つぶやき
眠気
2021/05/31 19:20新しい部署に異動して2ヶ月がたとうとしている。新年度の始まりは会社自体が繁忙期という事もあり、どこの部署も慌ただしい空気の中で仕事をしなければならない。私はその中でも随一忙しいと言われている部署に異動をしてきてしまったのだが、その忙しさをどうにか乗り越えてようやく落ち着きを取り戻した。
そうすると気の緩みも出てきてしまうものだ。
「ふぁぁ…」
お昼休み明け、私は大きなあくびをしながら1人で印刷室にいた。
忙しい日々に追われていた私は今になって緊張の糸が解けたようで、怒涛の日々が終わった今、ドッと疲れが出てきている。
つい最近までお昼あけでも眠くなることすら無いほど夢中で仕事をしていた。
その為、仕事中にあくびが出るなんて久しぶりの事。やっと落ち着いた証拠でもあるよね。
「よぉ」
そう言って印刷室に入ってきたのは去年まで同じ部署だった三井さんだ。そして私が異動する直前に彼氏になった人でもある。
「どうしたんですか?」
「ねみぃからコーヒー買いに来たんだよ」
三井さんの手には紙コップが握られていた。
……それも両手に、だ。
「欲張りすぎやしませんか?」
「ばーか。おめーんだよ」
コトン、と机の上に1つの紙コップを三井さんは置いた。その優しさに私の心はキュッと掴まれ、自然に顔が綻んでしまう。
「ありがとうございます」
すると三井さんは何やら周りをキョロキョロと見渡しはじめた。
「どうしたんで」
私の言葉は三井さんの不意打ちのキスによって塞がれた。
「っし、眠気も覚めたし午後からも頑張るかぁ」
グッと腕を真上に伸ばしながら三井さんは印刷室から出ていく。突然の事で何も言えない私を置いて。……いや、さすがに付き合って2ヶ月もたってんだからキスなんてした事あるし、むしろそれ以上の事だってしてるんだけど…だけど!!!
誰もいない部屋とはいえ、まさか職場でされるなんて思わないじゃない?!
ーとその時、自分のフロアへ戻ったはずの三井さんが顔だけひょこっと出し、一言言葉を投げてきた。
「足りねーから帰りお前ん家行くわ」
……さて、私も目が覚めた事だし、残りの印刷は今日作る料理のレシピでも考えながらしますかね。