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つぶやき

冷たさから熱さへと(諸星夢)

2022/06/06 13:26
夢つぶやき
※学生でも、社会人でもお好きな方で想像してください。




今年の夏は遠い。
いつもなら春も過ぎてもう半袖でもいい時期なのに、今日の気温はまるで夏を通り越して秋のようだ。雨だから…というのもあるとは思うが、その雨が雪に変わってしまうんじゃないか?!と思うほど……ではないね、さすがに。
それでも私の体感温度はそれぐらい寒さを感じ、自分の席で縮こまり何度も自身の手をさする。時折、耳たぶを触るとその暖かさにいかに自分の手が冷たいのかを感じ取れた。

「お前何してんの?」

そう声をかけてきたのは、隣の席の諸星。机に肘をつき頬杖をして顔は私の方へ向けて話しかけてきた。その顔は目も鼻も口も全てがはてなマークで記されているぐらい不思議そうな顔をしている。ホント顔に出やすい奴だよね、諸星って。でも何してるってどういう事?

「何って…なに?」

疑問に疑問で返す私は理解力がないのだろうか?いや、そんなことは無い。だって私はいつもと同じことをしているのだから、今日だけが特別なわけではない、毎日の生活と同じように今日を過ごしているつもりなのだから。まぁ、いつもより寒さは感じるけど……あ、もしかして?

「さっきから自分の手シャカシャカしたり、身体縮ませたり、何してんだよって」

やっぱり。
意識せずとも行動にうつしていた私の寒さ防衛に諸星は気付いたんだ。え、なんか超恥ずかしいんだけど、すんごい変な行動してる奴だと思われたよね。これは早急に言い訳…じゃない、正当な理由を言わなければ。密かに好意を寄せている諸星に変な奴だと思われたくないもの!

「やっ、これは、自らの手で自分の身体をあっためようとして…」

……この説明大丈夫?
変態度増してない?

「あっため…?」

ほら、完全に諸星の私を見る目は不審者を見る目になってるよね。別に難しい事じゃないのに、言い方を考えれば考えるほど私の頭の中はグルグルと糸が絡まり、一向に解ける気配は無い。そこで私はその糸をチョキンと切る手段に出たのだ。

「ほら!冷たいでしょ?!」

強硬手段。
私はギュッと両手で諸星の手を包み込んだのだ。冷たかったはずの手はどんどんと暖かく…いや、熱くなっていく。そしてその熱さはスグに顔にまで伝染するのがわかった。

「ごっ、ごめん!違うの、今日寒いからって言うのを伝えようとして」

いまさらになって真っ向な理由を言ったってもう遅い。恐る恐る諸星の顔を見て私は目を丸くしてしまった。彼の顔はイラストで描くような夏の太陽のように真っ赤になっていたのだ。私の熱さがどうやら彼にも伝染ってしまったらしい。

「あっ、そ、そっか、今日寒いもんな!だよなー!!」

諸星はそう言いながらガタッと席を立った。
つい先程まで感じていた寒さはどこへやら、今では身体全身が熱くなり、変な汗まで出てきてしまう始末だ。諸星の顔の赤さを思い出し、私は両手を熱くなっている自分の頬にあてた。彼はどんな気持ちで顔を赤くしたのか、気持ち悪い女だと思われたらどうしよう、私の気持ちがバレてしまったら……いろんな思いでなんだか喉が乾いてきてしまう。何か飲み物を買いに行くため、席を立とうとしたその瞬間、コン、と何かが私の机の上に置かれた。そして隣の席の椅子を引く音と共に声が聞こえてくる。

「ちょっとは暖まるんじゃね?」

どこか照れくさそうに言う諸星の声はいつもより小さかった。机の上に置かれたホットカフェオレの缶を見ながら私は思うのだった。

ごめんね諸星、今はもう冷たいのが飲みたいんだ。でもこんな風に身体が熱くなったのは他の誰でもないあんたのせいなんだよーーーー。






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