逃げる貴女の影となり
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はぁ~。
家康様の呼び出しに応じ、誰もいなくなった半蔵の部屋で名無しさんは再び大きな溜め息をつく。
早く伊賀の皆の仲間になりたいのに……。
焦るなと言われても、やっぱり気持ちは焦るばかり。
何も出来ない、していないのがもどかしい。
「名無しさん」
「!!。は、半蔵様!!」
いったい、いつからソコに居たのか……。配下の忍に呼ばれて姿を消したはずの半蔵がいつの間にやら名無しさんの目の前にいるのだ。
あぁ~。もしかして、さっきの溜め息、聞かれちゃったかな~。
気まずいな~と思いながらも何とか笑顔を作り出す。作り笑いなんて、半蔵にしたところで見破られるだけなのにな……と心の底では思うのだが、だからって落ち込んだ姿を見られたくもない。
「どうかなさいましたか?忘れ物ですか?」
「城下へ行く。欲しい物はないか?」
「欲しい物……ですか?」
予想外の半蔵の言葉に少し驚きつつも、言われた通りに自分の欲しい物について思案してみる。
「そうですね。城下でしたら……団子とか。醤油にきな粉に草団子……うーん……1つに絞るのは難しいですね」
「色気がないな」
「えっ!?どうゆうことですか」
城下の手土産といえば団子……じゃなかったっけ?
「簪や着物、草履は事足りてるか?」
成る程。そっち方面ね。
「大丈夫です。実家に居たとき、欲しいものは一通りせがんで買ってもらっていたので。なので是非、家康様の城下のお団子、食べてみたいです」
食いしん坊に思われたかも……なんて心配して半蔵を見れば、とても穏やかに微笑んでいるのが仮面越しでも分かる。
「名無しさんらしい。帰りに求めて来よう」
「お願い致しますね。あっ、半蔵様!!」
「どうした?」
「あの……1人で食べるのも寂しいので、ご一緒に月見でもしながら召し上がりませんか?まぁ、今日は満月でもないですけど……」
自分から声を掛けたにも関わらず、恥ずかしさから体温が高揚していくのが分かる。だって、半蔵様の微笑みなんて見たことなかったから。もっと見てみたい、だなんて思っちゃったりして。
ドキドキしながら返事を待っていれば、半蔵はクルリと名無しさんに背を向ける。
「構わぬ」
そう言うと半蔵はスッと一瞬にして居なくなった。
忍というのは
本当にズルイ。
半蔵がどんな表情をしたのか、見てみたかったのに。
ドキドキと脈打つ鼓動をそっと両手で覆い隠した。
半蔵にばれないようにと。
うぅ……。寒い。
半蔵が発ってから数刻。廁へと廊下に出た帰りに外を見れば、春間近というのにハラハラと雪が降っている。
吐く息が白く立ち昇る。
誰も周囲に居ないことを確認してから、着物の両袖にそれぞれの手を隠し、急いで部屋へと戻る。こんな姿、母が見たら「童じゃないんだから!」と怒っていただろう。何だか……少し寂しさを覚える。
「はっ」
「やっ」
廊下を早足で戻る途中、中庭から小さい子供特有の声が聞こえてきた。この雪の降る中、修行でもしているのだろうか?
気になって覗けば、弟、妹達と同年代の子供達が藁を的に手裏剣を放っている。
普段なら、伊賀の忍達が修行をしていたところで、自分にはまだ早いと気にしないようにしていた。
だから、思わず声を掛けてしまったのは……子供だからか。
それとも物哀しさからか。
「何をしているの?」
「あっ、名無しさん様」
子供達は私の姿を見ると膝を付いて挨拶をする。
「呼び捨てでも大丈夫だよ。私なんて……何も出来ないんだから」
「そんなことはありません。だって名無しさん様は頭領の……」
子供達は何かを言おうとするが、最後の方で言い淀む。
「もしよければ、私にもソレをやらせてもらえない?」
「えっ!?手裏剣を?ですが、頭領から名無しさん様には危ないことはさせるなとのお達しが……」
「少し手裏剣を持ってみるだけだから」
お願いします、と頭を下げると子供達は慌てたように頭を上げて下さいと声を掛ける。
「……分かりました。大人達には絶対に秘密ですよ」
そういって1人の男の子が自分が操っていた手裏剣をそっと私に差し出す。
受け取ったソレは私が想像していたものよりもズッシリと重く、その刃先はとても鋭利に光っていた。
心の中に緩みがあったのは事実。
子供の持つ物だから、そんな大した物ではない……そう思っていた。
だから、手裏剣を持ち上げた時に寒さで指がかじかんでいたせいか、手からスルリと滑り落としてしまった時でさえ、私は何も考えてはいなかったのだ。
家康様の呼び出しに応じ、誰もいなくなった半蔵の部屋で名無しさんは再び大きな溜め息をつく。
早く伊賀の皆の仲間になりたいのに……。
焦るなと言われても、やっぱり気持ちは焦るばかり。
何も出来ない、していないのがもどかしい。
「名無しさん」
「!!。は、半蔵様!!」
いったい、いつからソコに居たのか……。配下の忍に呼ばれて姿を消したはずの半蔵がいつの間にやら名無しさんの目の前にいるのだ。
あぁ~。もしかして、さっきの溜め息、聞かれちゃったかな~。
気まずいな~と思いながらも何とか笑顔を作り出す。作り笑いなんて、半蔵にしたところで見破られるだけなのにな……と心の底では思うのだが、だからって落ち込んだ姿を見られたくもない。
「どうかなさいましたか?忘れ物ですか?」
「城下へ行く。欲しい物はないか?」
「欲しい物……ですか?」
予想外の半蔵の言葉に少し驚きつつも、言われた通りに自分の欲しい物について思案してみる。
「そうですね。城下でしたら……団子とか。醤油にきな粉に草団子……うーん……1つに絞るのは難しいですね」
「色気がないな」
「えっ!?どうゆうことですか」
城下の手土産といえば団子……じゃなかったっけ?
「簪や着物、草履は事足りてるか?」
成る程。そっち方面ね。
「大丈夫です。実家に居たとき、欲しいものは一通りせがんで買ってもらっていたので。なので是非、家康様の城下のお団子、食べてみたいです」
食いしん坊に思われたかも……なんて心配して半蔵を見れば、とても穏やかに微笑んでいるのが仮面越しでも分かる。
「名無しさんらしい。帰りに求めて来よう」
「お願い致しますね。あっ、半蔵様!!」
「どうした?」
「あの……1人で食べるのも寂しいので、ご一緒に月見でもしながら召し上がりませんか?まぁ、今日は満月でもないですけど……」
自分から声を掛けたにも関わらず、恥ずかしさから体温が高揚していくのが分かる。だって、半蔵様の微笑みなんて見たことなかったから。もっと見てみたい、だなんて思っちゃったりして。
ドキドキしながら返事を待っていれば、半蔵はクルリと名無しさんに背を向ける。
「構わぬ」
そう言うと半蔵はスッと一瞬にして居なくなった。
忍というのは
本当にズルイ。
半蔵がどんな表情をしたのか、見てみたかったのに。
ドキドキと脈打つ鼓動をそっと両手で覆い隠した。
半蔵にばれないようにと。
うぅ……。寒い。
半蔵が発ってから数刻。廁へと廊下に出た帰りに外を見れば、春間近というのにハラハラと雪が降っている。
吐く息が白く立ち昇る。
誰も周囲に居ないことを確認してから、着物の両袖にそれぞれの手を隠し、急いで部屋へと戻る。こんな姿、母が見たら「童じゃないんだから!」と怒っていただろう。何だか……少し寂しさを覚える。
「はっ」
「やっ」
廊下を早足で戻る途中、中庭から小さい子供特有の声が聞こえてきた。この雪の降る中、修行でもしているのだろうか?
気になって覗けば、弟、妹達と同年代の子供達が藁を的に手裏剣を放っている。
普段なら、伊賀の忍達が修行をしていたところで、自分にはまだ早いと気にしないようにしていた。
だから、思わず声を掛けてしまったのは……子供だからか。
それとも物哀しさからか。
「何をしているの?」
「あっ、名無しさん様」
子供達は私の姿を見ると膝を付いて挨拶をする。
「呼び捨てでも大丈夫だよ。私なんて……何も出来ないんだから」
「そんなことはありません。だって名無しさん様は頭領の……」
子供達は何かを言おうとするが、最後の方で言い淀む。
「もしよければ、私にもソレをやらせてもらえない?」
「えっ!?手裏剣を?ですが、頭領から名無しさん様には危ないことはさせるなとのお達しが……」
「少し手裏剣を持ってみるだけだから」
お願いします、と頭を下げると子供達は慌てたように頭を上げて下さいと声を掛ける。
「……分かりました。大人達には絶対に秘密ですよ」
そういって1人の男の子が自分が操っていた手裏剣をそっと私に差し出す。
受け取ったソレは私が想像していたものよりもズッシリと重く、その刃先はとても鋭利に光っていた。
心の中に緩みがあったのは事実。
子供の持つ物だから、そんな大した物ではない……そう思っていた。
だから、手裏剣を持ち上げた時に寒さで指がかじかんでいたせいか、手からスルリと滑り落としてしまった時でさえ、私は何も考えてはいなかったのだ。