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つぶやき

7月7日の意味

2022/07/07 16:08
夢つぶやき

7月7日、今日は間違いなくオレにとっての人生で最良の日になる。雲ひとつない晴天、ちょっと気温は暑いけど、流れる風がいつもより気持ちよく感じる。うん、やっぱり超いい日になる!



「ニヤニヤしすぎ」

この言葉を言われるのは今日何度目だろ?だって仕方ねーじゃん幸せなんだから。今日のオレは人生最大の幸せ絶頂期と言っても過言ではないのだから。その理由を再認識させるために、オレは自分の左手を目の前に広げ何度もクルクルとその手のひらを返す。そして薬指にキラキラと光る指輪を眺めるんだ。幸せが形になっている証拠である、結婚指輪を。

「お前ホントに幸せそうだな」

そんなオレに呆れたような声が降ってくる。隣に座っている同僚がデスクに肘を付きながら話しかけてきたのだ。声の通りに呆れ顔で。
きっと今のオレとは正反対の表情だろうな、幸せ絶頂期のオレとは。

「だって幸せなんだもん、って、やべ!オレもう帰んなきゃ!んじゃお先!」

パソコンの中のタイムカードをクリックして、パタン!と勢いよくノートパソコンを閉じ、バタバタとオフィスを出た。…ん?あれ?シャットダウンしたか?ま、いいか、今日ぐらいいいよね。ちゃんと上司には挨拶して来たし、怒られる事はないでしょ。…祝われる事はあっても。

「あっ、リョータくん。こっち」
「ごめんね!遅れちゃった」

待ち合わせ場所に着くと、すでに待ち人は来ていた。オレの大好きな彼女。あと数時間後にはオレの奥さんになる大切な人。

そう、オレは今日この子と入籍する。

「お仕事大丈夫だった?」
「大丈夫!大丈夫!もう3ヶ月前から半休取ってたから!」
「はっや!!」

クスクスと笑う可愛らしい笑顔に、身も心もハラいっぱいになる。目の前のハンバーグはまだ二口しか食べていないというのに。オレの心の幸せメーターがあったらきっとメモリは目一杯なんだろうな…いや、それはこの子に出会った時からメーターなんて振り切られていたに違いない。オレの人生全てをかけて守りたい、一生一緒にいたいと思ったんだ。

「ねぇ、リョータくん?」
「ん?なぁに?」
「前にどうしてこの日に入籍したいの?って聞いてきたでしょ?」
「うん、そうだね」

オレはプロポーズが無事成功したあと、入籍日の希望を聞いた。その時に返ってきた返事が『7月7日』だったんだ。その時は『覚えやすい』という理由を言われた気がするんだけど…

「私その時『覚えやすいから』って言ったじゃない?」

よかった。合ってた。
いやいやいや、オレがこの子に対して記憶違いなんてするわきゃねぇんだ。

「でも実は…もう一個理由があるんだよね」
「え?!」

得意げな顔をして、持っていたフォークを指に見立てて、天井へクルクル回しながら向けている。その都度キラキラと光る指輪に見とれながらも、その仕草が可愛すぎてオレは今にもチューしたくなってしまう。まぁ、それは家に帰ってからたんまりするとして……まずはもう一個の理由とやらを聞こう。

「どんな理由?」
「リョータくんのユニフォーム」
「へ?」
「昔に見せてもらった写真に写ってた。バスケ部時代のユニフォームの番号」
「ユニフォーム…」

オレは自分の記憶のフタをあけ、その時の光景を探ろうとしたが、そんな事をしなくても『バスケ部』『7』という文字で勝手に記憶が蘇ってきた。それだけその時のオレの記憶は人生の中でも忘れられねー時代になっているようだ。
それは高校2年生の夏、バスケ部だったオレがインターハイへ出場した出来事。生涯忘れることなんてできねーとずっとずっと思っている事だ。
確かにその時の写真は見せたことがあるけど、ただそれだけの理由で?

「その写真を見せてくれてる時のリョータくん、めちゃくちゃいい顔してた」
「え?!……はっず」
「だから、すっごい大事な思い出なんだなって思ったの」

間違いなかったなぁ…
オレがこの子を選んだ事は。そしてそんなオレを選んでくれた事が嬉しくて仕方ねぇや。

「〇〇ちゃん、大好きだよ」
「ふふ、私も大好き。これからもずっとずっとよろしくね?」
「あたりまえ」

目の前のハンバーグは相変わらずまだまだ残っているけどハラいっぱいなんだよな。
でも、これをたいらげてオレたちは先へ進まなきゃいけない。きっとこの先は幸せなことばかりではないだろう、それでもキミの存在が何よりもオレにとっての生きる糧なんだ。

だからよろしくね、奥さんーーーー。



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