つぶやき
応援(洋平夢)
2021/08/02 21:47夢つぶやき
勝つチームがあれば、負けるチームもある。
それがスポーツというものだ。そしてその人たちを必死に応援する人もいる。まるで自分の事のように、ううん、それ以上に力を込めて応援する人たちだっているんだよ。
「はぁーー食った食った!」
「高宮お前マジで5人前はいったんじゃねーか?!」
「いや、7人前はいったな」
蒸し暑い夏の夜、私は広島の地へとやって来ていた。そして広島名物のお好み焼き、広島焼きを食べ終わりホテルへの帰り道を歩いている。広島に来ている理由は夏休みの旅行では無い、中学の時からの友人である花道の応援だ。何の応援かというと……
「しかしあの花道がインターハイの選手になっちまうとはな」
「すっかりバスケットマンだぜ」
「すごいよねー!ここまで来ちゃう、うちらもすごいと思うけど」
「そうだよな!感謝して欲しいもんだぜ」
そう、花道のバスケの試合の応援のため、はるばる神奈川から広島へとやって来たのだ。さっきからワラワラと話しながら私の目の前を歩く、桜木軍団と私の女友達と共に。
そして忘れちゃいけない、大好きな彼氏も一緒です。
「しかしこっちもあっちーな」
彼氏の洋平は私の隣を並んで歩く。いつも私の歩幅に合わせて歩いてくれるのは中学の時から何一つ変わらない。そんな優しい彼に惚れたのだ。
「ねえ、洋平」
「ん?」
「明日花道たち勝てるかな…」
正直なことを言うと、私はバスケットになんて興味は無かった。けど、洋平たちに連れられて花道の試合を見る度、いつの間にか私自身がバスケに夢中になってしまった。それはここにいるみんながそうだと思う。
そして何よりも花道自身がバスケに夢中になっている事をみんなわかっていた。それに対してどう思っているかなんて、みんなで話したこともないし、あえて聞くような事でもない。
私たちは純粋に花道を応援したいのだ。だって大切な大切な友人だもん。花道がアホでバカな事も知ってるし、一生懸命バスケに打ち込んで来たことも知っている……だからこそ、みんな本気で応援しているんだ。
「アイツらを信じよーぜ」
思わず立ち止まってしまった私に洋平はそう言って、ニカッと笑うと私の手を握った。いつも洋平は私たちをしっかりと見てくれている。サポーター役とはきっと彼みたいな事を言うのだろう。
まさに主演じゃなくて助演ってやつかな。でも、そんな洋平だからこそ…周りをしっかり見てくれているからこそ、彼の言葉には力があるのだ。
「そうだね」
私は洋平の手を握り直し、先程の洋平のようにニカッと笑った。そして洋平の肩に手を乗せて、チュッと洋平の頬にキスをした。
驚いてこちらを見る洋平に私は「シー」と人差し指を口元に持っていく。
「ずいぶん大胆になったもんですねー」
「たまには、ね」
「そんな可愛いことされると、ホテルの部屋に帰したくなくなるんだけど、どーしてくれんだ?」
「残念ながらおあずけだね」
私たちは笑い合いながら歩を進めた。
明日バカみたいに笑う花道を想像しながらーー。