逃げる貴女の影となり
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幼い頃、周囲の家が貧しい中で私の家だけが妙に羽振りがよかったのを不思議に思っていた。
そして、私の下には幼い妹、弟達が何人もいたのだが、両親はその中でも何故か長女の私を一番に可愛がり、欲しい物は何でも買い与えてくれた。
最初は、なんで自分が優遇されているのか分からなかった。
だが、うちと同じく金回りが良かった家のお姉さんが人買いに買われていって、ようやく自分の置かれている状況が理解出来た。
うちが裕福なのは、そういうことなのだ、と。
別に両親を怨むつもりはない。
だから、何だかんだで覚悟は出来ていたのだけれど……。
「では、父さん、母さん。行ってきます」
「ごめんよ……。ごめんよ。名無しさん」
「私は大丈夫。だから謝らないで。みんな、元気でね」
シンシンと雪が降る中、少しガラの悪いお兄さん達に連れられて、繁華街に向かって進んでいく。
しかし、雪の積もった道中は、箱入り娘だった私には困難で、何度も足をすくわれた。
「きゃっ」
本日4回目。雪に足を取られ、倒れかける私をお兄さん達が慌てて支える。
「お前、これで転ぶの何回目だ?」
「4回目です。すいません……。雪道に不馴れなもので」
「姉ちゃん、頼むぜ。店に着く前に身体に傷なんて付けられねぇんだから」
「ははは……善処します……」
善処はする。
でも、多分また転ぶ気はする……。
苦笑いを浮かべながら、再び雪道と格闘するように歩きだす。暫く道なりに歩いていると私達の進行を妨げるかのように1つの影が、いつの間にか道の真ん中に現れた。
影……?
……じゃない。良く見れば人の形をしている。
「何だ?ありゃ」
「人みてぇだが……。おい、アイツ黒装束に仮面なんて付けてるぞ」
「マジかよ。まさか、忍じゃないだろうな……」
……忍。夜の闇に紛れ、人の目を欺き、暗殺や情報収集を生業とする集団。聞いたことはあるけど、見たことなんてない。お兄さん達の背に隠れるようにしながらも、興味を抑えることが出来ずにチラリとその姿を覗き込む。
「おい。道を譲ってはくれないか。アンタがそこに居ると前に進めねぇんだ」
先頭のお兄さんが忍の出で立ちをした男に声を掛ける。
男の表情は仮面に隠れて、まったく見えない。ドキドキしながらもつい好奇心から仮面姿の男をジッと見つめる。すると、一瞬、仮面の奥の目と視線が合った気がした。
あっ……。
「その娘を貰いたい」
思わぬ仮面の男の発言に名無しさんは勿論、皆目を見開く。
「お前、何言ってんだ?この娘とイイコトしたいなら店に来いよ。金さえあれば、何だって出来るぜ」
「店なら、この先の繁華街の一画だ。さぁ、早く道を空けてくれ」
お兄さん達はシッシッと追い払うような仕草をするが、仮面の男は意に介す様子はなく憮然としている。
「その娘、忍の才能がある。それ故、伊賀で引き取りたい」
予想外の言葉に、名無しさんを連れた男達は顔を見合せ、思わずゲラゲラと笑い出す。
「この、どんくさい娘が忍だと?」
「雪に何度も躓くようじゃ、瓦の上なんて歩けないぜ」
「さすがに、それは酷な話だと思うけどな」
普通なら、そんなことないですよ!って怒る所なのだろうが……。自分が運動音痴、兼どん臭いことは幼い頃から自覚している。
何もない平地でも1日1回は躓くし、鬼ごっこの鬼になれば、永遠に兄弟達を捕まえることは出来ない。
そんな、私が……忍……?
屋根瓦から転び落ちる姿しか想像できない。
もしくは、カラクリに引っ掛かって串刺しになるとか。
あっ、駄目な未来しか想像出来ない。
「この娘はやれねぇぜ。長い年月、手付け金も払ってきたんだ。諦めな」
うんうんと頷きながらお兄さん達の背に隠れ、着物を握る。そう、忍になるくらいなら娼妓になった方が自分に合っていると思う。そういえば、女の忍、くノ一って結局娼妓と同じ様なこともするんじゃなかったっけ……?
頑張って、お兄さん!さすがにこの若さで私、死にたくない。
仮面の男はひたすら無表情に私を見つめる。感情が読めない。私のこと、諦めてくれたのだろうか?
「貴様らの事情は知っている。なら、これでどうだ?」
私達の目の前に突如現れたのは、見たことのない大判の山。突如現れたお金に普通ならば怪しむのだろうが……。お兄さん達の視線はお金に引き込まれ、ゴクリと唾を飲み込む音まで聞こえる。
これって……もしかして、状況が変わったの?
逃げるように後ずさるが、直ぐ様その手はお兄さん達に捕らえられてしまった。
そして、私の下には幼い妹、弟達が何人もいたのだが、両親はその中でも何故か長女の私を一番に可愛がり、欲しい物は何でも買い与えてくれた。
最初は、なんで自分が優遇されているのか分からなかった。
だが、うちと同じく金回りが良かった家のお姉さんが人買いに買われていって、ようやく自分の置かれている状況が理解出来た。
うちが裕福なのは、そういうことなのだ、と。
別に両親を怨むつもりはない。
だから、何だかんだで覚悟は出来ていたのだけれど……。
「では、父さん、母さん。行ってきます」
「ごめんよ……。ごめんよ。名無しさん」
「私は大丈夫。だから謝らないで。みんな、元気でね」
シンシンと雪が降る中、少しガラの悪いお兄さん達に連れられて、繁華街に向かって進んでいく。
しかし、雪の積もった道中は、箱入り娘だった私には困難で、何度も足をすくわれた。
「きゃっ」
本日4回目。雪に足を取られ、倒れかける私をお兄さん達が慌てて支える。
「お前、これで転ぶの何回目だ?」
「4回目です。すいません……。雪道に不馴れなもので」
「姉ちゃん、頼むぜ。店に着く前に身体に傷なんて付けられねぇんだから」
「ははは……善処します……」
善処はする。
でも、多分また転ぶ気はする……。
苦笑いを浮かべながら、再び雪道と格闘するように歩きだす。暫く道なりに歩いていると私達の進行を妨げるかのように1つの影が、いつの間にか道の真ん中に現れた。
影……?
……じゃない。良く見れば人の形をしている。
「何だ?ありゃ」
「人みてぇだが……。おい、アイツ黒装束に仮面なんて付けてるぞ」
「マジかよ。まさか、忍じゃないだろうな……」
……忍。夜の闇に紛れ、人の目を欺き、暗殺や情報収集を生業とする集団。聞いたことはあるけど、見たことなんてない。お兄さん達の背に隠れるようにしながらも、興味を抑えることが出来ずにチラリとその姿を覗き込む。
「おい。道を譲ってはくれないか。アンタがそこに居ると前に進めねぇんだ」
先頭のお兄さんが忍の出で立ちをした男に声を掛ける。
男の表情は仮面に隠れて、まったく見えない。ドキドキしながらもつい好奇心から仮面姿の男をジッと見つめる。すると、一瞬、仮面の奥の目と視線が合った気がした。
あっ……。
「その娘を貰いたい」
思わぬ仮面の男の発言に名無しさんは勿論、皆目を見開く。
「お前、何言ってんだ?この娘とイイコトしたいなら店に来いよ。金さえあれば、何だって出来るぜ」
「店なら、この先の繁華街の一画だ。さぁ、早く道を空けてくれ」
お兄さん達はシッシッと追い払うような仕草をするが、仮面の男は意に介す様子はなく憮然としている。
「その娘、忍の才能がある。それ故、伊賀で引き取りたい」
予想外の言葉に、名無しさんを連れた男達は顔を見合せ、思わずゲラゲラと笑い出す。
「この、どんくさい娘が忍だと?」
「雪に何度も躓くようじゃ、瓦の上なんて歩けないぜ」
「さすがに、それは酷な話だと思うけどな」
普通なら、そんなことないですよ!って怒る所なのだろうが……。自分が運動音痴、兼どん臭いことは幼い頃から自覚している。
何もない平地でも1日1回は躓くし、鬼ごっこの鬼になれば、永遠に兄弟達を捕まえることは出来ない。
そんな、私が……忍……?
屋根瓦から転び落ちる姿しか想像できない。
もしくは、カラクリに引っ掛かって串刺しになるとか。
あっ、駄目な未来しか想像出来ない。
「この娘はやれねぇぜ。長い年月、手付け金も払ってきたんだ。諦めな」
うんうんと頷きながらお兄さん達の背に隠れ、着物を握る。そう、忍になるくらいなら娼妓になった方が自分に合っていると思う。そういえば、女の忍、くノ一って結局娼妓と同じ様なこともするんじゃなかったっけ……?
頑張って、お兄さん!さすがにこの若さで私、死にたくない。
仮面の男はひたすら無表情に私を見つめる。感情が読めない。私のこと、諦めてくれたのだろうか?
「貴様らの事情は知っている。なら、これでどうだ?」
私達の目の前に突如現れたのは、見たことのない大判の山。突如現れたお金に普通ならば怪しむのだろうが……。お兄さん達の視線はお金に引き込まれ、ゴクリと唾を飲み込む音まで聞こえる。
これって……もしかして、状況が変わったの?
逃げるように後ずさるが、直ぐ様その手はお兄さん達に捕らえられてしまった。