明察
空欄の場合は「まなみ」になります。
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「お前何食うてんの?」
昼休みも終わりに近づいた時、前の席の南が体を横向きにして話しかけてきた。
「ホワイトデーのお返し」
私はムシャムシャとクッキーを口に入れながら答える。
大好きな先輩からもらったクッキーを。
「南も食べる?」
「は?お前それお返しなんやろ?」
……南ってこういう所あるよね。
意外に義理人情あるというか、真面目というか。
入学当初はぶっきらぼうでツンケンとしてあんまり好きやなかったけど。
約1年同じ教室で過ごしていると、ぶっきらぼうなのはそのままだけど…けっこう優しかったりするし、周りのことよく見てる奴やなぁって今では思っている。
「お返しっても、義理のギリギリお返しやから別にええねん」
「ギリギリてなんやねん…」
私は意地になって口いっぱいにクッキーを頬張った。
私が渡したものは決して義理チョコなんかやなかった…。一目惚れをして、話をしたことも無い先輩にあげた本命チョコ。
勇気を出して渡した本命チョコ。
お返しとしてもらったのはみんなと同じ包装紙で包まれたクッキー。
「…なら、1個貰うわ」
「南は?くれへんの?私に」
「……お前オレにバレンタインよこした記憶あるか?」
「しらーん」
私がまた1つクッキーを手に取ると、南はソレを私の手から奪い自分の口へと持っていった。
そしてパクリと一口で食べた。
「…あんま」
「南、甘い物苦手なん?」
「そこまで得意やないな」
「……なんで食べたの?」
「さぁな」
南はポン、と1度私の頭に手を乗せ前を向いた。
なんだか全てお見通しな気がした。なんにも言わなくたって私が今どんな思いをしているのかも、全部わかってしまっている。そんな気がした。
「……南ってさ、けっこういい奴だよね」
「は?」
私の言葉に再び南はこちらを向いた。
眉をしかめ、怪訝そうな顔で。
「オレの事どんな奴や思うてんねん」
「なんか前まではさ、素直じゃなくて…あまのじゃく?的なイメージあったんやけどね」
「そーゆーお前は自分に素直やな」
「……それ褒め言葉?」
「お前のそうゆうとこ、俺は結構ええなぁと思うんやけど」
「……は?」
私が大きな口をあんぐりとあけ、一言そう言った時授業が始まる鐘が学校に鳴り響いた。
「あ、授業始まるわ」
南はそう言い逃げをして前を向いた。
振り向く前に私にフッと笑いながら。
私は何故か慌ててもう1つクッキーを口にいれた。
さっきから何個も食べているクッキーのはずなのに、すごく甘く感じたのはきっと気のせいなんかじゃない。
1/1ページ