恋路
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夏休みも終わりに近づいたある日、私は友達の家からの帰り道でコンビニから出てきた三井に偶然会った。
私は自転車に乗ろうとしていた三井に駆け寄る。
「ラッキー!後ろのーせてっ!」
ほぼ無理やり三井の肩に手を乗せ、自転車の後輪についてある、ステップ、いわゆる足置き場に足の乗せて立ち乗りした。
「あっ、てんめ!!」
「はい!レッツゴー!!」
三井の意見は無視して私は三井に出発するよう促す。三井はそんな私にしぶしぶながらも自転車をこぎ始めた。なんやかんや乗せてくれるんだよね、三井は。
私は三井の背中でしめしめと悪い顔で静かに笑った。もちろん、こんな顔を見られたら怒られるに決まっているだろう。
「久しぶりだね、三井の後ろに乗るなんて。中学生以来じゃない?」
「あぁ、そうだな」
私たちは中学の頃の同級生で、中学時代はよく何人かでつるんで遊んでいた。その時に何回もこうして三井の自転車の後ろに乗せてもらうこともあったのだ。
三井は思ったことはすぐ口や顔に出るけれど、馬鹿正直で憎めなくて、みんなの人気者だった。
そしてバスケがめちゃくちゃ上手くて、他校の女子からモテたりもしていた。
……まぁ、黙っていたら顔はいいしね。
そんな私も三井に恋をする1人の女子だった。
けれど、想いを告げることは出来ないまま中学を卒業して、そのまま三井と会うこともほぼなくなっていた。
その為、自然と私の恋心も消えていったのだ。
そして、いつの日だったかは忘れてしまったが、完全なる不良グループに紛れているロン毛の三井を見た時の衝撃ったら、、、今でも忘れられない。
『バスケやめたらしいよ』
中学の同級生にそう聞いて、とても寂しく思ったのは鮮明に覚えている。
もう私とは別の世界の住人になったんだなぁ…なんて思っていたら、今年の……アレは確か制服が夏服に変わったばかりの頃だった。
まさに今と同じ場所、さっきのコンビニの中で三井に偶然会ったんだよね。
三井はロン毛もやめていて、ちょっとだけカッコイイなぁ…なんて思ってしまった。
お互いバッチリ目が合ってしまったので、無視する訳にもいかず「……よう」「……やほ」なんて気まずさ満点の挨拶を交わす。
でも、そこからまた以前のように話をできるようになったんだよね。
バスケをまたはじめた事も聞いて、友達と試合を見に行ったりもした。確か…陵南との試合だったかな。
途中で倒れてしまった三井を見て、ぎゅっと心が痛くなったりもしたけど。
「いやー、しかし三井はロン毛やめて正解だね」
「なっ?!お前見たことあんのかよ?!」
「あるよー、2年生の頃ね。超似合ってなかった」
「……うっせぇ!」
私は爆笑して、バシバシと三井の肩を叩きながら話しを続けた。
「……話しかけられなかったもん」
小さく私がポツリと言うと「…オレだって」と、かろうじて聞こえるぐらいの小さな声が返ってきた。
「オレだってお前のこと街中で見かけたことあるけど、話しかけらんなかったんだよ」
「え?!なんで?私は別にグレてないし」
「アホか!ちげぇよ」
ちょうどその時、目の前の信号が赤になり、三井は自転車を横断歩道の前で止める。そして黙った。
「なによ、どーゆー事?」
私が問いかけると少しの沈黙の後、三井は話し始めた。
「……お前が男といたから」
ーーえ。
気をつかったの?
あのロン毛のグレまくっている三井が気をつかったの??
「あっははは!マジで?!”ヤンキー三井、気をつかうの巻”ですか?!あははは!」
「っせぇな!つかうだろ!!」
「そーゆーとこ変わんないよねぇ!あっ、ほら三井、青になったよ」
私は目の前の信号を指さしながらまたまた三井の肩をバシバシと叩いた。
「……まだ続いてんのか?そいつとは」
三井がまだ少しむくれた様な声で私に聞いてくる。
「え?続いてませんけど、何か?」
「だろーな」
心なしか、そう言った三井の声は嬉しそうに聞こえた。
「三井こそどーなの?」
「あ?なにがだよ」
「かーのーじょ!いないの?」
「今はバスケに専念してっからな!」
「……言い訳にしか聞こえない」
「んだと?!」
三井は後ろを見ようとして、急ブレーキをかけた。勢いよくキキっと音を立て、自転車が止まった為、私はバランスを崩しそうになり、三井の肩に乗せていた手を抱きつくかのように三井の首に絡めて、身体そのものを三井の背中にピタッとくっつける。
「ちょっと!危ない!!!」
「……しっかり掴まりゃいいだろ」
三井はプイッと前を向き、また自転車をこぎ始めた。……顔、赤くなかった?
辺りはもう暗がりだったので、ハッキリとはわからなかったが、三井の顔はうっすら赤く染まっていた気がする。
「てゆーか…インターハイ、惜しかったね」
「別に惜しかねーよ。3回戦目で負けてんだからな」
私は友達から湘北バスケ部のインターハイの結果を聞いていた。少なからず、バスケ部に戻った三井のことを気にしていたのだ。
だって、三井はバスケをしている時が1番いい顔をしているから。
「でも、めっちゃ強豪校に勝ったんでしょ?それだけでもすごいじゃん」
「…まーな。でも結果負けてんだ、ざまぁねぇよ」
「ふーん、そんなもんなの?」
「そんなもんなんだよ」
私的にはインターハイ出場っていうだけで凄いと思うんだけどな。まぁ、こればっかりは部活をやっている本人たちにしかわからないモノがあるんだろうなぁ。
「つかよ…お前太った?」
「はぁぁ?!?!?!」
突然のド失礼な三井の発言、いや、失言。
なにこの男、相変わらず馬鹿正直じゃん。少しは大人になれよ!!!
そりゃ中学の頃から背は高くなってんだから、体重が増えるのは当たり前じゃない!!
……いや、その前に数年ぶりに私を乗せたんだから前の重さなんて……え?
「三井、数年前に私を乗せた重さ…覚えてんの?」
私が少し前のめりになりながら三井に問いかけると、ピクリと三井の肩が動いた。
それでも三井は真っ直ぐに前を向いたまま、自転車を走らせる。少しスピードがあがったようだ。
そのせいか、夏の生ぬるい風が私の頬をなでた。
「……覚えてるに決まってんだろ。忘れられっかよ、お前の事なんだから」
「え、三井って…………私のこと好きだったの?!」
「お前……もうちょい言い方っつーもんがあんだろ!」
ムードもへったくれもない私の言い方に、三井は半ば呆れながら言う。そりゃそうだよね、自分でも思ったもん。
けど、私だってそこまで鈍くない。ここまで言われてわからない方がどうかと思う。
そして自転車はスピードを落とし、ゆっくりと止まった。見慣れた風景の場所で。
いつの間にか私の家の前に到着していたのだ。
「私の家、覚えてたんだ…三井ホントに私のこと好きなんだね」
「……文句あっかよ」
私はトンっ、と自転車から軽やかに飛び降りる。
そして「ありがと」と三井にお礼を言うと、「おう」と私の顔を見ずに三井は言った。
「ねぇ、三井」
「あんだよ」
「また乗せてくれる?後ろ」
私は人差し指で自転車の後輪を指しながら言う。
三井は一瞬だけ目を丸くしたけれど、その後に私の頭をクシャクシャと撫でながら言った。
「しょーがねぇから、お前専用にしてやるよ」
ニッと笑う三井の顔を見て、再び恋に落ちる日はそう遠くはないと感じたーー。
私は自転車に乗ろうとしていた三井に駆け寄る。
「ラッキー!後ろのーせてっ!」
ほぼ無理やり三井の肩に手を乗せ、自転車の後輪についてある、ステップ、いわゆる足置き場に足の乗せて立ち乗りした。
「あっ、てんめ!!」
「はい!レッツゴー!!」
三井の意見は無視して私は三井に出発するよう促す。三井はそんな私にしぶしぶながらも自転車をこぎ始めた。なんやかんや乗せてくれるんだよね、三井は。
私は三井の背中でしめしめと悪い顔で静かに笑った。もちろん、こんな顔を見られたら怒られるに決まっているだろう。
「久しぶりだね、三井の後ろに乗るなんて。中学生以来じゃない?」
「あぁ、そうだな」
私たちは中学の頃の同級生で、中学時代はよく何人かでつるんで遊んでいた。その時に何回もこうして三井の自転車の後ろに乗せてもらうこともあったのだ。
三井は思ったことはすぐ口や顔に出るけれど、馬鹿正直で憎めなくて、みんなの人気者だった。
そしてバスケがめちゃくちゃ上手くて、他校の女子からモテたりもしていた。
……まぁ、黙っていたら顔はいいしね。
そんな私も三井に恋をする1人の女子だった。
けれど、想いを告げることは出来ないまま中学を卒業して、そのまま三井と会うこともほぼなくなっていた。
その為、自然と私の恋心も消えていったのだ。
そして、いつの日だったかは忘れてしまったが、完全なる不良グループに紛れているロン毛の三井を見た時の衝撃ったら、、、今でも忘れられない。
『バスケやめたらしいよ』
中学の同級生にそう聞いて、とても寂しく思ったのは鮮明に覚えている。
もう私とは別の世界の住人になったんだなぁ…なんて思っていたら、今年の……アレは確か制服が夏服に変わったばかりの頃だった。
まさに今と同じ場所、さっきのコンビニの中で三井に偶然会ったんだよね。
三井はロン毛もやめていて、ちょっとだけカッコイイなぁ…なんて思ってしまった。
お互いバッチリ目が合ってしまったので、無視する訳にもいかず「……よう」「……やほ」なんて気まずさ満点の挨拶を交わす。
でも、そこからまた以前のように話をできるようになったんだよね。
バスケをまたはじめた事も聞いて、友達と試合を見に行ったりもした。確か…陵南との試合だったかな。
途中で倒れてしまった三井を見て、ぎゅっと心が痛くなったりもしたけど。
「いやー、しかし三井はロン毛やめて正解だね」
「なっ?!お前見たことあんのかよ?!」
「あるよー、2年生の頃ね。超似合ってなかった」
「……うっせぇ!」
私は爆笑して、バシバシと三井の肩を叩きながら話しを続けた。
「……話しかけられなかったもん」
小さく私がポツリと言うと「…オレだって」と、かろうじて聞こえるぐらいの小さな声が返ってきた。
「オレだってお前のこと街中で見かけたことあるけど、話しかけらんなかったんだよ」
「え?!なんで?私は別にグレてないし」
「アホか!ちげぇよ」
ちょうどその時、目の前の信号が赤になり、三井は自転車を横断歩道の前で止める。そして黙った。
「なによ、どーゆー事?」
私が問いかけると少しの沈黙の後、三井は話し始めた。
「……お前が男といたから」
ーーえ。
気をつかったの?
あのロン毛のグレまくっている三井が気をつかったの??
「あっははは!マジで?!”ヤンキー三井、気をつかうの巻”ですか?!あははは!」
「っせぇな!つかうだろ!!」
「そーゆーとこ変わんないよねぇ!あっ、ほら三井、青になったよ」
私は目の前の信号を指さしながらまたまた三井の肩をバシバシと叩いた。
「……まだ続いてんのか?そいつとは」
三井がまだ少しむくれた様な声で私に聞いてくる。
「え?続いてませんけど、何か?」
「だろーな」
心なしか、そう言った三井の声は嬉しそうに聞こえた。
「三井こそどーなの?」
「あ?なにがだよ」
「かーのーじょ!いないの?」
「今はバスケに専念してっからな!」
「……言い訳にしか聞こえない」
「んだと?!」
三井は後ろを見ようとして、急ブレーキをかけた。勢いよくキキっと音を立て、自転車が止まった為、私はバランスを崩しそうになり、三井の肩に乗せていた手を抱きつくかのように三井の首に絡めて、身体そのものを三井の背中にピタッとくっつける。
「ちょっと!危ない!!!」
「……しっかり掴まりゃいいだろ」
三井はプイッと前を向き、また自転車をこぎ始めた。……顔、赤くなかった?
辺りはもう暗がりだったので、ハッキリとはわからなかったが、三井の顔はうっすら赤く染まっていた気がする。
「てゆーか…インターハイ、惜しかったね」
「別に惜しかねーよ。3回戦目で負けてんだからな」
私は友達から湘北バスケ部のインターハイの結果を聞いていた。少なからず、バスケ部に戻った三井のことを気にしていたのだ。
だって、三井はバスケをしている時が1番いい顔をしているから。
「でも、めっちゃ強豪校に勝ったんでしょ?それだけでもすごいじゃん」
「…まーな。でも結果負けてんだ、ざまぁねぇよ」
「ふーん、そんなもんなの?」
「そんなもんなんだよ」
私的にはインターハイ出場っていうだけで凄いと思うんだけどな。まぁ、こればっかりは部活をやっている本人たちにしかわからないモノがあるんだろうなぁ。
「つかよ…お前太った?」
「はぁぁ?!?!?!」
突然のド失礼な三井の発言、いや、失言。
なにこの男、相変わらず馬鹿正直じゃん。少しは大人になれよ!!!
そりゃ中学の頃から背は高くなってんだから、体重が増えるのは当たり前じゃない!!
……いや、その前に数年ぶりに私を乗せたんだから前の重さなんて……え?
「三井、数年前に私を乗せた重さ…覚えてんの?」
私が少し前のめりになりながら三井に問いかけると、ピクリと三井の肩が動いた。
それでも三井は真っ直ぐに前を向いたまま、自転車を走らせる。少しスピードがあがったようだ。
そのせいか、夏の生ぬるい風が私の頬をなでた。
「……覚えてるに決まってんだろ。忘れられっかよ、お前の事なんだから」
「え、三井って…………私のこと好きだったの?!」
「お前……もうちょい言い方っつーもんがあんだろ!」
ムードもへったくれもない私の言い方に、三井は半ば呆れながら言う。そりゃそうだよね、自分でも思ったもん。
けど、私だってそこまで鈍くない。ここまで言われてわからない方がどうかと思う。
そして自転車はスピードを落とし、ゆっくりと止まった。見慣れた風景の場所で。
いつの間にか私の家の前に到着していたのだ。
「私の家、覚えてたんだ…三井ホントに私のこと好きなんだね」
「……文句あっかよ」
私はトンっ、と自転車から軽やかに飛び降りる。
そして「ありがと」と三井にお礼を言うと、「おう」と私の顔を見ずに三井は言った。
「ねぇ、三井」
「あんだよ」
「また乗せてくれる?後ろ」
私は人差し指で自転車の後輪を指しながら言う。
三井は一瞬だけ目を丸くしたけれど、その後に私の頭をクシャクシャと撫でながら言った。
「しょーがねぇから、お前専用にしてやるよ」
ニッと笑う三井の顔を見て、再び恋に落ちる日はそう遠くはないと感じたーー。
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