彼女と彼女の事情①
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森蘭丸は織田信長の小姓である。信長の護衛の任に就くこともあれば、昨晩のように性的な交わりもこなすこともあった。
自分に与えられた役割を疎く思ったことはない。主君である信長から寵愛を得ることの尊さを深く感じているからだ。だから、信長様以外からの寵愛は必要ないし、欲しいとも思ったことはなかった。そして、信長様の思し召しが深い、この美しい姿のまま死にたいと毎夜切に願っていた。
だが……
人は花にはなれません。
その言葉が自分の奥深くから離れない。
自分の価値観を否定されたようなものだが、何故か心が温まる感じがした。
あの庭……。
名無しさんが育てる蘭の花々に目を向ける。あれが、全て散ったら彼女は居なくなる。
残された時間を共にしたくて。そのため、故郷に帰り婚姻する彼女を悩ませないよう、女の身となり、彼女を自分の女中として傍に置くことにした。
出来るなら……1日でも長く咲いていて下さい。名無しさんと共にいられるように。
庭の蘭へ声を掛け、自室へと戻る。部屋の襖を開けたとき、襖の傍らで踞っている誰かの姿を見つけた。
「……!!(名無しさん!!)」
「あっ、お蘭様……。お帰りなさいませ」
彼女は布団に入らず、どうやらここで自分の帰りを待っていたようだ。
名無しさんの手を取れば、冷たく冷えきっている。
「今、着替えの準備を致しますね。湯を持ってくるからお待ち下さい」
彼女はスルリと繋いだ手をほどくと、すぐに桶に湯を張り戻ってくる。
「では、身体を拭きますね。後ろから失礼しますよ。さぁ、寝間着を脱いで下さい」
彼女に促され、一瞬迷ったが、言われた通りに着物を脱ぎ、前に纏まる。後ろ姿だけなら……男とは分からないだろう。
一通り名無しさんは自分の身体を拭き終えると、さも当然と言うように蘭丸の前へと移動しようとする。
「……。」
「お蘭様?」
脱いだ着物を前に纏め、自分の前面を覆い隠す。
「前を……見られるのはお嫌なのでしょうか?」
名無しさんの質問にコクンと頷けば、彼女は不思議そうに自分を見つめる。
「分かりました。では、手拭いを絞ってお渡しするので、ご自分でお拭きになって下さいませ」
彼女は意を察したように、自分の背後に回り、絞った手拭いを渡してくる。それに安堵しながら、ゆっくりと身体を拭き上げていく。
障子の向こうから温かな秋の日射しが降り注ぐ。
この穏やかな時間が1日も長く続くことを祈った。
自分に与えられた役割を疎く思ったことはない。主君である信長から寵愛を得ることの尊さを深く感じているからだ。だから、信長様以外からの寵愛は必要ないし、欲しいとも思ったことはなかった。そして、信長様の思し召しが深い、この美しい姿のまま死にたいと毎夜切に願っていた。
だが……
人は花にはなれません。
その言葉が自分の奥深くから離れない。
自分の価値観を否定されたようなものだが、何故か心が温まる感じがした。
あの庭……。
名無しさんが育てる蘭の花々に目を向ける。あれが、全て散ったら彼女は居なくなる。
残された時間を共にしたくて。そのため、故郷に帰り婚姻する彼女を悩ませないよう、女の身となり、彼女を自分の女中として傍に置くことにした。
出来るなら……1日でも長く咲いていて下さい。名無しさんと共にいられるように。
庭の蘭へ声を掛け、自室へと戻る。部屋の襖を開けたとき、襖の傍らで踞っている誰かの姿を見つけた。
「……!!(名無しさん!!)」
「あっ、お蘭様……。お帰りなさいませ」
彼女は布団に入らず、どうやらここで自分の帰りを待っていたようだ。
名無しさんの手を取れば、冷たく冷えきっている。
「今、着替えの準備を致しますね。湯を持ってくるからお待ち下さい」
彼女はスルリと繋いだ手をほどくと、すぐに桶に湯を張り戻ってくる。
「では、身体を拭きますね。後ろから失礼しますよ。さぁ、寝間着を脱いで下さい」
彼女に促され、一瞬迷ったが、言われた通りに着物を脱ぎ、前に纏まる。後ろ姿だけなら……男とは分からないだろう。
一通り名無しさんは自分の身体を拭き終えると、さも当然と言うように蘭丸の前へと移動しようとする。
「……。」
「お蘭様?」
脱いだ着物を前に纏め、自分の前面を覆い隠す。
「前を……見られるのはお嫌なのでしょうか?」
名無しさんの質問にコクンと頷けば、彼女は不思議そうに自分を見つめる。
「分かりました。では、手拭いを絞ってお渡しするので、ご自分でお拭きになって下さいませ」
彼女は意を察したように、自分の背後に回り、絞った手拭いを渡してくる。それに安堵しながら、ゆっくりと身体を拭き上げていく。
障子の向こうから温かな秋の日射しが降り注ぐ。
この穏やかな時間が1日も長く続くことを祈った。