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つぶやき

重い想い(南夢)

2022/03/16 08:36
夢つぶやき

本命と義理なんて言わなきゃわからへんよね。なんて思って渡したバレンタインだった。もう何年も前から片想いしているくせに、重い重い想いのくせに……。

瞼が重くなりウトウトしてしまう5時間目、私は1人屋上にいた。3月も半ばになりココ最近急に暖かくなってきて、ただでさえお昼ご飯の後なんて起きている方が難しい。せやから、こうして今眠気覚ましをするために屋上へとやってきてん。わざわざ授業をサボってまで。え?なんかおかしいこと言うてる?そんなん気にしたらアカンで。やけどそれは逆効果だったようで、サラサラと吹く春風はあたたかく、完全に眠気を誘うソレやった。手すりに腕を乗せ、その腕に顎を乗せ夢の中へと1歩、また1歩と近づき始めたその時、ガチャリと屋上の扉が開く音がして、音の方へと顔を向ける。

「ようやっと見つけた。こんの不良娘」

扉を開けて入ってきたのは南やった。私の片想いの相手、私が小学生の頃からずっと好きな相手。『好き』の一言をずっと言えていひん相手。先月のバレンタインにあげた時にチョコの本当の意味を言えへんかった相手。

「南、どうしたん?あ、サボり?」
「お前が屋上行くの見えて追いかけてきてん」
「え?私?!」

スっと目の前に小さな紙袋が差し出される。私はその紙袋と南とを行き来するように見た。だって、無言で突き出されて、受け取っていいものかわからへんもん。すると南はそんな私の気持ちを察したのか「お前に、や」と言い、グッとさらにその紙袋を私に近づけた。

「今日ホワイトデーやろ。お返しっちゅーやつや」
「あぁ、岸本と一緒にのやつな?」

中学生の頃から私は南と岸本というもう1人の男子に、バレンタインチョコを渡していた。小学生の頃からの付き合いでいつも一緒にバカやっている仲間内やからね。そしてホワイトデーにはいつも南&岸本のコンビからお返しをもらっていたのだ。

「今年はちゃう。オレだけ」
「え?なんでなん?」
「本命っていうやつやからな」
「…え?」
「お前はオレに渡したもんはどういう意味やったか知らんけど、オレのお前に対するお返しは本命や」

私に紙袋を渡して空いた手を、屋上の手すりの上に乗せる南。フワッと春の風に彼の髪がなびく。

「私、南のこと好きでいてええの?」
「ええんちゃう?」
「私、重いよ?南への気持ち」

私は、手すりの上に乗っている南の腕の袖をキュッと軽くつかんて言う。震えそうな声を必死で堪えながら。その声を聞いた南はクルッとこちらを向き、両手で私の顔を包み込んだかと思うと、噛み付くようにキスをしてきた。何度も角度を変え、息が苦しくなるほどに。そのキスの嵐がようやく去り、酸素を求めるため思い切り空気を吸い込むと、南はじっと強く私を見つめて言った。

「上等やん」

その時、再び春風が吹き2人の髪が揺れた。




あかん。これはあかんわ。こんな緊張するん高校受験以来かもしれへん。いや、下手したらそれ以上や。今の私、どんな顔しとんのやろ?めっちゃブサイクになっとったらどないしよ……好きな人がすぐそばに、肩が触れてしまいそうなほど近くにおるのに。

「なにブサイクな顔してんねん」

やだ♡以心伝心♡
ちゃう、ちゃう。そうやあれへん。でも、彼女に向かって平気で言うコイツになんだか少しだけホッとしてしまう。なぜなら、今さらコイツと彼氏彼女をやれと言われても何をどないしたらええか、悩んどったから。結局両想いからの晴れて男女交際スタート!なんて言うてもいつものコイツ、小学生の頃から知っとる南烈のまんまや。それが私にとっては嬉しくもあり、何も変わらない態度にほんの少しだけガッカリもした。さっきのキスが嘘のようだ。

「なにガッカリしてんねん」

やだ♡また以心伝心♡
いやいやいや。待って。ホンマにコイツは私の心の中に盗聴器でも仕込んどるん?!思わず私は自分の口を両手で塞ぐ。これ以上心を読まれないようにする為にも。……アホなことをやっとるんは自分が1番わかっとる。でも、こうでもしないとホンマにダダ漏れになってしまいそうやから、私が南を大好きって気持ちが。小学生の頃からこじらせてきたこの想いが。

「なにしてんねん」

ぎゅむっと私の両頬は南の片手で潰される。嫌でもタコのように唇を尖らせてしまう。その唇に一瞬だけ南の唇が触れたかと思うと、コイツは目を細めた。それは今まで見た南の表情で1番優しく、別の男の人のような顔やった。

「やっぱりお前とおったらおもろいわ」

なんかの曲の歌詞であったような言葉を言うて、いつもの意地が悪い顔で笑う南。さっきの表情もええけど、やっぱりこの生意気そうな顔が好きやわ…いや、つーよりもさっきのあの微笑みをされたら私の心臓が持たへんのよ。いまだにバカみたいにうるさい自分の心臓の音が南に聞こえへんか心配になる。それでも気分はやっぱり幸せで、自然に笑みがこぼれてしまうよな。南が大好きという気持ちも、もう我慢することはないんよね。

「南、大好きやで」

そう言った0.3秒後、私は南の腕の中に包み込まれている。そして南はポツリと言った。

「やめろ。オレを殺す気か」

殺す気で愛するねーーーー。





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