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つぶやき

予約(三井夢)

2022/01/08 22:54
夢つぶやき
この学年で1.2位を争うぐらいに【美人】で有名な女子の前の席になった。けど、そんなことオレには関係ねぇ事だと思っていたんだ、今この時間までは。

「三井ってシャンプー何使ってんの?」

朝独特のザワつく教室の中、後ろの席から聞こえてきた声と、フワリと漂う甘ったるい匂いにオレの心臓はドクンとひとつ大きな音をたてた。声の主とは1年生の時から同じクラスだった事はわかっている。そして3年生になった今の今まで1度も話をした事が無い事もわかっている。さらにもう1つ、この学年でコイツの事を知らない奴はおそらくいないだろうという事も知っている。その理由はただひとつーーーコイツが【美人】だからだ。

「ねぇ、聞いてんの?」
「お、おぅ…なんだよ」
「だぁかぁらぁ、シャンプー、何使ってんの?」

オレが椅子の背もたれに肘を乗せながら半分だけ身体を横に向けると、サラッとコイツはオレの長い髪の毛を流れるように撫でた。驚いたオレは思わず椅子から立ち上がる、それは引いた椅子が、机の足にガタッとぶつかるぐらいのもの凄い勢いで。

「なっ?!」
「超キレーじゃん、三井のロン毛。だからずっと聞きたかったんだよね」
「だ、だからって触んなよ!」
「……小学生かよ。てか、座れば?」

そう言われ、今自分が周りのクラスメイト達から注目されている事に気付き、逃げ出したい気持ちを抑えながら黙って椅子に座った。身体は黒板へ向けて真っ直ぐ前にでは無く、半分だけ横に向けながら。

「んで、何使ってんの?」
「あ?!」
「何回言わせんのよ。シャンプーだって」
「んなもん知らねーよ、家にあるやつだ」
「じゃあどんなパッケージ?」
「そんなん説明できっかよ」

なんでそんなに知りてぇんだよ。さすが美人は美容っつーやつに興味津々なんだな。

「じゃあさ、帰り付き合ってよ。薬局」
「……は?」
「さすがに見ればわかるでしょ?それとも薬局じゃ売ってないようなやつ?美容室でしか買わないとか?」
「そんなたいそうなモンじゃねーよ」
「じゃあ決まりね。放課後デート、予約完了」

目を細め妖艶な笑みを浮かべたコイツの顔に、さっきとは比べ物にならない程オレの心臓が大きな音をあげる。と同時に、始業の鐘の音が学校に鳴り響いたーーー。






追記


ゆゆメモ✍️
需要があればもう少し長く書いて本棚に入れようかな、と思っております。

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