つぶやき
第二ボタン
2022/03/01 19:44夢つぶやき
3年間なんて過ぎてしまえばあっという間で、人生の中で15歳から18歳は心も体も1番成長する時期なんて言われているらしいが…オレ、越野宏明は果たして本当に成長したのだろうか?結局バスケばっかりしてて、高校3年間の間で彼女も何人かできはしたけど、3ヶ月も経たないうちにフラれてしまった。いや、何人かっつっても2人だけなんだけど。別に少しぐらい盛った言い方したっていいだろ、どーせ今日で高校生活は終わるんだし。
卒業式が終わり、バスケ部の後輩から花や贈り物をもらって、それなりにいい高校生活だったと思い出に浸りながら満足していたが、目の前の光景でその気持ちが吹っ飛んで行ってしまった。
「仙道くーん!ボタンちょうだーい!」
「仙道先輩、私にボタンくれませんか?」
「仙道!お前のボタン持ってたら将来得しそうだからくれ!」
人の群れの中からツンツン頭が飛び出ている。高校生活の最初から最後までスーパーヒーローだったアイツ、仙道彰だ。仙道はオレと同じバスケ部で、何の因果かクラスまで3年間ずっと同じだった。コイツがいつも隣にいたおかげで、オレの様々な活躍が脚光を浴びなかった事も多々あった………はず。それでも仙道のおかげでバスケ部は例年よりも強くて素晴らしい成績を残せたし、友達としても結局憎めないヤツだった。だからこそ今こうしてコイツはたくさんの人に囲まれているんだろう。
「いいなぁ」
オレがただ突っ立って仙道の方を見ていると、後ろから聞き慣れた声が聞こえてきた。軽く振り返るとその声の主はオレの隣へと並ぶ。コイツは仙道と同じく3年間クラスが同じだった女子で、気がついたらオレが女子の中で1番喋るヤツになっていた。
「いいなぁ…ってお前まさか」
「私も欲しいな、ボタン」
なん……だと?!コイツまさか仙道の事が好きだったのか?!知らなかったぜ…羨ましそうに人に囲まれている仙道の方をじっと見ているコイツをオレはおそらく驚愕の表情をしながら見ていたと思う。チラッとこちらへ視線をうつすと「なによその顔」と怪訝そうに言われた。
「い、いや…そんなに欲しいなら頼んでみれば?意外ともらえるかもしんねーぜ?」
「……そうだね。勇気出してみようかな」
自分の胸の前に拳をつくり、ぎゅっと力をいれるコイツになんだかオレの心はザワつく。少しだけ(言わなきゃ良かったかも)なんて思いが浮かんできたのだ。でも、もう言ってしまった事は取り返したがつかないし、そもそもどうしてこんなにモヤモヤするのかもよく分かんねぇ。なんて頭の中でゴチャゴチャ考えていると、目の前に小さな手のひらが差し出された。気が付くと、隣にいたはずのコイツがオレの目の前にいる。
「第二ボタン、ちょーだい」
その声はいつも聞いている声よりも小さく、緊張しているようだったが、ハッキリとした意思で言っているのがわかるような声だった。
「お、オレ?!?!」
「うん、越野の第二ボタンが欲しい」
「オレのでいいのか?!」
「何回言わせるの?越野の第二ボタンがいいの」
「な、なんで…」
疑問しかねぇ。だって第二ボタンって好きなやつからもらうもんじゃねぇの?ーーーえ?て事は…
「ずっと好きだったよ、越野のこと」
フッと笑った優しい顔にオレの心臓は飛び跳ねた。ずっと…ずっと?!いつから?どうしてオレ?いくつものクエスチョンがバシバシとぶつかってくるが、不思議と嫌な気持ちには1ミリ足りともならなかった。むしろ、どこか嬉しく…そして少しだけ寂しい気もした。
ブチッと雑に学ランのボタンを外し、そっと小さな手のひらの上に乗せる。
「ありがとう。今日言おうと決めてたんだ」
「なんでだよ、卒業だからか?」
オレが渡したボタンをぎゅっと大事そうに握りしめると、ずいっとオレの顔に近づき、いつもの生意気そうな顔でコイツは言った。
「良くも悪くもこれから先、この時期になると思い出すでしょ?私のこと」
オレはまだ知らない。これからの人生、この瞬間をいい思い出として2人一緒に思い出す事になるとはーーーー。
卒業式が終わり、バスケ部の後輩から花や贈り物をもらって、それなりにいい高校生活だったと思い出に浸りながら満足していたが、目の前の光景でその気持ちが吹っ飛んで行ってしまった。
「仙道くーん!ボタンちょうだーい!」
「仙道先輩、私にボタンくれませんか?」
「仙道!お前のボタン持ってたら将来得しそうだからくれ!」
人の群れの中からツンツン頭が飛び出ている。高校生活の最初から最後までスーパーヒーローだったアイツ、仙道彰だ。仙道はオレと同じバスケ部で、何の因果かクラスまで3年間ずっと同じだった。コイツがいつも隣にいたおかげで、オレの様々な活躍が脚光を浴びなかった事も多々あった………はず。それでも仙道のおかげでバスケ部は例年よりも強くて素晴らしい成績を残せたし、友達としても結局憎めないヤツだった。だからこそ今こうしてコイツはたくさんの人に囲まれているんだろう。
「いいなぁ」
オレがただ突っ立って仙道の方を見ていると、後ろから聞き慣れた声が聞こえてきた。軽く振り返るとその声の主はオレの隣へと並ぶ。コイツは仙道と同じく3年間クラスが同じだった女子で、気がついたらオレが女子の中で1番喋るヤツになっていた。
「いいなぁ…ってお前まさか」
「私も欲しいな、ボタン」
なん……だと?!コイツまさか仙道の事が好きだったのか?!知らなかったぜ…羨ましそうに人に囲まれている仙道の方をじっと見ているコイツをオレはおそらく驚愕の表情をしながら見ていたと思う。チラッとこちらへ視線をうつすと「なによその顔」と怪訝そうに言われた。
「い、いや…そんなに欲しいなら頼んでみれば?意外ともらえるかもしんねーぜ?」
「……そうだね。勇気出してみようかな」
自分の胸の前に拳をつくり、ぎゅっと力をいれるコイツになんだかオレの心はザワつく。少しだけ(言わなきゃ良かったかも)なんて思いが浮かんできたのだ。でも、もう言ってしまった事は取り返したがつかないし、そもそもどうしてこんなにモヤモヤするのかもよく分かんねぇ。なんて頭の中でゴチャゴチャ考えていると、目の前に小さな手のひらが差し出された。気が付くと、隣にいたはずのコイツがオレの目の前にいる。
「第二ボタン、ちょーだい」
その声はいつも聞いている声よりも小さく、緊張しているようだったが、ハッキリとした意思で言っているのがわかるような声だった。
「お、オレ?!?!」
「うん、越野の第二ボタンが欲しい」
「オレのでいいのか?!」
「何回言わせるの?越野の第二ボタンがいいの」
「な、なんで…」
疑問しかねぇ。だって第二ボタンって好きなやつからもらうもんじゃねぇの?ーーーえ?て事は…
「ずっと好きだったよ、越野のこと」
フッと笑った優しい顔にオレの心臓は飛び跳ねた。ずっと…ずっと?!いつから?どうしてオレ?いくつものクエスチョンがバシバシとぶつかってくるが、不思議と嫌な気持ちには1ミリ足りともならなかった。むしろ、どこか嬉しく…そして少しだけ寂しい気もした。
ブチッと雑に学ランのボタンを外し、そっと小さな手のひらの上に乗せる。
「ありがとう。今日言おうと決めてたんだ」
「なんでだよ、卒業だからか?」
オレが渡したボタンをぎゅっと大事そうに握りしめると、ずいっとオレの顔に近づき、いつもの生意気そうな顔でコイツは言った。
「良くも悪くもこれから先、この時期になると思い出すでしょ?私のこと」
オレはまだ知らない。これからの人生、この瞬間をいい思い出として2人一緒に思い出す事になるとはーーーー。