逃げる貴女の影となり
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
家康様の城下は、この屋敷からは目と鼻の先だと以前半蔵様から教わった。急時に伊賀忍達がすぐに家康様の元へ侍られるように、近い所に屋敷を構えたのだろう。
屋敷を出て東へ。
一般人で、おまけに手負いの私が城を目指した場合、どれくらいの時間がかかるのか……。そもそも半蔵様に取り次いでもらえるのか、疑問は多くある。
でも、ただじっとなんてしていられなかった。
雪は降り止むことなく、道を白に染め上げていく。寒さも夕刻に近付けば、一段と厳しくなる。
そして、身体に積もる雪を払いながら、私という存在の意味について考える。
忍になんてなれるはずないって、最初から分かっていたことじゃないか。
ここでの私の役割は、両親に売られた時と同じ。
悔しいなぁ……とも思う。
でも相手が半蔵様なら別にいいかとも思う。
くノ一になったら任務で好きでもない男に身体を開くことだってあるのだろうし、半蔵様1人にだけ仕えるだけならむしろ厚遇と言える。
だけど
それならそうと最初から言って欲しかった。
半蔵様を恨む気持ちもある。
でも、やっぱり半蔵様のことは男性として慕っている自分がいるのも事実で……。
気持ちは行ったり来たりを繰り返す。
そんなことを考えながら歩いていると、シンシンと静かに降っていた雪に急に風が加わり、私の歩みを遮る。
「痛っ」
風が右腕に当たる度に、鈍い痛みに悩まされる。
視界が雪でぼやけ、前が見づらい。足元の注意が散漫になる。
「あっ」
雪で足がもつれ、転ぶのは最初のあの時と合わせて何回目か。
「っく……」
激痛で顔が歪む。ズキズキと脈打つ痛みに、急いで右腕を覗き込むと巻かれた布に淡い赤がジワジワと滲んでいく。
「でも……行かなきゃ……」
左腕を雪被る地面に付き、立ち上がろうとゆっくり足に力を入れる。
痛む右腕を止血のため力強く押さえ、再び進もうと足を前へと踏み出す。
白い雪に血が数滴散った。
「何をしている?」
一番聴きたかった人の声を真後ろで聞いた。
半蔵様、お会いしたかった……。
そう、言うつもりであったのに。
自分の口から声が出た感覚がない。
あれ?
身体から力がゆっくりと抜けていく感覚。それは、身体だけでなく、意識さえも。
あの子を助けて欲しい
そう願うが、思いは言葉になることなく消失していく。
朦朧としていく意識。
耳元で「逃がさぬ」という声を聞いた気がした。
屋敷を出て東へ。
一般人で、おまけに手負いの私が城を目指した場合、どれくらいの時間がかかるのか……。そもそも半蔵様に取り次いでもらえるのか、疑問は多くある。
でも、ただじっとなんてしていられなかった。
雪は降り止むことなく、道を白に染め上げていく。寒さも夕刻に近付けば、一段と厳しくなる。
そして、身体に積もる雪を払いながら、私という存在の意味について考える。
忍になんてなれるはずないって、最初から分かっていたことじゃないか。
ここでの私の役割は、両親に売られた時と同じ。
悔しいなぁ……とも思う。
でも相手が半蔵様なら別にいいかとも思う。
くノ一になったら任務で好きでもない男に身体を開くことだってあるのだろうし、半蔵様1人にだけ仕えるだけならむしろ厚遇と言える。
だけど
それならそうと最初から言って欲しかった。
半蔵様を恨む気持ちもある。
でも、やっぱり半蔵様のことは男性として慕っている自分がいるのも事実で……。
気持ちは行ったり来たりを繰り返す。
そんなことを考えながら歩いていると、シンシンと静かに降っていた雪に急に風が加わり、私の歩みを遮る。
「痛っ」
風が右腕に当たる度に、鈍い痛みに悩まされる。
視界が雪でぼやけ、前が見づらい。足元の注意が散漫になる。
「あっ」
雪で足がもつれ、転ぶのは最初のあの時と合わせて何回目か。
「っく……」
激痛で顔が歪む。ズキズキと脈打つ痛みに、急いで右腕を覗き込むと巻かれた布に淡い赤がジワジワと滲んでいく。
「でも……行かなきゃ……」
左腕を雪被る地面に付き、立ち上がろうとゆっくり足に力を入れる。
痛む右腕を止血のため力強く押さえ、再び進もうと足を前へと踏み出す。
白い雪に血が数滴散った。
「何をしている?」
一番聴きたかった人の声を真後ろで聞いた。
半蔵様、お会いしたかった……。
そう、言うつもりであったのに。
自分の口から声が出た感覚がない。
あれ?
身体から力がゆっくりと抜けていく感覚。それは、身体だけでなく、意識さえも。
あの子を助けて欲しい
そう願うが、思いは言葉になることなく消失していく。
朦朧としていく意識。
耳元で「逃がさぬ」という声を聞いた気がした。