贈物
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たかが誕生日、されど誕生日。
別にたいした期待なんてしてなかったし…別に。
「出張?!」
『そうなのー!明日は寿の誕生日だったのに……ごめんね』
「や、別に誕生日ぐらい気にしねぇよ」
『ホントにごめんね!帰ってきたらお祝いしようね!』
「いいって、気をつけて行ってこいよ」
スマホの通話終了ボタンを押したあとに自然と出てきたため息。思ったよりダメージを受けてる自分をかっこ悪ぃと思った。
今電話をしていた相手は恋人であるまなみ。付き合って4年になる。
そしてあと4時間後、オレはまた1つ歳をとる。
明日はオレの誕生日だ。
「何欲しい?!」
「何食べたい?!」
「どこ行きたい?!」
なんてアイツは5月に入ってからオレにうるさいぐらい聞いてきていた。
別にはじめて祝う訳でもねぇしと、オレは「なんでもいーよ」と、たいして相手にもしてなかった。その度に「祝いがいがないじゃん!」とアイツは怒っていた。
それなのにーーー
オレは何をへこんでんだよ!!
何をダメージくらってんだよ!!
期待してたんだな…オレは。
バカみてぇだなと床に寝転び天井を見る。自然と頭に浮かぶのはまなみの顔だった。
……思い出しただけでも可愛いと思ってしまうオレは相当重症だな。
「女々しいんだよ!オレは!!」
このままではダメだと起き上がり、そのまま風呂へと直行した。
そしてこのだらしねぇ気持ちをすべて洗い流し、オレは風呂場から出て、冷蔵庫に入っている缶ビールを取り出しプシュ!っと開け、ゴクゴクと勢いよく飲んだ。
「うめぇ…」
誕生日がなんだってんだよ。別にまた来年があんじゃねーか。それに帰ってきたら祝ってくれるって言ってっし…………
それだけでオレは………………
ピンポーン
「んぁ?」
オレは部屋に鳴り響くインターホンの音で自分が寝てしまっていたことに気がついた。
どうやらいつの間にかソファで寝ちまってたんだな…。
まだぼーっとする頭でそんな事を思っていると、再びインターホンの音が鳴った。
「へいへい」
ドアホンを見てみると、そこには大きな紙袋を抱えたまなみの姿が映っていた。
「まなみ?!」オレは慌てて開錠した。
そして5階であるオレの部屋までまなみが来るにはまだ時間はあるが、玄関のドアをあけた。
もちろんまだ誰もいない。ーと、その時エレベーターの扉が開く音がして「…っ、とと」と聞きなれた声が聞こえてきた。
「……なにしてんだよ」
エレベーターから降りてきたのは大きな紙袋を抱え、手首にも四角い紙袋をぶら下げてよろよろと歩いてくるまなみだった。
「あ、寿?!ごめ、助けて」
オレはまなみが抱えていた紙袋を受け取った。
そしてそのまままなみを部屋へと招き入れる。
「はぁ~重かったァ」
「お前どーしたんだよ急に。だいたい今何時……」
オレがスマホの時計を見ようとした時、まなみのスマホから音が流れてきた。これはコイツが設定しているアラームの音だ。泊まった時に何度も聞いたことがある。
「寿、誕生日おめでとう」
まなみは立ったままオレにキュッと抱きついてきた。
……は?誕生日?オレは手に持っていたスマホを見ると時刻は0時ちょうどになっていた。
「お前こんな時間に1人で来たのかよ?!」
オレはお祝いに来てくれた喜びよりも、夜中に1人で来たことにたいして怒った。
「ごっ、ごめんて!……どうしても日付変わった瞬間にお祝いしたかったんだもん」
バツが悪そうにまなみは顔の前で手を重ね、ごめんとジェスチャーをした。
「いや…それよりお前明日出張って…」
「あぁ、アレ嘘」
「……は?はぁぁ?!」
ケロッと悪びれもせず言うまなみにオレは大きな声を出す。そんなオレに「まぁまぁ」と言いながらまなみはオレをソファに座るよう促す。
そして「はいっ!」と先程抱えていた大きな紙袋を改めてオレに差し出した。
「中、見ていいよ!」
ニッコリ笑うまなみに少しだけニヤけそうになるのを我慢して、オレは紙袋の中を見る。
「……なんだよこれ」
「誕生日プレゼント」
紙袋の中には更にいくつもの包装された箱や、袋が入っている。大きいものや小さなもの、固いもの柔らかいもの様々だった。
「ちゃんと1個ずつ開けてね?」
そんなまなみの言葉の通りに1つずつ開封していく。中身は靴下、スポーツタオル、名刺入れ、シャンプーやサランラップなどの生活用品まで色んな物が入っていた。
その中でも1番デカく、重いものを最後に開けると中からはスニーカーが出てきた。
「寿、欲しがってたでしょ?」
そのスニーカーは以前まなみと買い物へ行った時に買おうか悩んでいた物だった。
「寿さぁ、欲しいもの聞いても言ってくんないしさー!けっこう悩んだんだから」
「……サンキュ」
オレはそっとまなみにキスをした。
「喜んでくれた?」
「あぁ、やるじゃんお前」
ワシャワシャと頭を撫でるとまなみは子供のように無邪気に笑った。
……その笑顔も最高のプレゼントなんだけどな。
「ねぇ!プレゼントの数、数えてみて?」
まなみは楽しそうに言った。
オレは指で1つずつ声に出して数えていった。
最後の1個を数え終えた時、まなみは前のめりになり「なんか気付いた?!」とオレに聞いてくる。オレにはなんの事なのかわからず「なんだよ」と言うことしかできない。
「いくつになったんですかー?寿くんは」
まなみのその言葉でオレはようやく気がついた。
「あ、オレの歳の数…か?」
「正解!!」
「……あ?待てよ。1個足んなくねぇか?」
そうなのだ、オレの歳の数だけのプレゼントなら1個足りないのだ。
「もう1個はぁ~……」
そう言ってまなみは後ろを向き、ゴソゴソと袋から何かを取り出している。
そしてクルッとこちらに向き直すと頭には大きなリボンをつけていた。
「わ・た・し」
ニカッと笑い、人差し指を両頬に当てながら言うまなみ。オレは可笑しくなり、ぶはっと笑った。
「今日はサービスしまっせ、お兄さん」
バカみてぇなジョーダンを言ってまなみはオレに抱きつく。……まぁ、ソレはジョーダンじゃ済まさねぇんだけどな。
「……ねぇ、寿」
「あんだよ」
オレの腕の中でまなみは小さく言う。
「誕生日おめでとう、大好き」と。
そんなまなみをオレはキツく抱きしめ返す。
そして言うんだ、最上級の愛の言葉って奴を。
「なぁまなみ」
「なぁに?」
「結婚しよーぜ」
勢いなんかじゃねーぞ。
ずっと思ってたんだ、結婚するならコイツしかいねぇって。他の誰でもねぇまなみとだって。
……つーか、なんでなんにも言わねぇんだよ。
オレは抱きしめている力をゆるめ、おそるおそるまなみの顔を覗き込む。
「…え、お前泣いてんの?!」
まなみのデカい目からはポロポロと涙が流れている。
「泣くでしょ…そんなん……バカ」
「くれんだろ?誕生日プレゼント」
オレはそう言ってまなみの頭に着いているリボンを指で弾いた。
「あげるっ!返品不可だからね!」
「うおっ」
まなみは涙を流したまま笑顔で勢いよくオレに抱きつく。今日何度目のハグかわかんねぇな。
ま、これからも数えきれねぇくらいのハグやらなんやらしてこーぜ。
そして毎年誕生日祝ってこーぜ、お互いに。
ハッピーバースデー、オレ。なんてな。
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