つぶやき
ウーロン茶を飲み干したら
2022/05/09 20:19夢つぶやき
入り込まれてしまった。警戒してたはずなのに、簡単に見えない壁を突破されてしまった。……いや、むしろ気付かないうちに自分から招き入れたのかもしれない。本能のままに。
「ねぇ見て、仙道くん来た!」
隣に座っている友達が私の肩を揺らしながら、小声で話しかけてくる。小声の割には随分と興奮している、というよりも興奮しているからソレを抑えるために小声にしているようだ。その証拠に私の肩を揺らす力はかなりなもので、ぐわんぐわんと私は身体ごと揺らされている。友達が「ホラ」と指をさした方向に目をやると、背の高いツンツン頭の男子がこの部屋へ入ってきたところだった。
彼は仙道彰、イケメンで高身長、そしてバスケ部のスーパースターという最強の武器を持っているコイツは必然的に学校中の女子から狙われている。それはもう、学年問わず。
そして『この部屋』というのは今、私たちがいる場所、とあるカラオケの一室の事。今日は学校祭の打ち上げでクラスのみんなで来ているのだ。
「仙道くん来るならもっと気合い入れてくればよかった!」
ほら。隣に座っている友達も、喜んでいるのに肩を落とすという正反対の感情で、仙道くんに惑わされている。陵南高校の女子なら誰しもヤツの視界に入りたいと思っているんじゃないかな?私?うーん…どうだろう、確かにカッコイイとは思うけど、あんまりいい噂きかないからなぁ。いわゆるタラシ?的な。女の子関係の噂話が尽きないんだよね、仙道くんって。
「歌わねーの?」
頭の上からふってきた声にハッと我に返る。キョロキョロと周りを見渡すと、つい今の今まで隣にいたハズの友達がいない。え?なんで?
その代わりにボスっと隣に座ってきたのはちょうど私の頭の中で色々と偵察をしていた仙道くんだ。こんな偶然ある?!そしてものすごい自然に隣に座ってきたんだけど……
あ、そうか。友達は「メイク直してくる!」ってトイレに行ったんだっけ…数分前の出来事をようやく思い出していると仙道くんが声をかけてきた。
「オレあんまり音楽って詳しくねーんだけど、なんかオススメとかない?」
「え、あ~…普段全然聴かないの?」
「たまーに越野がCD貸してくれたやつとか聴くけど、聴いてるうちに寝てる」
ははは、と困ったように笑う仙道くん。
そのお顔は反則じゃありません?そしてこの距離も。
カラオケの爆音が響くこの部屋で会話をするには、自然と近くなる人と人との距離。耳元で直接語りかけなければならない。そんなん私の心臓の音だって爆音になるに決まってるじゃん。
この人は人との距離を縮めるのがうまいんだ。物理的な距離も…心の距離も。
「…なぁ、そのウーロン茶を飲み干したら、オレとここから抜けない?」
……近づきすぎだよね。
やっぱりこういう人なんだ、この人は。噂を鵜呑みにしてはいけないと思っていたけど、あながちその噂は真実にとても近いものなのかもしれない。ってゆーか、真実なんじゃないの?
私の仙道くんへの信頼度は一気に下降して、げんなりしてしまった。そしてそれと同時になんだか無性に腹が立ってきて、私はげんなりしながら彼に言う。
「仙道くんって噂どーりの人なんだね。ガッカリです」
「ははは、なんだよ噂って」
「噂は噂です」
「あ~…噂、ね」
仙道くんは笑って天井を見上げた。なんとなく気まずいまま、無言で時間が過ぎる。…ちょっと言い過ぎたかも。後悔はしたもののガッカリしたのは本当だし、わざわざ前言撤回して謝る必要だって無いよね?それでも本当に噂がただの噂だったら?そもそもなんで私はガッカリしたの?何かを期待したの?色々な考えが頭をめぐり、ますます言葉が出てこなくなってしまう。そ、そうだ、友達は?!さっきまで隣にいた友達を探しに行こう!いい口実を見つけた私は「友達探してくるね!」と早速立ち上がり、この場を去ろうとした。が、ガシッと大きな手に手首をつかまれ、それを阻止された。仙道くんによって再びソファに座らされると、彼は私をじっと見ている。その顔はどこか楽しそうに見えた。
「ガッカリ、したの?」
「?!」
「どんな噂を信じてんのか知らねぇけど、一つだけ聞いて」
突き刺さるようなまっすぐな視線は、私の身体を金縛りにさせる。そして息苦しさを覚えてしまうほどだ。
「オレが女の子を自分から誘ったのは、さっきがはじめて」
「え…」
「信じてくんねーかな」
さっきの楽しそうな顔は消え失せ、どこか切なそうなその表情は私の心臓の鼓動を一気に強く早く波打たせる。な、なんて言えばいいの…。
「だから、もう1回聞いて」
不思議。
今この場の騒音が全て消えて、仙道くんの声だけが耳元に届く。
「そのウーロン茶を飲み干したら、オレとここから抜けない?」
さぁ、どうする?
ウーロン茶は残り数センチしか残っていないーーー。
「ねぇ見て、仙道くん来た!」
隣に座っている友達が私の肩を揺らしながら、小声で話しかけてくる。小声の割には随分と興奮している、というよりも興奮しているからソレを抑えるために小声にしているようだ。その証拠に私の肩を揺らす力はかなりなもので、ぐわんぐわんと私は身体ごと揺らされている。友達が「ホラ」と指をさした方向に目をやると、背の高いツンツン頭の男子がこの部屋へ入ってきたところだった。
彼は仙道彰、イケメンで高身長、そしてバスケ部のスーパースターという最強の武器を持っているコイツは必然的に学校中の女子から狙われている。それはもう、学年問わず。
そして『この部屋』というのは今、私たちがいる場所、とあるカラオケの一室の事。今日は学校祭の打ち上げでクラスのみんなで来ているのだ。
「仙道くん来るならもっと気合い入れてくればよかった!」
ほら。隣に座っている友達も、喜んでいるのに肩を落とすという正反対の感情で、仙道くんに惑わされている。陵南高校の女子なら誰しもヤツの視界に入りたいと思っているんじゃないかな?私?うーん…どうだろう、確かにカッコイイとは思うけど、あんまりいい噂きかないからなぁ。いわゆるタラシ?的な。女の子関係の噂話が尽きないんだよね、仙道くんって。
「歌わねーの?」
頭の上からふってきた声にハッと我に返る。キョロキョロと周りを見渡すと、つい今の今まで隣にいたハズの友達がいない。え?なんで?
その代わりにボスっと隣に座ってきたのはちょうど私の頭の中で色々と偵察をしていた仙道くんだ。こんな偶然ある?!そしてものすごい自然に隣に座ってきたんだけど……
あ、そうか。友達は「メイク直してくる!」ってトイレに行ったんだっけ…数分前の出来事をようやく思い出していると仙道くんが声をかけてきた。
「オレあんまり音楽って詳しくねーんだけど、なんかオススメとかない?」
「え、あ~…普段全然聴かないの?」
「たまーに越野がCD貸してくれたやつとか聴くけど、聴いてるうちに寝てる」
ははは、と困ったように笑う仙道くん。
そのお顔は反則じゃありません?そしてこの距離も。
カラオケの爆音が響くこの部屋で会話をするには、自然と近くなる人と人との距離。耳元で直接語りかけなければならない。そんなん私の心臓の音だって爆音になるに決まってるじゃん。
この人は人との距離を縮めるのがうまいんだ。物理的な距離も…心の距離も。
「…なぁ、そのウーロン茶を飲み干したら、オレとここから抜けない?」
……近づきすぎだよね。
やっぱりこういう人なんだ、この人は。噂を鵜呑みにしてはいけないと思っていたけど、あながちその噂は真実にとても近いものなのかもしれない。ってゆーか、真実なんじゃないの?
私の仙道くんへの信頼度は一気に下降して、げんなりしてしまった。そしてそれと同時になんだか無性に腹が立ってきて、私はげんなりしながら彼に言う。
「仙道くんって噂どーりの人なんだね。ガッカリです」
「ははは、なんだよ噂って」
「噂は噂です」
「あ~…噂、ね」
仙道くんは笑って天井を見上げた。なんとなく気まずいまま、無言で時間が過ぎる。…ちょっと言い過ぎたかも。後悔はしたもののガッカリしたのは本当だし、わざわざ前言撤回して謝る必要だって無いよね?それでも本当に噂がただの噂だったら?そもそもなんで私はガッカリしたの?何かを期待したの?色々な考えが頭をめぐり、ますます言葉が出てこなくなってしまう。そ、そうだ、友達は?!さっきまで隣にいた友達を探しに行こう!いい口実を見つけた私は「友達探してくるね!」と早速立ち上がり、この場を去ろうとした。が、ガシッと大きな手に手首をつかまれ、それを阻止された。仙道くんによって再びソファに座らされると、彼は私をじっと見ている。その顔はどこか楽しそうに見えた。
「ガッカリ、したの?」
「?!」
「どんな噂を信じてんのか知らねぇけど、一つだけ聞いて」
突き刺さるようなまっすぐな視線は、私の身体を金縛りにさせる。そして息苦しさを覚えてしまうほどだ。
「オレが女の子を自分から誘ったのは、さっきがはじめて」
「え…」
「信じてくんねーかな」
さっきの楽しそうな顔は消え失せ、どこか切なそうなその表情は私の心臓の鼓動を一気に強く早く波打たせる。な、なんて言えばいいの…。
「だから、もう1回聞いて」
不思議。
今この場の騒音が全て消えて、仙道くんの声だけが耳元に届く。
「そのウーロン茶を飲み干したら、オレとここから抜けない?」
さぁ、どうする?
ウーロン茶は残り数センチしか残っていないーーー。