相思相愛
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「三井さん!プリクラ撮りに行きましょう!!!」
「あ?プリクラ?」
「えっ、プリクラ知らないんですか?やばくない?」
「知ってるわ!プリクラぐらい!!」
三井さんと付き合って2ヶ月。
いつものように部活を見学して、三井さんと並んで帰り道を歩く。
1日で一番好きな時間。
「撮りたい」
「まじかよ…」
物凄く怪訝そうな顔をする三井さん。
わかってましたよ。
こうなる事ぐらい。
私は「ちぇっ」とむくれる。
「……わぁったよ」
ポン、と私の頭の上に手を乗せる三井さん。
こんな事されて、顔のニヤケを抑えられるはずもないよね。
「それなら早速行きましょう!」
「は?!バカかお前は。もう8時なんだぞ」
「いいじゃないですかー」
「ダメだ。親が心配すんだろ」
ーーーそんな事言われたら何にも言えないじゃん。
私は本日2度目のむくれ顔だ。
すると三井さんが珍しくキュッと手を繋いできた。
私の心臓はうるさく音を立てる。
「日曜」
ボソッと三井さんが言った。
「部活午前中までだから、その後な」
そっぽを向き、照れくさそうに。
街頭の下、私はそんな大好きな彼氏に抱きつく。
「おいっ」と慌てながらも三井さんは優しく私を包んでくれる。
「三井さん大好きです」
「……知ってるっつーの」
「三井さんは?」
「るせぇよ、わかんだろ」
いつもこれ。
あれ?
私、三井さんに『好き』って言われたことある?
あれ?嘘でしょ。
ない?!?!
わかる、わかってるよ。
ちゃんと三井さんは私を好きでいてくれている、、、はず。
けれど、勢いで付き合ってるんじゃないか。
とか
たまたま告白してきたのが私で、他の人でもよかったんじゃないか。
とか
色々考えてしまう時もある。
そんな時欲しいんだよね。
言葉が。
そんな贅沢、思うぐらいいいよね?
ー日曜日ー
私は三井さんと約束を果たすために、ゲームセンターに来ていた。
いつもは友達と入るプリクラ機の中、今日は三井さんと2人。
「ねぇ、三井さん?」
「あんだよ」
「チュープリ撮りたい」
「は?!」
私は撮影の背景の色を画面で選びながら三井さんへ打診してみた。
もちろんダメもとで。
「撮りたいです」
「アホか」
だと思いました。
けど、諦めないんだ。
諦めたらそこで試合終了だからね。
『はーい、今日イチの笑顔でね』
「なんだよこの声は」
「あはは」
プリクラ機のナレーションにツッコミを入れつつ、私たちは楽しく撮り始めた。
そもそも三井さんとプリクラを撮れる事が嬉しくて、私は自然と今日イチの笑顔になる。
三井さんも意外と笑顔になってくれた事に私は驚いていた。
もっとムスッとして撮るのかと思ってたんだけどな。
けど!!!!
私のミッションは終わってないのだ。
「ねえ三井さん、やっぱりチュープリ撮りたい」
「しつけぇな」
「ん」
私は三井さんへと身体を向け、軽く唇を突き出し目をつぶる。
撮影はあと1回。
これがラストチャンス!!!!
「し、しねぇって!!!」
……こーなりゃ必殺技を出すか。
チラッと目をあけ、私は三井さんに言い放つ。
「三井さんのヘタレ」
そしてまた私は目を閉じた。
『これで最後だよ~』
プリクラのナレーションが次が最後の撮影だと知らせる。
『はい、チーズ!!』
私の肩に軽く手が置かれ、そっと唇に柔らかい感触があり、必殺技は成功したと確信した。
「えへへへへ」
「気持ちわりぃな」
「だって嬉しいんですもん」
プリントする画像を選びながら私はニヤニヤが止まらない。
もちろん最初に選んだのは念願叶って撮ったチュープリだ。
「三井さん他のどれがいいですか?」
「あ?どれでもいーよ」
「えぇ~?三井さんどれもかっこいいから悩むんですけど」
うーん、と吟味していると後ろで見ていた三井さんに急にグイッと肩をつかまれる。
驚いている暇もなく、重なり合う唇。
何度も何度も。
『じゃあ、次はラクガキだよ~』
そんなナレーションに私はハッとして、三井さんから無理やり離れる。
「1枚しか選んでない!!!!」
私はキッと三井さんを睨む。
すると三井さんはニヤリと笑いこう言った。
「してほしかったんだろ?」
ーーーぐうの音も出ませんよ。
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「お前爪長ぇだろ?剥がせよ」
そんな事を思い出していると、まだロッカーに貼られたチュープリを剥がそうとしている三井さんに気がつく。
そんなに嫌がることないじゃん。
ちょっとしたイタズラ心ですよーだ!!
ーーなんて不貞腐れてたのに。
「…嫌なんだよ、他の奴らにお前のこんな顔見せるの」
…………ずるくない?
『好き』とか言わないくせに。
そんなの嬉しいし、照れるに決まってるじゃん。
どんな反応していいかわかんないよ。
からかえないじゃん。
しかもまさかのチュープリを電池パックに貼ってくれる始末。
なんだか色々考えてしまってごめんなさい。
三井さん大好きじゃん、私の事。
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「おい、そろそろ携帯返せよ」
「えぇ~?!いいじゃないですか」
あれから数週間ー。
8月に入り、暑い日が続いてる。
学校はもちろん夏休み。
インターハイから帰ってきた湘北バスケ部も、珍しく丸1日のお休みだった。
私は三井さんの部屋のベッドに寝転がり、仰向けになりながら三井さんの携帯を眺めている。
見ているのは画面ではなく、電池パックだけどね。
ちゃーんと貼られている2人のチュープリを。
「つーか、お前も持ってんだろ」
いつの間にか私の目の前には、携帯ではなく三井さんの顔。
ヒョイと携帯を奪われる。
そして三井さんは私に軽く触れるだけのキスをして、ベッドへと腰掛けた。
「なぁ、ホントにお前俺に会ったことねぇか?」
三井さんは奪った携帯の蓋をしめながら話す。
「同じ中学だし、どっかでは会ったことあるんじゃないですかー?きっと」
「うーん…そんなんじゃねぇんだよなぁ」
「中学の時なんて私、三井さんのこと知らないし」
「このスーパースターを知らねぇってのもいい度胸だよな」
嘘。
三井さんの事なんてずぅっと何年も前から知ってる。
嫌というほど知ってる。
でも、今はまだ言わないんだ。
あなたが私を思い出してくれるその日まで。
私は座っている三井さんの腰に手を回し、ギュッと抱きつく。
「三井さんて、私の事大好きですよね?」
「は?!んだよ…いきなり」
「私は好き。大好きです、三井さんの事」
ずっと前からーー。