7.わだかまり
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(湊side)
美姫の後ろを歩き自販機までやって来た。
無言のまま美姫はココアとお茶の紙パックを購入する。
その次に紅茶のボタンを押そうと手を伸ばしているのに気が付き、美姫を止める。
「あ、紅茶は俺出すよ…。氷川さんは何がいいかなぁ?」
「……なんで?」
「この前、ここで氷川さんん話しかけたら驚かせちゃって。間違えて、すげぇ変なやつ買わせちゃったんだよね。」
あ、これだ。
カレードリンクと書かれた黄色いパッケージを指さす。
このカレードリンク、買う人絶対いないだろ。
なんでずっとラインナップされてんだ……。
「っていうの、今思い出した。唯ちゃんは紅茶飲んでることが多いし、買ってあげたいなーって!」
「……。ミナトってさぁ、こゆんと唯のことどう思ってんの?」
「え…?どう思ってる……?」
珍しく、真剣な表情でこちらを見てくる美姫。
不安そうに俯く美姫に思わず固まってしまった。
「あー、いや…。ごめん、言い換えるわ。何で気にかけてるの?」
「え、何でって…。たまに見かけて。うちの学校にあまりいないタイプだな~とか思って顔覚えて……。」
それで……。
見かける度になんとなく気になって……。
今は2人並んでることが多いけど。
1学期の時は誰ともつるまず、いつも1人でいるなって思ってて……。
「かわいそうだなー…って……。」
「…っ。みなと……そういう理由で2人に近づかないで。」
美姫の顔がどんどん暗くなり、目つきが鋭くなった。
「ミナト、いっつも1人でいる人が"可哀想だから"って話しかけるけど、それって凄く傲慢だよ。」
「………。」
「勝手に可哀想とか思われて……"同情されてる"って気付いた時の虚しさ分かる?
ミナトは人に自分のこと見て欲しいだけじゃん、自分に依存して欲しいだけだよ。」
依存…?
そんな風に思ったこと今まで無かった。
はずなのに……ドキッと心臓が跳ねた。
「可哀想かどうかなんてミナトが決めることじゃないから。自分がこうあるべきって思うこと、2人に押し付けないで。」
「……。確かに、そうだったかも。けど最初だけだよ。」
周りの人達には一切興味無いみたいに壁を作る2人。
それを見て…
可哀想だな、"こっち側"に来れるようにしてあげたいって思った。
でも今は…。
美姫、ヨータ、俊也と普通に話し笑っている2人を見て、安心して……。
もっと見たいなとか、俺にもその笑顔向けてくれないかなって。
「……。今は別の意味で必死になってるから、安心して♪」
「え…こゆん、ミナトみたいなのはタイプじゃないと思う。唯のタイプとかは知らないけど。」
「え~、そこはちゃんとリサーチしといてよ。」
「………。とにかく2人に変な近づき方しないで!」
「いや、喋るぐらいいいでしょ?美姫は2人の保護者なの?」
「私は…もうこゆんを傷つけたくないの。」
傷ついて欲しくないじゃなくて?
その言葉が妙に引っかかった。
それってもしかして…。
泣きそうな美姫を見て、言おうとしていた言葉が出てこなかった。
美姫も気にしてることを無理に掘り返さなくていいや。
大体の事情は分かったし。
ていうか…さっきの美姫の言葉……。
「"同情される虚しさ"ってさ…美姫もしかして、塾で俺が話しかけたことずっとそういう風に思ってた?」
「え?あ~、それは…。」
焦りながら俺から目を逸らす美姫。
図星、か……。
「ごめんな、確かに同情だったかも。」
「……!」
「1人でつまらなそうにしてるのが気になって声かけたから。けど友達になってから美姫のことそういう風に見たこと1度も無い。」
「ミナト……。」
「美姫と友達になって、ヨータも加わって俺は凄い楽しかったから…。美姫がそんな風に悩んでたの気付けなかった。嫌な思いさせてごめん。」
なんであの時、声をかけたのか。
正直分からない。
でも今は美姫とヨータとワイワイ騒ぎながら過ごす学校生活は楽しい。
だからそのまま美姫に伝える。
震えていた美姫の左腕をそっと掴む。
俺を見上げてきた美姫と目が合った瞬間、彼女の瞳から溢れ出した涙。
「ミナト。…ほんとそういうとこー!近いわ!!」
シリアスな雰囲気だったのに。
俺の腕をぎゅっと握った後、強く振り払う。
「私も楽しかった!し、めちゃくちゃ助けられた。…ので!これからもヨロシク!!」
ゔゔ、ちくしょう…。と最後に小さい声で呟いている美姫。
泣きながら怒っている美姫を見て、思わず笑ってしまった。
「ははっ、うん……よろしく。」
ニットの袖口を軽く伸ばして、美姫の目元に持っていく。
涙を拭うように軽く触れふき取る。
「あ、ニット汚れる。」
「大丈夫、そんなキレイじゃないから。」
「え?」
顔と目を赤くして、拗ねたような表情を見せる美姫。
そんな彼女を見てまた笑みが零れた。