雨音
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……今日のテレビの占いは何位だったっけ?
そんな事を思ってしまうぐらい、今日の私はボロボロだった。
もちろん自分でミスったこともある。
けれど、理不尽なことも多すぎた。どう考えても神様のいたずら…?私への罰?と考えてしまうほどの最悪な1日だった。
「はあ…」とため息をつきながら会社の外へ出ると、最後のオチかのように外は土砂降りの雨。
「……最悪」
今日何度言った言葉かわからない。
もちろん今日の私は傘なんて持ってきていない。
タクシーを呼ぶ気にもなれず、むしろこのまま濡れて嫌な気持ちも全部流れてしまえばいい、そう思い歩き出そうとした。
「なにしてんねん」
その声で私は歩き出すのをやめ、後ろを振り返る。そこには同僚の南の姿があった。
南は空を見上げた後に私を見て、軽く笑った。
……ため息混じりで呆れたかのように。
「水も滴るなんとか言うつもりか?」
「……そんな量じゃないよね、これ」
「わかっとるやないか」
南はそう言うとスっと私へ傘を差し出し、中へと招いた。
そんな南に私は呆然として、背が高い彼を黙って見上げることしかできなかった。
そんな南は真顔で私に言った。
「大ジョッキ1杯でええよ」
「……贅沢か」
「1杯やで?良心的やないか」
南が持つ傘の中、私たちはゆっくりと歩き出した。
すると南は「えらい降りよるなぁ」と呟いた。私は「そうだね…」となんの面白みもない返事をする。
「誰かさんの心みたいやな」
そんな南の言葉に私は思わず立ち止まり、南を見上げた。南も足を止め、私を見つめる。
ザァァァと大粒の雨がアスファルトに打ち付ける中、世界は私と南の2人だけのような錯覚に陥る。
「……ま、こんな日もあるやろ」
全部わかってんだよなぁ、この男は。
ホントにずるい。そして……ホントに敵わない。
「なによ…南のくせに」
「今日からさん付けで呼んでもええで?」
「……ばか。なぐさめる気があるならおごってよ!大ジョッキ1杯!!」
「贅沢か」
「1杯って言ってんだから、良心的でしょ?!」
私たちは笑い合いながら再び歩き出した。
雨の音が心地よくて、このままずっと歩いていてもいいかなぁ……なんて思いながら。
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