「楽しかったね」
幸せいっぱいだった牧くんとの旅行が終わり、今は帰りの飛行機の搭乗案内を待っている。

「あ～あ、帰ったらまたいつもの日常が始まっちゃうのか」私がそう言ってしょんぼりすると、牧くんが「それなら」と小さく咳払いをしてから言った。

「お前自身が『牧』と名乗る日常はどうだ？」

……私が、『牧』になる？
それって……。

「ええっ？！牧くん！それって」
「ははっ、まずは牧くん呼びを卒業してからだな」
「！！ずっ、ずるい！！」
「あ、ほら登場案内始まったぞ」

牧くんはそう言って椅子から立ち上がり、歩き始めたので、私は「待って」と言いながら彼の隣へと並び歩く。

「早く卒業してくれたら、オレは嬉しいんだが？」
「が、頑張ります」

なんて会話をしながらーーー。