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結局のところ獣と獲物

 アイビーは小さな体を丸めて深く深く頭を下げた。本日十回目の謝罪だ。魔法陣はいつも書き間違えるくせに客へ謝罪するときの姿勢は見事なものだった。
「大変申し訳ありませんでした……」
「申し訳ありませんで済むと思ってるの!?」
 この前アイビーの魔法陣を利用した女性客はアイビーの謝罪をものともせずに怒り続ける。うつむいたままアイビーは同僚に助けを求める目を向けたが、目があった同僚は諦めろ、と言うように首をふった。
「私はあの町の広場に行きたいって言ったの。それなのに着いたのは町の端! 町の外は戦場なのよ! 巻きこまれたらどうしてくれるの!?」
「ですが奥様……行き先をお伺いしたときに申し上げたはずです。私の腕では危険な場所に転送されてしまう可能性がございま、す……」
 思わず言い返してしまったアイビーを、女性客はぎろりと睨んだ。親の敵を見るようなその目に怯んでアイビーの言葉は先細っていく。巻き込まれない程度に離れた場所で書類整理をしていた同僚は、この苦情が長引くことを悟った。


 嵐が過ぎ去り疲れきったアイビーはよろよろと椅子に座りこんだ。傷の増えてきたティーポットを傾ける。机に水滴をこぼしつつ注がれたお茶をこくりと飲み込んだのを見て、同僚はアイビーにお菓子の乗った皿を差し出した。
「貰い物だけど、これ食えよ」
「え、そんな貴重なもの貰えないよ」
「いいから、ほら!」
「ありがとう……」
 お菓子をおそるおそるつまむアイビーを横目に、同僚は大きなため息をついた。
「まったく、はした金で使える転送屋にいろいろ求めんじゃねえよ」
「特に僕のは座標がずれやすいからね。もっと正確な子を勧めたんだけど」
「早いのがいいって言ったのはあの客だろ? 完璧を求めるならもっとお高いとこに頼めってんだ」
 そうだね、と返事をしてアイビーは一口お茶を飲む。失敗続きのアイビーの顔色はまだよくなっていない。同僚は不安を隠すようにお菓子の袋を開けた。


 アイビー含め、この事務所で働いているのはあまり腕のよくない転送屋ばかりだ。指定した場所に正確に運んでくれるが魔法陣を描くのに時間がかかる者、すぐに仕上げるが希望の場所から少しずれた座標で到着する魔法陣を描く者。毎回失敗する者ばかりではないし料金も安いから、と利用する人は絶えない。ただ、アイビーは後者のタイプの中でも一番失敗する転送屋だった。今日に限ってまともな腕の転送屋が少なかったのがお互いの運の尽き。次々来る客に焦ったアイビーはいつもよりも魔法陣を書く手が震え、客の行き先はどんどんずれていった。希望通りにいかなかった客の不満はもちろんアイビーにぶつけられた。やる気だけはあるアイビーでもこれだけ悪いことが続くとさすがに落ち込んでしまう。
「お前もいい加減慣れろよなー、一日に何度も頭下げてんだから。なんか思うことあっても黙るってのを覚えた方がいいぞ」
「うーん、分かってはいるんだけどね……」
 失敗ばかりして自信を無くしても、プライドがアイビーには残っていた。同僚はそれも彼のいいところだと思っているが、アイビーにとっては損にしかならないというのも理解していた。


     *


 突如アイビーの勤めている事務所に召集がかかった。断ることができないほどの権力者の名前の記された手紙を読んで、事務所の者たちはおおいに震え上がった。他言無用、極秘の話だとだけ書かれておりなぜ呼ばれるかは分からない。一生お目にかかることのないと思っていた、噂にしか聞いたことのない召集状。逃げようもない、何も悪事は働いていないのだから、と事務所全員が指定の場所へと向かった。
 案内された部屋には見知った顔がちらほらといた。他の事務所の転送屋だ。アイビー達と同じくらいの腕前の。
「ねえ、何言われるんだろう……」
「……この部屋に集められた面子で分かるだろ。ついに俺たち底辺転送屋にも大仕事が任されんのさ」
 大仕事とは何なのか。アイビーが首を傾げていると、誰かが部屋に入ってきた。一目で分かるほどに上質な衣服を身に付けたその男は、アイビー達をじろりと値踏みするように見て鼻で笑った。誤魔化すように咳き込み、男は話始める。
「えー、皆さま、お集まりいただきまことにありがとうございます」
 つらつらと並べ立てられた薄っぺらい誉め言葉のあとに、ようやく本題に入った。
「皆さまには国のためにドラゴンを召喚していただきます」
 さらりとなんでもないことのように告げられた言葉。戦争に勝つためには皆さまのご協力が不可欠なのです、と力強く叫ばれた。他の世界とこの世界を繋げて、強大なドラゴンを呼び出してください、と。アイビーは聞き間違えたのかと思ったが、訂正もされずに話は進んでいき、別の部屋へと誘導されていく。
「召喚? ドラゴンの召喚ってもっと上手な人がやることなんじゃないの? そもそも僕らは……」
「ああ、俺たちは転送屋だ。それでも召喚できるような方法が用意されてんじゃねえの」
 とりあえず黙ってろ、と同僚に言われ口を閉じた。アイビーには理解できない。召喚士という職があるのは知っていたが、庶民がほいほい利用できるほど簡単なものではない。相当細かく指定する腕がなければ何を呼んでしまうか分からない恐ろしい術だ。アイビーにそんなことが出来るのだろうか。
 別室は縦にも横にも広い部屋だった。話に聞くドラゴンは大きいものばかりなのでそれに備えたものだろう。そもそもの話、ドラゴンが実在していることすら怪しい。見たことがないのだから。でも偉い人が言うのならきっとどこかにいる。呼び出せるはずだ。
 部屋に入ったアイビーに複雑な図面が手渡された。こんな難易度の高い魔法陣、一度も書いたことがない。辞退しようと偉い人の方を見た。ばちりとあった目には、やっぱりこいつには無理だよな、と諦めのようなものが浮かんでいた。
 アイビーは恐ろしかった。自分はいつも通り失敗するだろう。今回の術を失敗すれば、これまでとは桁違いの恐ろしいことがおきる。それでもアイビーは退けなくなってしまった。こんな目を受け入れて帰るのは、アイビーのプライドが許さなかった。なけなしの、大事にしていたプライドが。
 やります、と震える声で宣言したアイビーに偉い人ははあ、と気のない返事。端から期待などされていない。失敗してはいけないと思えば思うほどぶれぶれの線になるアイビーへ、偉い人は冷たい目を向ける。アイビーの中の大事な何かが削れていくような気がした。
「それでは位置についてください」
 なんとか描いた、大きな大きな魔法陣。何度も見直して線が歪んでいること以外に異常がないことを確認した。その前に立って、渡されていた紙の通りに詠唱を始める。この呪文に何の意味があるかはよく知らない。ただ言われた通りにやればいい。魔法陣を描くとき既にかなりの量の魔力を持っていかれていたが、詠唱のときの量とは比べ物にならない。自分の中身が全部持っていかれるような感覚に耐えつつも最後まで読み終えたアイビーの目の前で、魔法陣が光を放ち始めた。ひときわ強くなった光が消えたかと思うと、そこに何かがいた。
 それは犬でも猫でもない、これまでに出会ったことのない生物だった。空想上の生き物であるはずのドラゴンが、絵本で見たそのままの形で存在していた。
 偉い人は一目みてハズレだ、と呟いた。大きく描いた魔法陣の中にぽつんといるだけの小さな体。形の歪な鱗に、ぐしゃりとして飛べそうにもない翼。どこからどう見ても、この転送屋はハズレを引いた、と思った。少し前に立ち会った、国一番の召喚士が呼んだドラゴンは建物よりも大きく、素晴らしいものだったというのに。やはり底辺ではこんなものなのか、と。
 アイビーは初めて自分の職業に感謝した。人生でこれほどまでに美しいものを見たことがない。キラキラと光を反射する鱗に、ギョロりとアイビーを見つめる瞳に、その中にある細長い瞳孔に。目の前に存在する生き物の全てに、一瞬で心を奪われた。全てを捧げてもいいと思った。
 彼の人生は、その瞬間から狂い始めた。


     *


 アイビーの小さなドラゴンは戦場に出されなかった。出たとしても大した戦力にはならない。そう判断されたのだ。小さいとはいえドラゴンなので人間よりははるかに大きく力が強い。異世界に呼ばれたドラゴンは、アイビーと一緒に荷物運びの仕事をすることになった。そこまではよかったのだ。
「アイビー……何やってんの?」
「あ、君か。今あの子のご飯を呼ぼうと、いや取りに行こうと思って」
 アイビーの前にあの場所で描いた魔法陣とそっくりのものがある。それを見た瞬間同僚は叫んだ。
「お前、それ他所で使うなってきつく言われたやつだろ! 何してんだよ!」
「別に悪いことに使おうって訳じゃないんだから大丈夫だよ。あの子、違う世界から来たでしょう? この世界の食べ物じゃ嫌なんじゃないかなと思って。転送屋の仕事を辞めたおかげで魔力も残ってるし」
 仕上げというように線を描き足して、アイビーはにっこりと笑う。同僚の顔がひきつる。目の前にいるこいつは、本当にアイビーなのか? こんな思いきったことするやつだったのか? ぐるぐると回る頭を押さえつつ、なんとか話を続けた。
「そういう話じゃなくて……何の理由があったとしても厳重注意じゃ済まされねえぞ、こんなこと」
「大丈夫だってば。見てて」
 近くの店に買い物に行くかのように召喚の呪文を唱えるアイビーに、同僚は信じられないものを見る目を向けた。部屋が光で満ちたかと思うと、大量の食べ物らしき物体が魔法陣の中にあった。
「お前そんなことできるやつじゃなかっただろ。それに、それに」
「失敗したらどうするんだ、って?」
「……そう、そうだよ。一緒に働いてたとき、お前の失敗の頻度ヤバかっただろ。召喚でやらかしたらお前一人じゃ手に負えないくらいヤバいかもしれない」
「それがね」
 ふふ、とアイビーは心底嬉しそうに笑った。転送屋として働いていたときには一度も浮かべたことのない表情だ。親友に秘密を打ち明けるかのように、アイビーは言った。
「僕ね、召喚の才能があるみたいなんだ」
 言い終えてからまたふふ、と笑う。あまりに嬉しそうなものだから、同僚は言えなかった。偶然じゃないのかと、気のせいだろ、と。実際、ここまでへまをしてこなかったのは事実なのだ。同僚は責めるのをやめた。アイビーが、友人が幸せであることを邪魔できなかった。
「……お前が幸せなら、それでいいよ。もう。何かあったら俺に相談しろ」
「えへへ、ありがとう」
「でもきつくなったらこっちの食べ物も食わせていけよ」
「それは……正直言って、この世界の食べ物を食べさせたくないんだ」
「なんで?」
 異界から呼び寄せた食べ物を箱に詰めていたアイビーは、同僚を見上げた。
「異界の食べ物を食べてしまったら、もう帰れなくなっちゃいそうじゃない?」
「……お前、帰すつもりなのか」
「つもりっていうか、戦争が終わったら国から帰すように言われるんじゃないの? その時帰しづらくなったら嫌だし、まあ気分的な問題だよ」
 アイビー箱を抱えて歩みを進める。遠ざかっていくアイビーに同僚は問いかけた。
「ずっとそうやっていくつもりか?」
「もちろん。あの子のためなら何だってするよ」
 

     *


 戦況は、ドラゴンの力を使っても悪化していった。強いドラゴンほど前衛になり、敵の攻撃の的にされて死んでいく。ドラゴンには圧倒的な力があったが、敵はすぐに対策をとってそれ以上になってしまった。次第に無意味だと分かっていても力のないドラゴンを戦場に送るようになった。アイビーのドラゴンもその内の一匹となるのに時間はかからなかった。


 同僚は自分のドラゴンだけでなくアイビーのドラゴンにも召集がかけられたと聞いて、アイビーの家へと向かった。アイビーの家に人気が感じられず、試しにドアノブをひねる。あっけなく扉が開いた。嫌な予感がしつつも家への中に無断で入る。アイビーに怒られるだろうが、止まらない胸騒ぎには勝てなかった。全ての部屋を覗いてもアイビーはいない。そうして歩き回っているうちに、カツン、と段差に靴が引っかかった。何もないはずの床を見下ろした同僚の目に、うっすらと浮き上がった線が映る。上手いこと持ち上げると、地下への階段が続いていた。


「お前、何やってんの?」
「あ……」
 小さなろうそくの光が、うっすらと同僚の顔を照らした。静まりかえった小さな部屋でアイビーが広げていた紙には、見覚えのない魔法陣やら説明やらが書き連ねてあった。とっさに隠そうとしたアイビーを押し退けて同僚は紙を覗きこむ。
「……ああ、なるほどね」
「…………」
 描かれていた魔法陣は、この前描いた召喚用魔法陣と対になるものだった。それが意味することは。同僚がちらりと目を向ければ、今にも倒れそうな顔で硬直しているアイビーがいた。国の命令に背くなど、前回とは比べ物にならないほどの罪になるだろう。しかし、アイビーは見つかったことによる処罰を恐れているのではない。あの貧相なドラゴンのことで頭がいっぱいなのはすぐに見てとれた。少し告げ口するだけでこの正義感の強い友人は牢屋行きになる。もっとも、同僚にそんなことをするつもりはさらさらなかったが。
「お前一人でやってちゃ年寄りになっても終わらねえぞ。俺も手伝ってやるよ」
「ダメだよ! だって、こんなことバレたら」
「今さらビビってんのか? それに戦場に行けばどっちにしろ死ぬんだ、お前を手伝ったって問題ねえよ」
 俺はどの資料を読めばいいんだ、と近場にあった本をめくりだす。アイビーは戸惑い気味に視線をさ迷わせていたが、決心したように古びた本を差し出した。
 送り返すための魔法陣をアイビーたちは教えてもらえなかった。国にはそもそも帰すつもりがないのだから。死ぬまで使いつぶすなどアイビーには耐えられなかった。だから彼はこっそり研究し続けていた。そして彼の人生の中で一番死に物狂いになってやった研究は実を結び、なんとか送り返せるめどがついたのだ。


     *


 戦場を抜け出すのはそれほど難しくなかった。一番小さいとはいえアイビーはドラゴンを連れている。それすら気にかける余裕が無いほどに周囲は混乱していた。
「ほら、ここに入って」
 彼のドラゴンがなんとか通ることのできるような通路を抜けて、彼らは用意しておいた人気のない部屋にたどり着いた。地下にあるこの部屋には窓などない。埃っぽい空気が気にくわないドラゴンは不満げに鳴いた。
「ごめんね。すぐに、すぐに帰してあげるから」
 物置として使われていたらしい部屋から荷物を追い出してアイビーは言った。その声には疲れが滲んでいたが、彼の胸には使命感が残されていた。自分の家でできればよかったのに、と荷物を押し出しながらアイビーは思った。
 ある程度の空間ができると、アイビーはすぐに床にしゃがみこんだ。上着から取り出した筆に魔力を流し込む。ほのかに光る液体を確認して、アイビーは震える手を走らせた。
「大丈夫、送るのは久しぶりだけど、今日は成功させるから」
 ゆっくりと丁寧に、けれど時間に急かされながらアイビーは魔法陣を描いていく。早く描きあげなければ、いくら戦力にならないお前たちでも不在がバレるだろう、と同僚に言われていた。誰かに止められてしまえばこのドラゴンは帰れなくなる。緊張で流れた汗が垂れないように手でぬぐう、その時間すら惜しい。
 これまで聞いたことのない声で鳴くドラゴンに気をとられつつ、最後の線をひいた。ふう、と無意識に止めていた息を吐いたとき、ポタリと音がした。初め、アイビーはその音を自分の汗が滴った音だと思った。そして次の瞬間、自分のドラゴンがやけに距離をつめてきていることに気がついた。そうしている間にも、ポタリ、ポタリと音が続く。
 アイビーはドラゴンをゆっくりと見上げた。彼のドラゴンの口から涎が滴り落ちていた。ドラゴンは、どこかで見たような目をしていた。固まって動かない体とは裏腹に頭が高速回転する。そうだ、この目は、獣が獲物を見る目だ。どうして、と頭の中のアイビーが嘆く。当たり前だ、あんな量の食べ物じゃ足りなかったんだ、と別のアイビーが嗤った。ポタリ、ポタリ、ポタリ。ドラゴンの瞳に自分の顔が映るほど近くなり、ようやく彼は抵抗しようと後退り始めた。
「ダメだ、僕なんか食べちゃ、そんなことしたら」
 後ろに下がりながら回らない口で呪文を唱える。ドラゴンは一歩一歩、アイビーに迫っていく。なんとか唱えきったとき、アイビーの後ろには壁しかなかった。魔法陣の光が満ちていく部屋の中、てらてらと涎で光った牙を見て、アイビーは自分が呼んでしまったドラゴンにぽつりと言った。
「ごめんね」

     *

 同僚は自分のドラゴンの鱗を一枚だけ手にして戦場から逃げだしていた。戦争日和とも言える雲一つない空からは、場にそぐわないほど麗らかな日差しが降り注ぐ。鱗を太陽にかざせば、鱗がキラキラと輝いた。同僚はつい先日まで一緒にいた、運命を共にするはずだった自分のドラゴンに思いを馳せた。
「俺も一緒に死んでやればよかったかな」
 言葉にしながらも、同僚は自分はそういうタイプではないと自覚していた。
 本来なら召喚者とドラゴンは一蓮托生。ドラゴンの受けたダメージが召喚者にも少しずつ与えられていき、ドラゴンの死が召喚者の死にもなる。同僚がそれを避けられたのは、ドラゴンの死ぬ寸前に契約を取り消したからだ。死ぬ間際くらい、俺の命令に従わせるための契約なんて無いほうがいいだろう、と。その結果自分だけが助かることになった。ぼろぼろの体は共に死んでやれなかった罰だ、と同僚は考えていた。そうしてふと思い浮かべたのはアイビーのことだった。きっとアイビーなら死ぬときまで添い遂げそうとしたことだろう。実際はもっとひどい。傷一つ付けずに元の世界へ返そうとしていた。道具として扱えずに、言葉も通じないと相手に心を砕くアイビー。愚かで優しい彼のことをほんの少しだけ尊敬してしまった自分に、思わず笑みをこぼした。
「あいつ、上手く返せたかな」
 どうにかして生き残りアイビーと落ち合う。それを目標に、同僚は血まみれの体に鞭打って立ち上がった。

     *

 魔法陣が目も開けていられないほどまばゆい光を放ってもドラゴンは気にしなかった。貧相なドラゴンは、異世界生まれ異世界育ちの肉をむしゃむしゃと食べた。骨一本、血の一滴も残さず食べた。そうしてそのドラゴンは帰る資格を失った。光が消えても、ドラゴンは埃っぽい部屋に一匹残されていた。
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