つぶやき
雨があがったら(本棚にある『雨』の続きです。神夢)
2021/07/31 16:46夢つぶやき
梅雨明けのニュースは私の心を暗くする。
ニュースキャスターは笑顔では無いが、心無しか少し弾んだ声で「梅雨明け」のニュースを読み上げた。
「まだ雨続いていいのに…」
お風呂上がり、髪の毛をタオルドライしながらリビングのテレビに向かって、ニュースキャスターとは正反対の暗い声で言うと「変わった子ね」とソファに座ってテレビを見ていたお母さんが首だけをこちらに向けて言った。
だって……晴れちゃったら会えないじゃない、大好きなあの人に。
雨の日限定で同じバスで通学をする神くんに。
「おはよう…」
「なによ、ずいぶん暗いじゃん。せっかくの晴れなのに」
朝、校門で会った友達から声をかけられる。友達は今日の天気と同じぐらい晴れやかな顔で両手を空へと広げていた。きっとみんなこの彼女と同じ気持ちなのだろう。久しぶりに雲ひとつない真っ青な空を見上げて、どんよりするなんて私ぐらいだよね。
「次はいつ雨降るのかなぁ…」
私はそんな空を見上げながら神様に聞くようにぽつりと言う。
「しばらくは晴れそうだね」
後ろから聞こえてきた声に私は思わず背筋がピン!と伸びた。バッと振り返ると「おはよ」と言いながら自転車を押す神くんがいた。
すると、隣にいた友達は「先にいくね」と、ベタに気をつかってバタバタと走り去っていく。心の中で私は友達に手を合わせ感謝をした。
「おっ、おはよ」
今日一のいい笑顔で挨拶をしようとしたら思わず声が上擦ってしまい、顔から火が出そうになる。ホントに私はこういうとこ…なんだよな……。
「すっかり晴れたね」
空を見上げながら神くんは言う。それにつられるかのように私も空を見上げた。今日1日暑くなりますよ、と話しかけてくるかのように朝の陽の光が眩しくて私は目を細める。
「……晴れなくてもいいのにね」
隣から聞こえてきたその声に私はゆっくりと神くんを見た。神くんはまだ空を見上げて自転車を押しながら歩いている。その横顔は少しだけ困ったように笑っていた。
そして私は先日バスの中で聞いた神くんの言葉を思い出す。
ーオレは好きだよ、雨の日ー
あの時言ったこの言葉はどういう意味で言ったのか、ただ単に本当に雨が好きなのか、それとも少しでも私と同じ気持ちを持っていてくれているのか……淡い期待が今、膨らむ。
「でも、いつまでも天気にすがってちゃダメだよね」
自転車を押していた神くんの手は止まり、私の歩幅に合わせて歩いてくれている足も止まり、その場に立ち止まった。思わず私も進む足を止め、神くんを見ると、彼は真剣な顔で私を見つめる。
「オレが雨の日が好きな理由、言うね」
徐々に気温が上がって熱くなっていくアスファルトと同じように、私の顔も、身体も熱を増していくのがわかった。
「雨だと一緒に登校できるでしょ?」
「わ、私…と?」
「そう。雨が好きなんじゃない、今オレの目の前にいる女の子が好きなんだ」
「神くん……」
「晴れの日でも一緒に登校したいんだけど、ダメかな?」
これから本格的な夏が来て、秋が来て、冬が来て、春が来る。そしてまた夏が来るんだ。
これから巡りゆく景色を見ていくのはあなたの隣で、どんな日でもーーーーー。
ニュースキャスターは笑顔では無いが、心無しか少し弾んだ声で「梅雨明け」のニュースを読み上げた。
「まだ雨続いていいのに…」
お風呂上がり、髪の毛をタオルドライしながらリビングのテレビに向かって、ニュースキャスターとは正反対の暗い声で言うと「変わった子ね」とソファに座ってテレビを見ていたお母さんが首だけをこちらに向けて言った。
だって……晴れちゃったら会えないじゃない、大好きなあの人に。
雨の日限定で同じバスで通学をする神くんに。
「おはよう…」
「なによ、ずいぶん暗いじゃん。せっかくの晴れなのに」
朝、校門で会った友達から声をかけられる。友達は今日の天気と同じぐらい晴れやかな顔で両手を空へと広げていた。きっとみんなこの彼女と同じ気持ちなのだろう。久しぶりに雲ひとつない真っ青な空を見上げて、どんよりするなんて私ぐらいだよね。
「次はいつ雨降るのかなぁ…」
私はそんな空を見上げながら神様に聞くようにぽつりと言う。
「しばらくは晴れそうだね」
後ろから聞こえてきた声に私は思わず背筋がピン!と伸びた。バッと振り返ると「おはよ」と言いながら自転車を押す神くんがいた。
すると、隣にいた友達は「先にいくね」と、ベタに気をつかってバタバタと走り去っていく。心の中で私は友達に手を合わせ感謝をした。
「おっ、おはよ」
今日一のいい笑顔で挨拶をしようとしたら思わず声が上擦ってしまい、顔から火が出そうになる。ホントに私はこういうとこ…なんだよな……。
「すっかり晴れたね」
空を見上げながら神くんは言う。それにつられるかのように私も空を見上げた。今日1日暑くなりますよ、と話しかけてくるかのように朝の陽の光が眩しくて私は目を細める。
「……晴れなくてもいいのにね」
隣から聞こえてきたその声に私はゆっくりと神くんを見た。神くんはまだ空を見上げて自転車を押しながら歩いている。その横顔は少しだけ困ったように笑っていた。
そして私は先日バスの中で聞いた神くんの言葉を思い出す。
ーオレは好きだよ、雨の日ー
あの時言ったこの言葉はどういう意味で言ったのか、ただ単に本当に雨が好きなのか、それとも少しでも私と同じ気持ちを持っていてくれているのか……淡い期待が今、膨らむ。
「でも、いつまでも天気にすがってちゃダメだよね」
自転車を押していた神くんの手は止まり、私の歩幅に合わせて歩いてくれている足も止まり、その場に立ち止まった。思わず私も進む足を止め、神くんを見ると、彼は真剣な顔で私を見つめる。
「オレが雨の日が好きな理由、言うね」
徐々に気温が上がって熱くなっていくアスファルトと同じように、私の顔も、身体も熱を増していくのがわかった。
「雨だと一緒に登校できるでしょ?」
「わ、私…と?」
「そう。雨が好きなんじゃない、今オレの目の前にいる女の子が好きなんだ」
「神くん……」
「晴れの日でも一緒に登校したいんだけど、ダメかな?」
これから本格的な夏が来て、秋が来て、冬が来て、春が来る。そしてまた夏が来るんだ。
これから巡りゆく景色を見ていくのはあなたの隣で、どんな日でもーーーーー。