嘘つき姫【半蔵落ち】
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名無しさんが拐かされてより7日。
この間、主より与えられた任務をこなすのと同時に、真田の支配下である上田城に密偵を放ち情報収集に明け暮れた。
配下の報告によると、名無しさんは城外の離れに捕らえられ、そこに真田幸村が毎夜足繁く通っているらしい。
あんな癖の強い姫に何故真田が執着するのか……自問自答しつつも己も人の事を言えた義理ではないと溜め息を吐く。
名無しさんは真田の寵愛を受けているのだろうか。毎夜、真田が通うとあればそうなのだろう。
見方を変えれば、それは喜ばしいこと。名無しさんは確実に生きているのだから。
だが一方、それは男女の関係にあることも意味する。
半蔵のことを好きだ、惚れた、と顔を赤らめながら言う名無しさんの姿は今も容易に思い返せる。
最初は名無しさんの自分への恋心すら利用する腹積もりでいた。一国の姫が忍である自分に恋をする……利用しない手はないと考えた。
それがいつからか。自分の方が名無しさんに絆されてしまったのは。
真田幸村は……
着物の下に隠れた白い肌を。
あの日見た小振りな乳房の下の続きを。
名無しさんの喘ぎ声を。
半蔵の知らない名無しさんの痴態を知っている。
「頭領」
「どうした」
自室の外より声が掛けられる。
伊賀屋敷の守備を担う配下からのものだった。
「家康様が頭領にお目通りしたいとお越しになっております」
「主が」
急な主君の来訪に驚きもしたが、急ぎ主をもてなす準備をするようにくノ一達に指示をとばしていく。
主がわざわざ此処へ足を運ぶとは……。
何か、任務があるならば半蔵の方が呼び出されるのが常。
つまり、半蔵にとって後ろめたい何かがあるということだ。
準備を整えた客間に入り、主が現れるまで息を潜めて待つ。
やがてガチャガチャとした鎧の音と共に、くノ一に案内された家康が客間へと姿を現した。少し表情が曇っているような気がする。
「急に来訪してしまって申し訳ない。半蔵、お主にどうしても頼みたいことがあってここに参った」
「ご用件は」
主を上座へと促し、自分は下座に腰を据える。
「武田より使者が来てな。何でもお主が匿っている領主夫妻の首が欲しいと言ってきている。あまりに横柄、手前勝手と言えよう。だが、従わなければ三河への侵略も辞さないと脅された」
「主の決断は……」
家康は言いにくそうに1つ溜め息を漏らす。
「武田に従おう」
「御意」
主の命は絶対。逆らうことなど有り得ない。だが、頬を赤らめて半蔵を見つめる名無しさんの姿が脳裏に焼き付いて離れない。
「半蔵、お主はそれでよいのか?」
「影は主の命に従うのみ」
「武田が狙うとる領国の姫とは懇意の仲なのであろう?」
「否定は出来ぬ。だが、任務の支障には成り得ぬ。ご安心を」
「好いた女のかぞいろはを討ち取る覚悟があるということか」
黙して頷き肯定の意を表す。
「わしは少しな、武田の横柄な申し出に腹が立っておる。だが、今の徳川では武田には到底太刀打ち出来ぬ。だから、武田に少しだけ泡を吹かせてやりたい」
家康の目が力強く半蔵を見つめた。
「確かあの領国は、長い間他国を侵攻することも侵略されたこともなかったはずだ。そこで聞きたいのだが半蔵。領主夫妻の顔をどれだけの者が知っておると思う?」
彼の地には名無しさんに呼ばれ何度も赴いたが戦や戦乱とは無縁で他国の間者が出入りしている様子もなかった。
「恐らくは、出入りのあった当家のみかと」
「ならば話は早い。半蔵、ここからはお主の領分だ。例え領主殿の首を渡したところで武田方にはそれが本物かどうか知る術はなし。ならば……首を差し替えた所で気付きようもない」
「主、それは」
「首の用意、お主に任すぞ」
「御意」
家康はゆっくりと立ち上がり、退室の準備をする。
「これがわしの出来る限界だ。領国が武田の手中に落ちることは揺らぎないだろう。世間ではわしを狸と揶揄する者も多いというが……やれやれ、これがわしの限界だ。もう少しうまく化かせられたらよいのにのぉ」
それだけ呟くように言うと家康は廊下を進み退室した。
半蔵は姿を消した主の背に向かい深く頭を垂らした。
この間、主より与えられた任務をこなすのと同時に、真田の支配下である上田城に密偵を放ち情報収集に明け暮れた。
配下の報告によると、名無しさんは城外の離れに捕らえられ、そこに真田幸村が毎夜足繁く通っているらしい。
あんな癖の強い姫に何故真田が執着するのか……自問自答しつつも己も人の事を言えた義理ではないと溜め息を吐く。
名無しさんは真田の寵愛を受けているのだろうか。毎夜、真田が通うとあればそうなのだろう。
見方を変えれば、それは喜ばしいこと。名無しさんは確実に生きているのだから。
だが一方、それは男女の関係にあることも意味する。
半蔵のことを好きだ、惚れた、と顔を赤らめながら言う名無しさんの姿は今も容易に思い返せる。
最初は名無しさんの自分への恋心すら利用する腹積もりでいた。一国の姫が忍である自分に恋をする……利用しない手はないと考えた。
それがいつからか。自分の方が名無しさんに絆されてしまったのは。
真田幸村は……
着物の下に隠れた白い肌を。
あの日見た小振りな乳房の下の続きを。
名無しさんの喘ぎ声を。
半蔵の知らない名無しさんの痴態を知っている。
「頭領」
「どうした」
自室の外より声が掛けられる。
伊賀屋敷の守備を担う配下からのものだった。
「家康様が頭領にお目通りしたいとお越しになっております」
「主が」
急な主君の来訪に驚きもしたが、急ぎ主をもてなす準備をするようにくノ一達に指示をとばしていく。
主がわざわざ此処へ足を運ぶとは……。
何か、任務があるならば半蔵の方が呼び出されるのが常。
つまり、半蔵にとって後ろめたい何かがあるということだ。
準備を整えた客間に入り、主が現れるまで息を潜めて待つ。
やがてガチャガチャとした鎧の音と共に、くノ一に案内された家康が客間へと姿を現した。少し表情が曇っているような気がする。
「急に来訪してしまって申し訳ない。半蔵、お主にどうしても頼みたいことがあってここに参った」
「ご用件は」
主を上座へと促し、自分は下座に腰を据える。
「武田より使者が来てな。何でもお主が匿っている領主夫妻の首が欲しいと言ってきている。あまりに横柄、手前勝手と言えよう。だが、従わなければ三河への侵略も辞さないと脅された」
「主の決断は……」
家康は言いにくそうに1つ溜め息を漏らす。
「武田に従おう」
「御意」
主の命は絶対。逆らうことなど有り得ない。だが、頬を赤らめて半蔵を見つめる名無しさんの姿が脳裏に焼き付いて離れない。
「半蔵、お主はそれでよいのか?」
「影は主の命に従うのみ」
「武田が狙うとる領国の姫とは懇意の仲なのであろう?」
「否定は出来ぬ。だが、任務の支障には成り得ぬ。ご安心を」
「好いた女のかぞいろはを討ち取る覚悟があるということか」
黙して頷き肯定の意を表す。
「わしは少しな、武田の横柄な申し出に腹が立っておる。だが、今の徳川では武田には到底太刀打ち出来ぬ。だから、武田に少しだけ泡を吹かせてやりたい」
家康の目が力強く半蔵を見つめた。
「確かあの領国は、長い間他国を侵攻することも侵略されたこともなかったはずだ。そこで聞きたいのだが半蔵。領主夫妻の顔をどれだけの者が知っておると思う?」
彼の地には名無しさんに呼ばれ何度も赴いたが戦や戦乱とは無縁で他国の間者が出入りしている様子もなかった。
「恐らくは、出入りのあった当家のみかと」
「ならば話は早い。半蔵、ここからはお主の領分だ。例え領主殿の首を渡したところで武田方にはそれが本物かどうか知る術はなし。ならば……首を差し替えた所で気付きようもない」
「主、それは」
「首の用意、お主に任すぞ」
「御意」
家康はゆっくりと立ち上がり、退室の準備をする。
「これがわしの出来る限界だ。領国が武田の手中に落ちることは揺らぎないだろう。世間ではわしを狸と揶揄する者も多いというが……やれやれ、これがわしの限界だ。もう少しうまく化かせられたらよいのにのぉ」
それだけ呟くように言うと家康は廊下を進み退室した。
半蔵は姿を消した主の背に向かい深く頭を垂らした。