つぶやき

帰り道(洋平夢)

2021/08/13 16:31
夢つぶやき

世の中はお盆休み真っ只中、私は絶賛お仕事真っ只中。目の前のパソコンにかじりつくようにパチパチとキーボードを叩く、いつもよりも強めに。
え?別にイラついてなんてないよ?昼休みに見たSNSに、いろんな友達が楽しそうなお盆休みの風景を投稿しているのを見たからって、別にイラついてなんてないよ?…別に……別に……………

「いいなぁお盆休み!」

ッターン!とエンターキーを思いっきり押したあと、思っていたことを口にした。隣からは「あはは、ついに言っちゃった」と同僚の笑い声が聞こえてくる。私が働いているこの職場は祝日はお休みだが、お盆は祝日では無いため公休では無いのだ。だが、今時期は夏季休暇をとることもできるので、休もうと思えば休めた。

「でもさ、お盆って仕事捗るんだよね」
「それ」

そうなのだ。私がお盆に休みを取らない理由はこれ。電話も滅多にならないし、休みをとる職員が多いため、他の仕事も入ってこない。いわゆる自分の仕事だけを無心に進めることが出来るのだ。その為私はあえていつもお盆に夏季休暇をとる事はしていなかった。だから自分が決めたことに文句を言っている事はわかっているけど…けど……

「休みとれば良かったかなぁ…」

はぁ、とため息を付いたあと先週に旦那である洋平と話した会話を思い出した。

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「お盆?」
「うん。洋平休みでしょ?私も休みとった方がいい?」
「任せるぜ。別に無理に合わせる必要はねぇよ、仕事捗るんだろ?お盆は」
「そうなんだよね、でもどっか行きたくない?」
「そりゃ行きてぇけど、別にわざわざ混んでる時期じゃなくてもいいんじゃね?オレは割と休み合わせられるしな」
「ありがとう、洋平」

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うん。我が旦那ながらスパダリだと思うわ、ホントに素敵な旦那様です。その為にもお盆はバリバリ働いて、夏季休暇をとって洋平とどっか行くんだ!そう思い私は今までに発揮したことが無いような集中力で、仕事を終えたのだった。

今日は帰って「ただいま」と言ってもいつもとは違う。ちゃんと「おかえり」と優しい声が返ってくる、そう思うと職場を出る私の足取りも軽くなり、外に出た時の空気もなんだかいつもよりも気持ちよく感じたーーー、とその時私の目に飛び込んできたのはガードレールに軽く腰をかけて、タバコを吸っている洋平の姿だった。

「え?!なんで?!」

慌てて駆け寄る私に気付いた洋平は携帯灰皿にタバコを消して、「お疲れ」と言って片手をあげる。
もしかして……

「お迎えにあがりましたぜ、おじょーさま」

洋平はニッと笑ってガードレールから離れた。まさか迎えに来てくれるだなんて思ってもなかったけど…

「なんで車じゃないの?」

洋平の横顔を見ながら問いかける。私はいつも徒歩通勤なのだが、地味にそこそこ距離はある。だから、迎えに来るなら車で、と思ったのだ。私の隣を並んで歩く洋平は真っ直ぐに前を見たまま答えた。

「たまにはいーだろ?」

そう言った洋平の横顔はとても優しい顔をしていて、もう何年も彼の隣を歩いているはずなのに、なぜか付き合いたてのようにドキッとしてしまった。

「そうだね」

私はポケットに手を入れている洋平の腕に絡みついた。洋平はそんな私に「めずらし」と呟く。

そう、私は近所でこうやって腕を組んだり手を繋いで歩くことは好きじゃない。その理由はただ単に知り合いに見られたら恥ずかしいから。もちろん洋平とはいつだってくっついていたい気持ちはある、けど…それを知り合いに見られるのが嫌なのだ。だから、どっか遠くへ出かけたりした時に手を繋いで歩くことは大好きなんだよね。
でも、なんだか今は無性に洋平に触れたくなった、その気持ちが抑えきれなくなってしまった、ただそれだけ。

「オレはこっちの方がいいんだけど」

洋平はそう言うとポケットから手を出し、私の手をギュッと握り「どーですか?」と顔を覗き込みながら笑う。ホントに洋平は私の気持ちを全てお見通しなんだよなぁ…。何年たっても絶対にかなわないもん、洋平には。

最高の帰り道をありがとうーーーー。









追記
この後家に帰ると晩御飯もできています。
もちろんあなたの大好物がね。

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