1.無色
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帰宅すれば、お母さんにものすごく怒られた。
すぐに風呂に入るように言われ、濡れた髪、体を洗い流し湯舟につかる。
冷えていた体がじんわりと暖かくなった。
凍ったように感じなくなった心も少し軽くなった気がした。
今日、お父さんは仕事で遅くなるらしいので、風呂上りはお母さんと2人でご飯を食べた。
ビーフシチューとマカロニサラダ、そして熱々のスープを口に運ぶ。
テレビのペット特集を見ながら、お母さんは笑顔になっている。
「あ、ほら唯乃……猫ちゃん、可愛い……。」
心配かけたくなくて私もテレビを見て、笑顔を見せた。
それから学校での出来事を少し話して、自分の部屋に戻る。
学校での出来事……って言っても半分は嘘だ。
授業のこと、"新しくできた友達"のことを話すけど……。
今度家に連れてくればいいのに。とか言ってくるのでちょっと面倒だ。
友達なんかいない。友達なんかいらないの。
そう言えたらどんなに楽だろう。
次の日の朝。
教室へ入ると氷川さんの席へと歩き出す。
良かった。
やっぱり居た。
ホールムールが始まるまで、まだ時間がある。
教室には生徒が数人居るだけだ。
いつもは時間ギリギリに教室へと入るけど、今日だけは早めに登校した。
今のうちに傘を返そうと氷川さんへ話しかける。
「昨日はありがとう。」
目は合わせずに軽く頭を下げる。
自分からクラスメイトに話しかけるのは初めてかもしれない。
今では必要最低限以外は話しかけられることも無くなったので、家族以外と話すは久しぶりだ。
持っていた傘を差し出すとスラっとした細い手がその傘を掴んだ。
白くて奇麗な手。
「風邪ひいて無くて良かった。」
小さな声だったけど聞き取れたその言葉に泣きそうになった。
どうして、私の心配をするの?
関係ないのに。
「それじゃあ……。」
振り向いて歩き出そうとした。
けど、ぐいっと右手を掴まれる。
「あ、えっと……今日一緒に帰らない?」
「え……?」
なんで?
入学してからそんな事言われたが無くて……どうしたらいいか分からなかった。
「ご、めん…。早く帰りたいから。」
「一緒に帰るだけ、だから。ね……?」
断ったのに、掴んだ手を離さない氷川さん。
けど、なぜか嫌な感じは全然しなくて。
今までの人達とは雰囲気が違った。
氷川さんと少し話してみたいななんて思ったりして……。
「分かった。」と返事をすれば納得したのか氷川さんは手を離して、傘を持って教室を出て行った。
靴箱にある傘立てまで傘を置きに行ったのだろう。
氷川さんの後ろ姿をじっと見つめ、自分の席へと戻った。
そして放課後。
氷川さんが近づいて来て、帰ろ。と呟き歩き出す。
それに続くように私も歩き出した。