3.心の距離
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教室に戻り、こゆんは自分の席へと座りカレードリンクを飲み始めた。
私はこゆんの席の隣に立つとぐいっと顔を近づけた。
うん、凄いカレーの匂いがする。
「ちょっとこゆん、あんな感じで逃げて良かったの?」
「……んー。思ったより表情動かなかった。」
「うん、全然笑えて無かったよ。」
「そう思ったら唯がなんとかしてくれれば良かったのに。」
不満を言いながらも、座っていた椅子を半分空けてくれるこゆん。
こゆんの隣に座り、紅茶のペットボトルを開けながら答えた。
「私には関係ないもんね。……それにああいう人達苦手だもん。」
こゆんも困ってたし、助けたかったけど。
私が間に入ったら余計ややこしくなりそうだったし。
「…………チッ。」
暫くすると顔を歪ませ、舌打ちするこゆん。
「……あ、今のは唯に対してじゃないからね。」
「分かってるよ。」
中学時代のこと思い出したのかな。
陽キャ達の雰囲気の中にいると、私も思い出しそうになる。
あの頃は男女関係なくクラスのみんなと自然と話してたな、とかね。
「チョコあげるからさ、機嫌直してよ。」
そう言って自分の席にかけてあった鞄からチョコの箱を持って来て、こゆんの机の上に置く。
「これ新作なんだよ。」
「……唯、ありがと。」
こゆんの顔を覗けば少し笑顔になっていた。
それをみて安心したので手を振り私も自分の席へと戻った。
―――――――――――――――
数日後。
今日は試験勉強をしに、学校の帰りにこゆんの住む団地へとやってきた。
バイトが無いらしく、美姫も一緒にいる。
2人は部屋着の姿だが、私は家に帰らずに寄ったので制服のまま。
机には教科書とノートが広がっていて、今は3人でしるこサンドを食べながら休憩しているところだ。
「あれからどう?」
「え?何が?」
「美姫、前に"疲れた"って言ってたじゃん。」
少し前に聞いた感じだと美姫は5組での学校生活にかなり疲れている様子だった。
性格上無理してみんなに合わせることも多いみたい。
「ああ……。今試験勉強ヤバ過ぎて忘れてた。……ていうか何だろ。いざ"素を出すぞ!"なんて思っても直ぐに出ないというか。元から"素の自分"なんてなかったみたいな。」
「「………。」」
とりあえず口を挟まず美姫の話しを聞く。
「もうクラスにいると自然と切り替わっちゃうんだよね。なんか……本当の私って何だろ……。自分の気持ちがわからない……。」
「……美。」
パァンッ
「「!?」」
心配したこゆんが励まそうと口を開いたと同時に美姫は自分の両頬を思い切り叩いた。
「ヤバいヤバいヤバい。今私超ポエってた。……違う違うちがーう!今のは流石に"私"じゃない!!」
これは長くなりそうだな。
私とこゆんは顔を見合わせると、美姫が落ち着くまでしるこサンドを食べながら待つことにした。
「試験範囲こんなに広いとか知らなかった……。油断してた……。」
「今知れて良かったね。」
「そうだよ。まだ間に合う。」