3.心の距離
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すたすたと早歩きでどんどん先に行ってしまうこゆんにようやく追いつき横に並ぶ。
「こゆん、さっきの人知り合い?」
「んー。知り合いって言う程じゃない。ただこの間……。」
階段のところの鏡で顔を柔らかくしようとしていたら、急に隣に現れたらしい。
驚いてコケたらその男子生徒の友達も来て助けてもらって、少し話しをしたそうだ。
うん、それは私でも驚くよ。
まぁ私には関係ないことだけど。
「……ふーん。あ、紅茶飲みたい!」
すっかり体が冷えてしまったのでこの先にある自販機へと向かう。
それにつられてこゆんも続く。
ボタンを押して暖かい紅茶を取り出し、横に居るこゆんへと視線を移す。
お金を入れて何にしようか悩んでいるこゆん。
あれ、さっきの人。
気配を感じ後ろを振り向けば、先程の男子生徒がすぐ後ろに居た。
突然の事にこゆんに声をかけられずにいると……。
「んー、ココアにしようかな。」
「なんで無視すんのー。」
ピッ
声をかけたタイミングが悪かったのかこゆんは肩を大きく揺らし、ココアの隣にラインナップされていたカレードリンクのボタンを押してしまった。
ガコンッ
暫く沈黙する私達。
カレードリンクを取りながらゆっくりと振り返り、こゆんは声をかけてきた男子生徒へと視線を向けた。
「?無視……?」
「手振ったら逃げてくんだもん。」
「え!……手?」
こゆん、気づいてなかったのか……。
ショック~と泣いた素振りを見せている男子生徒とおどおどしているこゆん。
「ごめん、なさい…?それは気付かなかっただけで……悪意はない、です。」
「うん、まぁ分かってるよ。」
その後、ケロッとした顔を見せた男子生徒にこゆんも私も困惑した。
知り合いっていう程じゃない、って言ってたもんね。
それなのに、距離がかなり近い。
「お~い…アマミヤ、何してん~?」
声がした方を振り向けば、男子生徒と仲良さそうにしていた人達がこちらにやってくる。
「…アマミヤ。」
「ん?そ、オレ。…雨宮湊です。」
自分の顔を指さし、よろしくーっとこゆんに軽く頭を下げている雨宮君。
頭を上げた後、後ろにいた私にも笑顔を向け手を振っていたのでペコリと頭を下げた。
「は?なに…今、自己紹介?ナンパか?ざけんなよ。」
真ん中にいた黒髪の生徒が謝宮君の肩を乱暴に抱くと私達へと向き直る。
「ちょっとこいつ、だいぶ馴れ馴れしいっしょ?気をつけた方がいいよ~。あぶないから。」
その言葉に怒った雨宮君が、黒髪の生徒の顔を軽く掴む。
そんな2人を見て、他の生徒達もわいわいと騒ぎ出した。
この状況、どうすればいいのだろうか。
早くここから立ち去りたい。
落ち着くところに行きたい。
と思うけど、この人達を無視して離れるのは流石に感じが悪い、よね?
こゆんの顔も固まってしまっている。
その表情を見た黒髪の生徒がじろりとこゆんを見て顔を歪ませた。
ついに顔を伏せてしまったこゆんに、何を思ったのか雨宮君は……。
両手で自分の頬を掴み、びよーんと伸ばした。
「「……?」」
何?いきなり……。
戸惑ったが、こゆんはこの雨宮君の意図に気が付いたようで……。
少し考えた後、硬い表情のまま笑った。
そして深く頭を下げ、すたすたと歩き出す。
私も同様に頭を下げると小走りでこゆんを追った。