好き
空欄の場合は「まなみ」になります。
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
そんなに言わねぇとわかんねぇもんか?!
伝わんだろ。
つか、付き合わねぇだろ
『好き』じゃなきゃ。
「ほんっとに三井さん言ってくれないですよね!」
「あ?何がだよ」
「『好き』って!」
部活のために体育館へと続く廊下を歩くオレとまなみ。
イキナリ言い出したコイツの言葉にオレはげんなりとする。
「なんでいちいち言わねぇといけねぇんだよ」
「あー!またそういうこと言う。まじで乙女心がわかってないなぁ…」
口をへの字にして不満そうにするまなみ。
得意な顔だよなー、コイツの。
……させてんのはオレ、、か?
「言わなくてもわかんだろ」
「いや、わかりますよ?三井さんがどれだけ私の事好きかなんて、超伝わってますよ?」
「……ならいいじゃねぇか」
それはそれでなんか、なんか……だな。
めんどくせぇから言わねぇけど。
つか、前に言ったじゃねぇか。
…………1回だけだけど。
「でも言葉にして欲しいって、この気持ちわかってくれてもよくないですか?!」
「へいへい、そのうちな」
「あ!逃げた!!!」
ちょうど体育館に着いたこともあり、オレはそそくさとまなみの元から離れた。
これ以上コイツのワガママには付き合ってらんねぇ。
「女ってめんどくせぇな」
ポツリと言ったこの言葉を聞き逃さなかった奴らがいる。
「三井サン?あんた喧嘩うってんの?」
「ミッチーのゼータク者め」
宮城と桜木がしかめっ面をしながら、ズイズイと近づいてくる。
「三井はもう少しまなみちゃんを大事にした方がいいな」
……木暮まで、なんだよこいつら。
ひがむなよ。
「三井サンあんたそのうちホントにバチあたるよ」
「なんだよバチって」
「あんなに可愛い子が三井サンの彼女なんておかしいでしょ」
「オレも同感だなりょーちん」
おかしいってどーゆー事だよ。
オレは体育館の入口にいるまなみの方へと視線を向けた。
するとアイツはオレに背を向け友達と話をしている。
ーと、その時
「あぶない!!!」
そんな誰かの声と同時にバスケットボールがまなみの後頭部へと当たった。
そのまままなみはその場に崩れ落ちる。
「まなみ!!」
オレは大慌てでまなみの元へと走りよった。
そして抱きかかえる。
「…ん」
まなみは小さく声を上げ、目をゆっくりと開けた。
「大丈夫か?!」
オレが声をかけるとまなみはオレから勢いよく離れた。
そして驚きの一言を放つ。
「え?!誰?!」
ーーーは!?!!?!!
まなみの言葉にオレは耳を疑った。
「まなみちゃん大丈夫??」
宮城や桜木たちも集まってきた。
「ってて、宮城さん…なんかめっちゃ頭痛いんですけど」
「ボールあたったんすよ」
「あ、桜木くん…まじか……」
後頭部をスリスリと手で触りながらまなみは話している。
「おい」
「え?!」
「誰?ってどーゆー事だよ。さっきの事怒ってんのか?」
オレはまたコイツが不貞腐れてるんだと思っていたんだ。
この時までは。
「え…えっと、誰ですか?新入部員?」
「あぁ?!」
さすがにまなみのこの反応に周りもざわつき始めた。
「ホントにこの人の事わからないの?」
彩子の問いかけにフルフルと首を横にふるまなみ。
嘘だろ。
彩子は部員を何人か並べて指をさし「この人は?」と順にまなみへと聞いていく。
「宮城さん、桜木くん、木暮さん、流川くん」
「じゃあ、この人は?」
最後に彩子はオレの背中を押し、まなみの前へと突き出した。
「……誰ですか?」
「なんでオレだけわかんねぇんだよ!!」
「こわ!!!なんなんですか!めっちゃ怖いんですけど!!」
思わず怒鳴ってしまったオレにまなみはビビって彩子の後ろへと隠れてしまった。
……やっちまった。
「この人はね、あなたの彼氏よ」
彩子のそんな説明に「は?」と眉をしかめるまなみ。
そんなに嫌な顔をしなくてもいいじゃねぇか。
オレに一目惚れだったんじゃねぇのかよ。
「……私の彼氏、なんですか?」
まなみはゆっくりとオレの目の前に来てビクビクしながら聞いてくる。
「……そうだよ」
「ホントですか?」
「ホントだっつの」
なんでこんなことになったんだよ。
よりによってオレの事だけ忘れやがって…。
ホントにバチがあたってしまったのだろうか、なんて事まで考えちまう。
「えぇ?信じられないです」
「なんでだよ」
「あなたが私の彼氏?」
「そーだよ」
「ホントに?」
「だからホントだっつの!!」
……なんだよこの会話は。
「……私の事好きなんですか?」
「……好きだよ」
周りから「ひゅう」と口笛のような冷やかしが聞こえてきたが、そんなのにかまっている余裕はねぇんだよ、こっちは。
「ホントに私の事好きなんですか?」
「だから好きだって言ってんだろ」
「えぇ~?信じられない」
「好きじゃなきゃ付き合わねぇだろ」
……ん?さっきもこれ言ったよな。
「本当に私の事好き?」
「っだーー!だから!オレはお前が好きなんだよ!!」
すると周りからクスクスと笑い声が聞こえてきた。
オレは笑い声が聞こえてきている辺りを見渡す。
あ?!なんだよこれ。
もしやーーーと思い、目の前のまなみに目をやると、口元に手をあてプルプルと小刻みに震えている。
そしてついに大きな声で笑い出した。
「あはははは!やだもぉー!三井さんめっちゃ私の事好きじゃないですかー!」
ーーーは!?!!?!!
「三井サンの必死感やべー」
宮城は目に涙を浮かべ、腹を抱えて笑っている。
周りの部員たちもニヤニヤと笑っている。
桜木だけは「なんだ?!どーゆーことだ?!」とキョロキョロしている。
嫌いじゃないぜ、桜木。
「木暮先輩はどの辺で気付きました?」
「あなたが私の彼氏?辺りかなぁ…」
「え、だいぶ早いですね。リョータは?」
「オレは2回目の好きなんですか?辺りかなー」
そんな彩子、木暮、宮城の会話を聞いて全部把握したぜ……。
「まなみ!!!!!」
「ごめんなさいごめんなさい!!」
「全部演技だったのかよ!!!」
「………だって三井さんの『好き』が聞きたかったんですもん」
下を向きしょんぼりとするまなみ。
……んな可愛いこと言われたらもう怒れねぇじゃねぇか。
オレはクシャクシャとまなみの頭を撫でた。
「チョロ井」
「あ?なんか言ったか?宮城」
「いえ、別に」
その時笛がなり、『集合』の号令がかかった。
いつの間にか赤木が来ていたようだ。
走り出そうとしたオレはグイッと腕をつかまれる。
つかんだのはもちろんまなみだ。
そしてまなみはオレの耳元でこう言った。
「嬉しかったですよ。私も好きです、大好き」
パッとつかんでる腕を離し、笑顔で軽くオレに手をふるまなみにオレの顔は今にも緩みそうだった。
バカヤロウ。
オレだって大好きだ。
1/1ページ