6.矢印
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………。
なんで。
また昨日と同じ状況になっているのだろう。
隣に座る雨宮君。
こゆんでも、美姫でもヨータでもいいから……
早く来て、と思いながら雨宮君の言葉を受け流していた。
――――――――――――――――
10分前。
授業が終わり、こゆんと2人で6組へと向かう。
その途中で美姫から連絡がきて、ホームルームが長引いているとのことだった。
5組の先生は話が長いことで有名だ。
美姫と約束すると大抵遅れてくる。
だから、また今日もか…なんてこゆんと話しながら歩いていると…。
「唯、先に行ってて。」
こゆんが足を止めたので、それにつられて私も立ち止まる。
「どうかした?」
「昨日もヨータが飲み物買ってくれたから、今日は私が先に買っておこうかなって。唯は紅茶でいい?」
「うん、ありがとう……。私も行こうか?」
「袋持ってるから大丈夫。6組で待ってて。」
分かった、とこゆんに手を振り歩き出す。
さすがこゆんだな。
今度は私がみんなの分準備しとかなきゃ。
そして6組まであと少し…というところで、教室からヨータが飛び出てきた。
私に気が付くと、耳に当てていたスマホを離し声をかけてきた。
「ごめん、ちょっとだけ席外す。あそこ座ってて。」
「うん……。」
教室の出入り口まで戻り、隣同士合わせた机を指さすヨータ。
前側の机を後ろ向きにして4つ分の机が並んでいたのでとりあえず奥の席に座った。
鞄から教科書とノートを取り出そうとした時、教室の前方にいた派手な髪色をした女子生徒2人と目が合う。
その瞬間、目を逸らし背を向けた女子生徒達はヒソヒソと耳元で話をしているようだった。
………。
やだな。
何かあるなら直接言えばいいのに。
早くこゆん達来ないかな。
「あれ、唯ちゃん!6組で何してるのー?」
そんな時聞きなれた声が聞こえ、教室のドアへと振り返る。
すると雨宮君がドアから顔を覗かせてこちらを見つめていた。
え……?
誰か来ないかな、とは思ったけど…
まさかの雨宮君?
面倒なことになりそうな予感しかしなくて、一気に不安が押し寄せた。
「雨宮君、えっと…こゆん達と勉強会。」
そうなんだ。と嬉しそうにこちらに近づく雨宮君。
そして当たり前のように隣に座り、親しそうに会話をする私達を女子生徒達が見ている。
「……唯ちゃん。」
その女子生徒の視線に気が付いた雨宮君は右手で手招きして私を呼ぶ。
体を彼に近づけると耳元に雨宮君の顔が近づく。
口元を手で隠して視線だけを前方にいる女子生徒へと向けていた。
……?
特に何かを喋りかけてきた訳では無く、無言のままの雨宮君。
しかし、そんな雨宮君を見ていた女子生徒2人は、机に置いたままになっていた鞄を持つと慌てた様子で教室から出て行った。
「雨宮君?」
「あーゆーのニガテでしょ?実は俺も。」
「え……?」
苦手?
雨宮君が…?
クラスの中心で、男子とも女子とも仲が良くて。
陰口なんて言われたこと無さそうなのに。
「意外だと思った?」
「うん。」
「あの2人結構ぐいぐいくるタイプなんだよね。…他の女子と話してると会話に混ざってきてさ、ちょっと迷惑してたんだ。」
苦笑いの雨宮君。
…そうなんだ。
雨宮君が登場してから、酷く顔を歪ませていたからあの人達は雨宮君のことが好きなのだろう。