嘘つき姫【半蔵落ち】
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
何故、名無しさんを試すような事をしてしまうのか。このまま拐ってしまえばよいだけの話ではないか。だが無理に拐い、実は真田に心変わりをしていたのだと言われたら。そんなことを名無しさんの口から言われたら。名無しさんが好きだと言ってくれた忍の技で非道を強いるかもしれない。
「あの~、もしよければなんですけどぉ~。私が名無しさん姫様を半蔵の旦那の元までお連れしましょうか?」
「半蔵のところ?父上を殺したかもしれない男のところへ?」
「責めるもよし、憎むもよし、真相を確かめるのもよし。名無しさん姫様なら半蔵の旦那の寝込みを襲えるかもしれやせんぜ?」
選べ、名無しさん。
「この手に掴まってみませんか、名無しさん姫?」
「嫌……。行かない。もう彼とは会わない」
「それが貴女の答え?」
「……そう」
ふっ……
賽は投げられた。
ならば、影はただ去るのみ。
振り返らずに消えるつもりだった。
だが、最後に自分を好きだと泣きながら叫んでいた風変わりな姫の姿が一目見たくて振り返った。
名無しさんは手を伸ばしていた。
気付けば……伸ばされた手を掴み、胸に掻き抱いた。
変化の術は溶けていた。
「やっぱり。貴方だった」
「何故、拙者だと分かった?」
「秘密。女の勘よ」
「そうか。名無しさん、お主の両親は……」
名無しさんは嫌々するように首を横に振る。
「……ずっと。貴方だけを待っていた」
「よいのか。帰るべき場所はもうない。影の身である拙者では何も与えられない」
「いらない。半蔵がいれば、私は何もいらない」
啜り泣く名無しさんの頬を撫で、その瞳を見つめる。
「ならば、お主を拐う。拙者の女となれ」
泣き顔がはっとした様に目を瞬かせ、徐々にその頬を朱に染めていった。
「半蔵からそんな台詞が出るなんて。お願い、私を拐って。私を貴方のモノにして」
掻い付く名無しさんをしっかりと抱え、2人は暮れ行く闇へと消えていった。
名無しさんが伊賀へ来て数ヶ月が過ぎた。半蔵は何度も正式に妻になる様に迫ったが名無しさんは頷かなかった。
「私にはもう身分も資産もない。挙げ句、父も母も私も伊賀に居候している身分。いつか半蔵にはよき縁談が巡ってくるかもしれない。妻の座は、その時まで空けておいた方がいい。私は都合のよい女でいいから」
と固辞している。最近では女中に交じり掃除、洗濯、炊事に励んでいるようだ。
先日、廊下を水拭きする見慣れぬ女中を見つけ注視していると、それは髪を結い上げた名無しさんであり目を見張ったものだ。矜持高い姫だと思っていたがそうではないらしい。
「あら、半蔵様。いらしたのですか」
言葉使いも……。今では人目有る処、2人きりの時以外では自分に敬語を使う。最初は新鮮で少しばかり面白かったが、今ではそれが寂しく感じる。
「話がある。付いて来い」
「はい」
人目を避けるように道を選び、使われていない空き部屋へと名無しさんを誘う。
「人気がない部屋に女中を連れ込むなんて、いけない人」
「嫌、なのか」
名無しさんの腰に手を回し引き寄せればその身体は何の抵抗もなく、半蔵の意のままに引き寄せられる。
「嫌じゃないわ」
朱を帯びた両頬が幼子みたいで愛おしい。顎を捉え、唇を奪いに行けば、照れたように少しだけ顔を反らし抵抗する。
「嫌ならばやめるが」
意地悪く言ってやれば名無しさんは拗ねた様に口を尖らせる。
「だって……。恥ずかしくて。半蔵のこと直視出来ないんですもの」
「何を恥ずかしがることがある?」
逃げる身体を壁に縫い止め、震える唇に優しく噛みつく。あの日見た、小振りな乳房が見たく、合わせ目に手を差し入れようとした所でガクンと名無しさんの力が抜けた。
「名無しさん」
「……」
自分を好いてくれるのは嬉しいが
「のぼせて倒れおったか」
口付け程度でこの様となると、その先はかなりの長期戦になると予想された。
それもよかろう
難易度の高い任務に何故か自然と笑みが零れた。
fin.
「あの~、もしよければなんですけどぉ~。私が名無しさん姫様を半蔵の旦那の元までお連れしましょうか?」
「半蔵のところ?父上を殺したかもしれない男のところへ?」
「責めるもよし、憎むもよし、真相を確かめるのもよし。名無しさん姫様なら半蔵の旦那の寝込みを襲えるかもしれやせんぜ?」
選べ、名無しさん。
「この手に掴まってみませんか、名無しさん姫?」
「嫌……。行かない。もう彼とは会わない」
「それが貴女の答え?」
「……そう」
ふっ……
賽は投げられた。
ならば、影はただ去るのみ。
振り返らずに消えるつもりだった。
だが、最後に自分を好きだと泣きながら叫んでいた風変わりな姫の姿が一目見たくて振り返った。
名無しさんは手を伸ばしていた。
気付けば……伸ばされた手を掴み、胸に掻き抱いた。
変化の術は溶けていた。
「やっぱり。貴方だった」
「何故、拙者だと分かった?」
「秘密。女の勘よ」
「そうか。名無しさん、お主の両親は……」
名無しさんは嫌々するように首を横に振る。
「……ずっと。貴方だけを待っていた」
「よいのか。帰るべき場所はもうない。影の身である拙者では何も与えられない」
「いらない。半蔵がいれば、私は何もいらない」
啜り泣く名無しさんの頬を撫で、その瞳を見つめる。
「ならば、お主を拐う。拙者の女となれ」
泣き顔がはっとした様に目を瞬かせ、徐々にその頬を朱に染めていった。
「半蔵からそんな台詞が出るなんて。お願い、私を拐って。私を貴方のモノにして」
掻い付く名無しさんをしっかりと抱え、2人は暮れ行く闇へと消えていった。
名無しさんが伊賀へ来て数ヶ月が過ぎた。半蔵は何度も正式に妻になる様に迫ったが名無しさんは頷かなかった。
「私にはもう身分も資産もない。挙げ句、父も母も私も伊賀に居候している身分。いつか半蔵にはよき縁談が巡ってくるかもしれない。妻の座は、その時まで空けておいた方がいい。私は都合のよい女でいいから」
と固辞している。最近では女中に交じり掃除、洗濯、炊事に励んでいるようだ。
先日、廊下を水拭きする見慣れぬ女中を見つけ注視していると、それは髪を結い上げた名無しさんであり目を見張ったものだ。矜持高い姫だと思っていたがそうではないらしい。
「あら、半蔵様。いらしたのですか」
言葉使いも……。今では人目有る処、2人きりの時以外では自分に敬語を使う。最初は新鮮で少しばかり面白かったが、今ではそれが寂しく感じる。
「話がある。付いて来い」
「はい」
人目を避けるように道を選び、使われていない空き部屋へと名無しさんを誘う。
「人気がない部屋に女中を連れ込むなんて、いけない人」
「嫌、なのか」
名無しさんの腰に手を回し引き寄せればその身体は何の抵抗もなく、半蔵の意のままに引き寄せられる。
「嫌じゃないわ」
朱を帯びた両頬が幼子みたいで愛おしい。顎を捉え、唇を奪いに行けば、照れたように少しだけ顔を反らし抵抗する。
「嫌ならばやめるが」
意地悪く言ってやれば名無しさんは拗ねた様に口を尖らせる。
「だって……。恥ずかしくて。半蔵のこと直視出来ないんですもの」
「何を恥ずかしがることがある?」
逃げる身体を壁に縫い止め、震える唇に優しく噛みつく。あの日見た、小振りな乳房が見たく、合わせ目に手を差し入れようとした所でガクンと名無しさんの力が抜けた。
「名無しさん」
「……」
自分を好いてくれるのは嬉しいが
「のぼせて倒れおったか」
口付け程度でこの様となると、その先はかなりの長期戦になると予想された。
それもよかろう
難易度の高い任務に何故か自然と笑みが零れた。
fin.