彼女と彼女の事情①
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今年の蘭は例年よりも長く咲いた。
冷たい冬の風に煽られても、健気に咲き続けていた。
まるで、自分の思いに必死に答えようとするかのように。
ただ、それも昨日までだ。
「すべて散りましたね」
木枯らしに吹かれる蘭には花弁は1つもついていない。
それでも
次世代に命を繋いでいくその姿は
花弁などなくても、とても美しく
自分の心を癒してくれる。
そして、来年にはまた美しい花が咲く。
だけど、もうその姿を名無しさんが見ることはない。
蘭丸は花弁のない蘭の枝1つ1つに感謝の念を伝えながら歩く。ありかとう、自分の思いに答えてくれて、と。
庭を一通り歩き、部屋へと廊下を渡る。
いつも襖の入り口の所で踞り、自分の帰りを待っていた名無しさん。
彼女は、もういない。
襖をザッと開け、その勢いのままで部屋に上がると、足が何かに思いっきり当たる。
「痛っ……!!」
(えっ……!?)
「あっ、お蘭様。お帰りなさいませ」
(名無しさん!?)
驚き、目をパチクリさせていると、名無しさんが昨日、別れの挨拶をした時のように居ずまいを正し、クスリと笑う。
「私、決めました。私の人生、今日よりお蘭様に捧げます。だから、結婚の話は破談にして参りました。これからはどうか、貴女様の傍で、私という花を咲かせて下さいませ」
そして、彼女は深く頭を下げた。
数秒を頭を下げた後、ゆっくりと名無しさんは額を上げる。その唇には昨夜の桃色の紅が可憐に光っている。
気付けば、彼女の手を引き、自分の胸に引き寄せていた。
そして、そのまま名無しさんの桃色の唇を吸い上げる。
「……!!」
名無しさんは一瞬、何が起こったのか分からなかったことだろう。
だが、唇を重ね、数十秒たった今でも大人しく自分と唇を重ね続けている。
優しく舌を入れてやれば、ぎこちなくも反応し、絡めてくれる。
数分、口付けを堪能した後にゆっくりと顔を放し名無しさんの表情を見れば、まるで酔っているかのように顔を真っ赤にさせている。
「お蘭様……。これは、信長様に対する裏切りになるのでは……。あっ、でも私達は女同士だから……違う?……でも、その……えっと……」
混乱する彼女の手を繋ぎ、自分の寝室に連れていく。
「えっ!?寝室……お蘭様……私、その、その手のことは初めてで……特に女同士の場合、何をすればいいのか、さっぱり分からないのですが……あの……どうすれば?」
名無しさんの困惑する姿が可愛く、思わずクスクスと笑ってしまう。
そのまま、彼女を布団の中に引き入れると、その後は特に何もせず、ただ手だけは強く繋ぎ2人で惰眠を貪った。
fin.
冷たい冬の風に煽られても、健気に咲き続けていた。
まるで、自分の思いに必死に答えようとするかのように。
ただ、それも昨日までだ。
「すべて散りましたね」
木枯らしに吹かれる蘭には花弁は1つもついていない。
それでも
次世代に命を繋いでいくその姿は
花弁などなくても、とても美しく
自分の心を癒してくれる。
そして、来年にはまた美しい花が咲く。
だけど、もうその姿を名無しさんが見ることはない。
蘭丸は花弁のない蘭の枝1つ1つに感謝の念を伝えながら歩く。ありかとう、自分の思いに答えてくれて、と。
庭を一通り歩き、部屋へと廊下を渡る。
いつも襖の入り口の所で踞り、自分の帰りを待っていた名無しさん。
彼女は、もういない。
襖をザッと開け、その勢いのままで部屋に上がると、足が何かに思いっきり当たる。
「痛っ……!!」
(えっ……!?)
「あっ、お蘭様。お帰りなさいませ」
(名無しさん!?)
驚き、目をパチクリさせていると、名無しさんが昨日、別れの挨拶をした時のように居ずまいを正し、クスリと笑う。
「私、決めました。私の人生、今日よりお蘭様に捧げます。だから、結婚の話は破談にして参りました。これからはどうか、貴女様の傍で、私という花を咲かせて下さいませ」
そして、彼女は深く頭を下げた。
数秒を頭を下げた後、ゆっくりと名無しさんは額を上げる。その唇には昨夜の桃色の紅が可憐に光っている。
気付けば、彼女の手を引き、自分の胸に引き寄せていた。
そして、そのまま名無しさんの桃色の唇を吸い上げる。
「……!!」
名無しさんは一瞬、何が起こったのか分からなかったことだろう。
だが、唇を重ね、数十秒たった今でも大人しく自分と唇を重ね続けている。
優しく舌を入れてやれば、ぎこちなくも反応し、絡めてくれる。
数分、口付けを堪能した後にゆっくりと顔を放し名無しさんの表情を見れば、まるで酔っているかのように顔を真っ赤にさせている。
「お蘭様……。これは、信長様に対する裏切りになるのでは……。あっ、でも私達は女同士だから……違う?……でも、その……えっと……」
混乱する彼女の手を繋ぎ、自分の寝室に連れていく。
「えっ!?寝室……お蘭様……私、その、その手のことは初めてで……特に女同士の場合、何をすればいいのか、さっぱり分からないのですが……あの……どうすれば?」
名無しさんの困惑する姿が可愛く、思わずクスクスと笑ってしまう。
そのまま、彼女を布団の中に引き入れると、その後は特に何もせず、ただ手だけは強く繋ぎ2人で惰眠を貪った。
fin.