1.無色
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明天高校に入学が決まり、通いやすいように春に引っ越しをした。
お父さんの会社からは少し遠くなってしまったので、今では申し訳なかったなと思う事がたまにある。
志望校を急遽変更し、担任の先生とも何度か面談をした。
ちゃんとした理由も伝えてなかったから両親も担任の先生も最初は納得してくれなかった。
でもあからさまに元気が無かった私を心配し、最後には両親がおれてくれたのだ。
本当はもっと早く引っ越したかったし、中学も辞めてしまいたかったけど…。
借りていたアパートの契約もあったので断念。
アパートから1番近くの高校には絶対行きたくなかったので猛勉強し、なんとかこの高校へ入学する事ができた。
そのタイミングで中古の一軒家を購入し、今は両親と3人で暮らしている。
学校を出たところで、お互いの通学について話しをした。
そしたら同じ電車で通っていることが分かったので氷川さんからは笑みが零れている。
利用している駅も同じで……。
私の家の近くの団地に氷川さんは住んでるそうだ。
氷川さんは朝も早いし、帰りは私がとっとと帰るので同じ電車に乗ったことは今までに無かったみたい。
そんな他愛も無い話しをしながら少し歩いた後、氷川さんが急に立ち止まった。
「………?」
「………。」
「……私、氷川さんに何かした、かな?」
「え?なんで?」
「だって今まで接点無かったのに。一緒に帰ろうって……。」
「……何もしてないよ。ただ心配になっただけ。」
心配って、何の心配だろう?
「入学してから笑った顔見たこと無かったし、誰かと一緒に居るところも見かけなかったから。」
「……それは氷川さんも同じじゃん。」
「そう、だけど。」
あ、違う。
1度だけ見たことがある。
担任の先生に呼び止められていつもより帰りが遅くなった日。
帰り道、ファミレスの窓から氷川さんを見かけたことがある。
1人じゃなくて友達と一緒のようだった。
少ししか目を向けていなかったのに、氷川さんからもその友達からも柔らかくて暖かい雰囲気がながれていたのを覚えている。
「あの時氷川さん、笑ってたね。」
「……え?」
「ファミレスで……、友達といるところ……。」
「あ、美姫ね。美姫とは幼馴染で同じ団地に住んでるから、時間がある時は…って!今は私の話しはよくて……。」
なんか、イメージと違う。
教室では女王なんて陰で呼ばれていて、近寄り難いオーラが出ている。
だけど今の氷川さんは……
顔を少し赤くして真っ直ぐ私を見つめている。
「なんでいつも1人なの?」
「1人が楽だから。」
「……楽。確かに楽だね。」
……!
「……ふっ。」
思わず口に出して笑ってしまった。
「え?なに?」
「今までそんな風に返した人いなかったから。」
そんな事ないよ。
みんなといる方が楽しいし。
唯乃ちゃんも一緒に打ち上げ行こうよ。
みんな、みんな、みんな……。
同じような言葉で、同じような目をしていて……。
息苦しかった。
行ける訳ないじゃん。
今更あいつらにどんな顔をして会えばいいの?
裏切られたのに無理して合わせないといけないの?
そんな私を否定されているようだった。
けど氷川さんは違った。
「1人は良いよね。誰も私の中には入ってこれないの。だから裏切られることもない。」
「裏切られる?」
「うん。信じていた人に裏切られたら悲しいでしょ?」
こくり、と氷川さんは頷く。
「だからもう誰も信じないの。」
誰も入ってこなければいい。
ずっと1人のままでいいの。
そうすればもう……傷つくことは無いから……。