある。
「2人で話してみたくて...それでさ、今度の休み、僕が冰琉ちゃんの予約入れてもいい?町に出掛けたいんだけど」
伊作くんの突然の打ち明けとお誘いに混乱してしまった。
「え、ちょっと待って、その前にどうして私の暇を知ってるの?やっぱり何かおかしい!」
「あーそれは...」
その先の伊作くんの言葉にさらに驚いた。学園長が私の名前の木札を作り、職員室掲示板にその日の暇な時間を記しているというのだ。
「そんなことされてたなんて...」
「今日が初日だよ。実は文次郎と長次、竹谷と揉めてね。じゃんけんでは僕は負けるから、いかに保健委員会が人手不足か先に学園長に直談判して冰琉ちゃんを手に入れたんだ!」
手に入れたって...。と思ったがあえて突っ込まず、朝からそんなことがあったなんてと軽いショックを受けていた。
「冰琉ちゃん、次の休みはいつ?予約、いいかな?」
甘い声と顔で迫ってくる保健委員会委員長。
私は彼がこんなに積極的だなんて知らなかった。まんまと次の休みの約束を取り付けられたけど、ほんとに大丈夫かな?
翌日、受付に来た留三郎に会って事のあらましをぶわーっと話した。留三郎が言うには、
「あいつは羊の毛を被ったオオカミだ」
だそうだ。1番冰琉を狙ってたし恐らく捕まえたら逃しもしない。パクッと食われる。逃げるなら今のうちだ。
なんて怖いお言葉ももらった。
でもこれが留三郎の作戦だったら?留三郎が冰琉を狙ってたりして?
と、へらりと笑うは同僚の小松田さん。
今度の休み、逃げるか向かうかしばらく悩みそうだ。
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