つぶやき
慰め(南夢)⚠️なんでも許せる方向け
2021/07/03 20:42夢つぶやき
私は、私だけはいつでもあなたのそばにいる。
「なぁ!バスケ部の話知っとる?!」
「アレやろ?!今度は〇〇高の人を怪我させたんやって!」
「そうそう!なんかうちのバスケ部って物騒やよね」
「ただでさえガラ悪いんやから、試合ぐらいちゃんとやったらええのになぁ」
昼休み、隣の席から聞こえてきた会話に私は食べていたお弁当を途中で包み、席を立つ。一緒に食べていた友達には「用事を思い出した」と一言だけ言って。
無心で歩く私の頭の中には、1人の人物のことだけを思い描いている。ただ1人だけをーーー。
「……ノックぐらいせぇよ」
ガチャりと1つの部屋のドアをあけると、不満そうな声が聞こえてくる。こちらを向きもせず、だるそうに言う声が。その声の主はさっきからの頭の中に居座る人物だ。
ここはバスケ部の部室で、ソファに座っている彼はここの管理人と言ってもいいのかもしれない。
バスケ部のキャプテンなのだから。昼休みにここに入れるのもその特権、といったところだろう。
「私が来ると思っとったから、鍵あけといたんやろ?」
そう言いながら私は鍵を閉め、ゆっくりと歩み寄る。南という男に。そして彼の目の前に立ち、上から見下ろした。
「相変わらずお見通しやな」
「それは私のセリフや」
2人して達観してるかのような言葉を放ち、南は私を見上げながらフッと微笑んだ。微笑むーーというよりは、ニヤリとした。と言った方が正しいのかもしれない。そして両手を広げた。
私たちは傷の舐め合いをしている。
けれど、その傷がどんな傷なのかお互い知らない。言う必要もないのだ。直接傷口に触れぬよう、いい距離感を保っていると言ってもいい。
私は両手を広げた南の太ももの上にまたがって座り、彼の首へと手を回す。南はそんな私を撫でるように抱きしめ、私の胸に顔を埋めた。
制服の上からキスをするように、南の唇があたるのがわかる。
他人にすがりたくなる時もある。
自分ひとりじゃどうしようもなくなる時もある。
それでも、他人には自分の気持ちなんかわからない……そう思ってしまうんだ。
そんな時は気持ちの慰め合いなんて効果はない、だからこうして私たちは身体で慰め合う。
私の両頬を大きな手で包み込んだ南は私の顔を引き寄せ、唇を開きながらキスをする。そう、まさに噛み付くように。お互いの存在を舌で絡めあって確かめる私たちは、恋人同士なんかじゃない。
それでも私は決意したんだ。
私は、私だけはいつでも南のそばにいる。
コイツはどんな気持ちでオレと抱き合ってるんやろ。オレの上にまたがり、瞳を潤ませながら甲高い声をあげるコイツを見ながら…身体全身でコイツを感じながらオレは思う。
いつからこんな関係になったのかは正直覚えてへん。どちらからともなくこうなったんや。
ただ言えることはお互いにコレは慰め合うだけの関係だということ。2人ともそれはなんとなくわかっとる。でもそれがどんな傷の慰め合いなのかはお互いに知らない。
別にそれでええ。
それでもオレは離さへん。
慰め合いだろうが、傷の舐め合いだろうが何でもええねん。絶対にこの手を離したないねん。
今はそれだけでええーーー。