3.心の距離
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美姫が少し落ち着きはじめたので試験勉強を再開した私達。
しかし、今度は別の問題で手が止まっていた。
思ったよりも美姫が普段の授業についていけてなかったのだ。
私も勉強が得意ではないが……授業はしっかりと聞いているので試験前に復習すればそれなりの点数がとれる。
数学は一番苦手なので、こゆんに教えてもらうことが多いけど。
「ちょっとどうしよ。ほんとヤバい。前回数学やばかったから今回点取らないと。」
「美姫……。留年したらユーキと同じ学年だよ。」
ユーキとは美姫の弟の優希君。
こゆんとも昔からの付き合いみたいで仲が良さそうだ。
美姫の部屋におじゃました時に私も2回ほど会っていて、見た目が派手だったので苦手だ!と勝手に決めつけてしまったが、少し話しをしただけで打ち解けてしまう程優しくて面白い弟さんだった。
「優希は今頃、家で勉強してんの?」
「どうだろ。塾の自習室とか行ってんじゃないかな。家で1人だと集中できないタイプだから。」
「姉弟揃って……。」
「こゆんち行くって言ったらついて来たがってたよ。……唯も来るから無理って言ったら、あいつ着替え始めてついて来ようとしてんの!」
「それ絶対勉強しないやつじゃん。」
「ははっ!最近優希君に会ってないから、今度連絡してみようかな。」
「え~、唯が絡むとすぐ調子乗るからなぁ……。
あ、そーだ!」
話しが段々と盛り上がり、美姫は少しずつ元気を取り戻す。
何かを思いついたのか、目を輝かせ私とこゆんを見つめる美姫。
「こゆん、唯。来週放課後、公民館の自習室行かない?」
「どこの?」
「自習室か。」
「学校から駅寄り歩いたとこ!!……自習室?多目的室?的なのあんの!
1回覗きに行ったことあるんだけどさぁ~、すごいよ。雰囲気ガチ過ぎて入らずに帰って来たもん。」
「逃げてんじゃん……。」
「美姫、1人じゃ心細いんでしょ?」
「うん、そうだね!」
いや、自信満々に言うことじゃないけどね。
「今日こゆんに教わったところもう1回復習しときたいし、集中できるなら行ってみようかな。」
その言葉にこゆんも頷く。
「んじゃ暗記系はそこでやるとして……。数学は今日で理解して帰りなね。」
「だぁー……。」
教科書を指さすこゆん。
美姫は大きなため息をつくと少しだけ顔をテーブルに伏せたが、その後両頬を叩きシャーペンを握りしめ勉強を再開した。
それから2時間後。
もう21時を過ぎてしまったので、帰り支度をはじめる。
美姫もこゆんに教えてもらいながらテスト範囲の半分くらいは理解したようで、とりあえずは安心だ。
「んじゃ、また明日ね~。」
先に美姫が玄関を出て、手を振りながら上へと続く階段を上る。
シン……
駆け足で上っていく足音が消えたかと思ったら、急に階段の手すりの隙間から顔を覗かせる美姫。
「おやす~。」
「おやす~!」
「はやく帰りな。笑。」
私達の顔を最後に見て満足したのか、美姫はまた階段を駆け上がっていった。
「じゃあ私も帰るね。……いつも勉強教えてくれてありがとね。」
「それはいいけど……唯、帰り大丈夫?美姫ならすぐ上に住んでるし、ゴリラだから全然心配してないけど……。」
「大丈夫だよ。ゴリラにはなれないけど逃げ足だけは早いからね。」
「ふふっ、そっか。じゃあまた来週。」
こゆんに手を振り、歩き出す。
うぅ、寒い。
両手を擦りながら、いつもより歩くのが早くなる。
やっぱりこの時期の夜は一段と冷える。
あ、そうだ連絡しとこ。
学校が終わってから、友達の家で試験勉強するってお母さんに連絡したけど……。
心配性だから今から帰る、って言っとかないと。
「……よし。」
信号待ちをしてる時にスマホでお母さんに一言連絡して、夜空を見上げる。
星が奇麗だなんて思っていたらブブッとスマホが震えたので画面を見る。
メッセージの着信はお母さんからではなくこゆんからだった。
家着いたら連絡してね。
「……心配性第2号だな。」
心配してくれるのが凄く嬉しくて……。
思わず笑みが零れた。
こゆんも美姫も大好きだ。
一緒にいてもありのままの私でいられる。
こんな私のこと絶対否定しないの。
だから、高校卒業するまで……卒業してからも、ずっと友達でいれたらいいのに。
まさか自分がこんなこと考えるなんてね。
消えることの無い過去を塗りつぶして無かった事に出来たら……。
なんて思いながら信号が青になるのを待った。