逃げる貴女の影となり
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「さぁ、どうぞ。伊賀の忍様。こんな娘でよかったら、どうか立派な忍にお育て下さい」
「コイツならきっと立派なくノ一になること間違いねーぜ。俺が保証するぜ」
「じゃなあ、姉ちゃん。達者で暮らせよ」
男達によって、ぐいと強制的に仮面の男の前へと差し出される。忍の刺すような視線が自分に向けられているのが分かった。
「ひっ……。私、無理です!忍なんて……くノ一なんて絶対に無理です。だいたい可笑しいじゃないですか!こんな大金がいきなり目の前に現れるなんて!これは……狸です。私達、狸に化かされてるんですよ。このお金だって、きっと木葉かなんかじゃ……」
「狸」と言いかけた所で、忍から発せられる鋭い殺気が名無しさんを射抜く。
「あっ……」
あまりの恐怖に名無しさんはその場に固まるしかなかった。護衛の男達も、今まで感じたことのない殺気に、お金を抱えながらゆっくりと後ずさる。
「じゃあ、俺達はこれで。後は2人でよろしくやってくれ」
男達はそう言うと、まるで逃げ去るかのように名無しさんを置いて走り去る。
ちょっ、嫌ぁ~。置いてかないで!
逃げ去る男達の背に必死に手を伸ばすも、その手は仮面の男によってガシリと捕まれた。
「行くぞ。名無しさん」
「行くって、何処に……」
震えながら忍を見返せば、腹部に腕を回され、ぐいと抱え上げられる。足が地面から離れ、視線が足元の雪道を捉える。そして、次の瞬間には雪が流れるように進んで見えた。
名無しさんを抱え、走り出す忍。その速さは風を切る程。
大人の女1人を脇に抱え、息を切らさず走り出す忍の技に感動を覚える。私も、修行すれば、こんなに速く走れるようになるのだろうか?
「忍さん。凄いです!速いです!私も修行すればこんなに速く走れるようになるのですか!?」
感極まり、思わず心の声がそのまま出てしまう。だから、つい聞いてしまったのだが……。
「フッ……」
あれ?今、鼻で笑われた?
「あの……。忍さんは、私をくノ一に育てるために買ったんですよね……」
なら、鼻で笑うこともないんじゃ……
「……半蔵だ」
「はい……?」
「拙者のことは半蔵と呼べ」
「……はい。半蔵様」
なんか、曖昧に濁された気がする。
しばらく悶々と思い悩んでいると、流れる雪道がいつの間にか止まっていた。
「着いたぞ」
「えっ……?」
ストンと降ろされた目前に、いつの間にやら大きな屋敷と広大な庭が佇んでいる。
いったい、いつ着いたのか……。
目をパチクリさせていると、私と半蔵の前に大勢の忍が現れ、膝を着く。
「頭領、お帰りお待ちしておりました」
「応。後は任せる」
「はっ。では、名無しさん様。こちらへ。お部屋にご案内致しますね」
1人のくノ一が立ち上がると、私の手を引き、屋敷の中へと誘う。
見たことのない長い廊下。部屋まで進む間に、ここは何処なのか、何故私の名前を知っているのか、いろいろ彼女に尋ねてみたのだが、結局ここは伊賀の里であって、私の名前を知っているのは忍だからと曖昧に誤魔化されてしまった。
「ここが名無しさん様の部屋です。今日はゆっくりとお休み下さい」
与えられた部屋は1人で使うには大きすぎる程の広さがあり、部屋の中で焚かれた香が淡く上品な匂いを醸し出していた。用意されている調度品は、一見どれも質素に見えるが、傷1つない新品のようで自分のために新しくあつらえられたことが分かる。
部屋を見回っている間に、案内してくれたくノ一はスっと襖に手を掛けていた。
「では、私はこれで。何か分からないことがあれば、何でも私達に……あぁ、それよりも名無しさん様の隣が頭領の部屋になりますので何か分からないことがあれば頭領にお聞きになるのがよろしいと思いますよ。では、私はこれで失礼致しますね」
パタンと容赦なく閉められる襖。
んっ……?
ちょっ、今、何か凄いこと言わなかったか、彼女!!
「ちょっ、待って!くノ一さん!」
急いで襖を開け廊下に居るはずのくノ一の姿を探すが、流石は忍。もう、影も形もなかった。
そんなぁ……。
まぁ、そうは言っても今日は初日。早急に聞かなきゃならないことなんてあるわけない。
あるわけ……
数刻後
そこには躊躇いながらも半蔵の部屋を訪れた名無しさんの姿があった。
「あの……半蔵様。名無しさんです。今、お時間よろしいでしょうか……」
「応。どうした?」
名無しさんは顔を真っ赤にしながらも半蔵に問う。
「あの……廁はどこでしょうか……」
嗚呼、これだけは前もって教えて欲しかったと案内してくれたくノ一を少しだけ恨んだ。
「コイツならきっと立派なくノ一になること間違いねーぜ。俺が保証するぜ」
「じゃなあ、姉ちゃん。達者で暮らせよ」
男達によって、ぐいと強制的に仮面の男の前へと差し出される。忍の刺すような視線が自分に向けられているのが分かった。
「ひっ……。私、無理です!忍なんて……くノ一なんて絶対に無理です。だいたい可笑しいじゃないですか!こんな大金がいきなり目の前に現れるなんて!これは……狸です。私達、狸に化かされてるんですよ。このお金だって、きっと木葉かなんかじゃ……」
「狸」と言いかけた所で、忍から発せられる鋭い殺気が名無しさんを射抜く。
「あっ……」
あまりの恐怖に名無しさんはその場に固まるしかなかった。護衛の男達も、今まで感じたことのない殺気に、お金を抱えながらゆっくりと後ずさる。
「じゃあ、俺達はこれで。後は2人でよろしくやってくれ」
男達はそう言うと、まるで逃げ去るかのように名無しさんを置いて走り去る。
ちょっ、嫌ぁ~。置いてかないで!
逃げ去る男達の背に必死に手を伸ばすも、その手は仮面の男によってガシリと捕まれた。
「行くぞ。名無しさん」
「行くって、何処に……」
震えながら忍を見返せば、腹部に腕を回され、ぐいと抱え上げられる。足が地面から離れ、視線が足元の雪道を捉える。そして、次の瞬間には雪が流れるように進んで見えた。
名無しさんを抱え、走り出す忍。その速さは風を切る程。
大人の女1人を脇に抱え、息を切らさず走り出す忍の技に感動を覚える。私も、修行すれば、こんなに速く走れるようになるのだろうか?
「忍さん。凄いです!速いです!私も修行すればこんなに速く走れるようになるのですか!?」
感極まり、思わず心の声がそのまま出てしまう。だから、つい聞いてしまったのだが……。
「フッ……」
あれ?今、鼻で笑われた?
「あの……。忍さんは、私をくノ一に育てるために買ったんですよね……」
なら、鼻で笑うこともないんじゃ……
「……半蔵だ」
「はい……?」
「拙者のことは半蔵と呼べ」
「……はい。半蔵様」
なんか、曖昧に濁された気がする。
しばらく悶々と思い悩んでいると、流れる雪道がいつの間にか止まっていた。
「着いたぞ」
「えっ……?」
ストンと降ろされた目前に、いつの間にやら大きな屋敷と広大な庭が佇んでいる。
いったい、いつ着いたのか……。
目をパチクリさせていると、私と半蔵の前に大勢の忍が現れ、膝を着く。
「頭領、お帰りお待ちしておりました」
「応。後は任せる」
「はっ。では、名無しさん様。こちらへ。お部屋にご案内致しますね」
1人のくノ一が立ち上がると、私の手を引き、屋敷の中へと誘う。
見たことのない長い廊下。部屋まで進む間に、ここは何処なのか、何故私の名前を知っているのか、いろいろ彼女に尋ねてみたのだが、結局ここは伊賀の里であって、私の名前を知っているのは忍だからと曖昧に誤魔化されてしまった。
「ここが名無しさん様の部屋です。今日はゆっくりとお休み下さい」
与えられた部屋は1人で使うには大きすぎる程の広さがあり、部屋の中で焚かれた香が淡く上品な匂いを醸し出していた。用意されている調度品は、一見どれも質素に見えるが、傷1つない新品のようで自分のために新しくあつらえられたことが分かる。
部屋を見回っている間に、案内してくれたくノ一はスっと襖に手を掛けていた。
「では、私はこれで。何か分からないことがあれば、何でも私達に……あぁ、それよりも名無しさん様の隣が頭領の部屋になりますので何か分からないことがあれば頭領にお聞きになるのがよろしいと思いますよ。では、私はこれで失礼致しますね」
パタンと容赦なく閉められる襖。
んっ……?
ちょっ、今、何か凄いこと言わなかったか、彼女!!
「ちょっ、待って!くノ一さん!」
急いで襖を開け廊下に居るはずのくノ一の姿を探すが、流石は忍。もう、影も形もなかった。
そんなぁ……。
まぁ、そうは言っても今日は初日。早急に聞かなきゃならないことなんてあるわけない。
あるわけ……
数刻後
そこには躊躇いながらも半蔵の部屋を訪れた名無しさんの姿があった。
「あの……半蔵様。名無しさんです。今、お時間よろしいでしょうか……」
「応。どうした?」
名無しさんは顔を真っ赤にしながらも半蔵に問う。
「あの……廁はどこでしょうか……」
嗚呼、これだけは前もって教えて欲しかったと案内してくれたくノ一を少しだけ恨んだ。