相思相愛
空欄の場合は「まなみ」になります。
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「くそっ!取れねぇじゃねぇか!」
ロッカーに私が貼ったプリクラを、一生懸命カリカリと剥がそうとしている三井さんの背中を見てクスクスと笑いが込み上げてくる。
大好きな大好きな彼氏の三井さん事を。
中学生の頃からずっと大好きだった三井さんの事を。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初めて三井さんを見たのは私が中一の時。
友達に連れられて行った、バスケ部の試合だった。
そこでまんまと一目惚れというやつをしたのだ。
三井寿に。
けれど、同じ中学とはいえ所詮は1年生と3年生。
つい数ヶ月前まで小学生だった私にとって、2歳年上の三井さんは存在が遠すぎた。
結局三井さんが卒業するまで、一言だって話をすることはできなかったし、もちろん私の存在すら認識される事はなかった。
だから私はそこから努力をした。
三井さんは湘北へと進学したという情報を得たので、勉強も女磨きも。
少しでも三井さんの目に映るように。
「三井くんバスケ辞めたっぽいよ」
2つ年上で、三井さんと同じく湘北へ行った従兄弟から聞かされた事実。
私が中三になったばかりの年の事だった。
「しかもなんかめっちゃヤンキーになってる」
信じられない言葉だった。
あの三井さんが?
けれど、少し時が経ち受験勉強真っ只中の冬の日、私はその言葉を信じざる得ない事になる。
「ねぇ、俺らと遊ばない?」
塾の帰り道、知らない男の人に声をかけられた。
辺りは暗いが、人通りはそれなりにある。
「大丈夫です」と断ってもその男の人は去ろうとする私の腕をつかみ、「いいじゃん」
と離してくれない。
人通りはあるのに、誰も見て見ぬふりだ。
それはきっとこの男の人の風貌が明らかに不良だからだろう。
制服を着てるし、恐らく高校生?
そんな事を考えているうちに徐々に恐怖が増してくる。
どうしよう……。
大きな声で叫ぶ?
いや、そこまでの事でもないし…。
でもやっぱり怖い。
「おい、何してんだよ」
後ろからの声に天の助けかと思い、私は振り返ったが…
その人物を見て、絶望する。
声をかけてきたのは、またまた見るからにヤンキーの高校生だったのだ。
今度はロン毛かよ……って、え?!
私はその人物の顔に見覚えがあった。
ずっと恋焦がれていたその人だったのだ。
「なんだ、三井か」
やっぱり……
このロン毛は三井さんなんだ。
信じたくなかった噂は目の前に事実として現れてしまった。
「それよりあっちで鉄男が呼んでんぞ」
「んだよ…三井この子つかまえといてくれ」
そう言って私の腕をつかんでいた人はその手を離し、この場を去っていった。
つかまえといてくれって、私は動物か!!
「おい」
「はいっ?!」
三井さんに声をかけられ、私は恐る恐る彼を見る。
「ガキは早く帰れ」
「え」
「そのカバン、武石中だろ?」
「あ…はい」
三井さんは私が持っていたカバンを指さす。
私は思わずぎゅっとカバンの紐を強く握った。
「なんにもしねぇよ。ほら、アイツ戻ってくる前に早く帰れよ」
そう言って三井さんは手首をふり、シッシッと私にジェスチャーをした。
「あ、ありがとうございます」
ぺこりと三井さんに一礼をし、私は足早にその場を走り去った。
ドキドキと高鳴る胸の鼓動を感じながら。
複雑だった。
見た目は全く変わっていても、ずっと想っていた人にあんな風にされるとやっぱり……。
結局私は三井さんへの恋心を胸にそのまま湘北高校へと入学する。
が、やはり入学してすぐ見に行ったバスケ部に三井さんの姿はなかった。
それより、校内でも三井さんを見ることはなかった。
入学して1ヶ月以上たったある日、私は三井さんがバスケ部に戻ったと風の噂で聞いた。もちろんすぐにバスケ部を見に行った。
そこには短髪になった三井さんがバスケをしていた。
ーーーえ、かっこよすぎじゃない?
こんなんすぐに彼女できちゃうじゃん!!!
そう思っている私に千載一遇のチャンスが訪れる。
バスケ部を見に来るようになって三日目。
いつものように体育館の入口で友達を道連れにして、三井さんを見ていた。
その時コロコロとボールが1つ、私の足元へと転がってきた。
そのボールを拾い、顔をあげた時私は身動きが取れなくなった。
「わり」
そう言って駆け寄って来たのは三井さん、その人だったから。
金縛りにあったかのように、私の身体はカチコチに動けなくなっている。
もちろんボールを手渡すことすらできない。
「おい?」
三井さんの呼びかけと、友達に肩を揺すられ、ようやくハッと我に返りゆっくりとボールを手渡す。
……無言で、うつむきながら。
今の私は緊張のかたまりだ。
話をする事なんてもちろん、顔を上げることすらできなかったのにーー。
「なぁ、お前どっかで会ったことねぇか?」
そんな三井さんの驚き発言で私は思わず顔をあげた。
「なんかどっかで見たことある気すんだよなぁ…」
まじまじと私の顔を見る三井さん。
あります!あの時の!
心の中でそう叫んだが、声に出せない。
「1年だろ?」
「は、はい…」
「流川手当か?」
る、か、わ?
あぁ、10組の流川くんか。
違う。違います。
「アイツの何がいいんだか……」
そう言って三井さんは立ち去ろうとする。
「違います!!」
気付いたら私は大きな声で言っていた。
もちろん三井さんは驚いて再び私を見る。
ーーもう後戻りはできない。
したくない。
「私のお目当ては三井さんです!」
「俺?!」
「早くツバつけとこうと思って!」
何言ってんの私。
人生初めての告白がこんな言い方ある?
自分で自分に呆れる。まじで。
もっと可愛い言い方あったでしょ。
「ぶっ!なんだよそれ!」
三井さんはギャハハと笑い出す。
そして私の頭をクシャクシャと少し乱暴に撫でた。
「いいぜ、部活終わるまで待ってろよ」
これが私たちの始まりだった。
その時の三井さんの笑った顔を私は一生忘れないだろう。
ロッカーに私が貼ったプリクラを、一生懸命カリカリと剥がそうとしている三井さんの背中を見てクスクスと笑いが込み上げてくる。
大好きな大好きな彼氏の三井さん事を。
中学生の頃からずっと大好きだった三井さんの事を。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初めて三井さんを見たのは私が中一の時。
友達に連れられて行った、バスケ部の試合だった。
そこでまんまと一目惚れというやつをしたのだ。
三井寿に。
けれど、同じ中学とはいえ所詮は1年生と3年生。
つい数ヶ月前まで小学生だった私にとって、2歳年上の三井さんは存在が遠すぎた。
結局三井さんが卒業するまで、一言だって話をすることはできなかったし、もちろん私の存在すら認識される事はなかった。
だから私はそこから努力をした。
三井さんは湘北へと進学したという情報を得たので、勉強も女磨きも。
少しでも三井さんの目に映るように。
「三井くんバスケ辞めたっぽいよ」
2つ年上で、三井さんと同じく湘北へ行った従兄弟から聞かされた事実。
私が中三になったばかりの年の事だった。
「しかもなんかめっちゃヤンキーになってる」
信じられない言葉だった。
あの三井さんが?
けれど、少し時が経ち受験勉強真っ只中の冬の日、私はその言葉を信じざる得ない事になる。
「ねぇ、俺らと遊ばない?」
塾の帰り道、知らない男の人に声をかけられた。
辺りは暗いが、人通りはそれなりにある。
「大丈夫です」と断ってもその男の人は去ろうとする私の腕をつかみ、「いいじゃん」
と離してくれない。
人通りはあるのに、誰も見て見ぬふりだ。
それはきっとこの男の人の風貌が明らかに不良だからだろう。
制服を着てるし、恐らく高校生?
そんな事を考えているうちに徐々に恐怖が増してくる。
どうしよう……。
大きな声で叫ぶ?
いや、そこまでの事でもないし…。
でもやっぱり怖い。
「おい、何してんだよ」
後ろからの声に天の助けかと思い、私は振り返ったが…
その人物を見て、絶望する。
声をかけてきたのは、またまた見るからにヤンキーの高校生だったのだ。
今度はロン毛かよ……って、え?!
私はその人物の顔に見覚えがあった。
ずっと恋焦がれていたその人だったのだ。
「なんだ、三井か」
やっぱり……
このロン毛は三井さんなんだ。
信じたくなかった噂は目の前に事実として現れてしまった。
「それよりあっちで鉄男が呼んでんぞ」
「んだよ…三井この子つかまえといてくれ」
そう言って私の腕をつかんでいた人はその手を離し、この場を去っていった。
つかまえといてくれって、私は動物か!!
「おい」
「はいっ?!」
三井さんに声をかけられ、私は恐る恐る彼を見る。
「ガキは早く帰れ」
「え」
「そのカバン、武石中だろ?」
「あ…はい」
三井さんは私が持っていたカバンを指さす。
私は思わずぎゅっとカバンの紐を強く握った。
「なんにもしねぇよ。ほら、アイツ戻ってくる前に早く帰れよ」
そう言って三井さんは手首をふり、シッシッと私にジェスチャーをした。
「あ、ありがとうございます」
ぺこりと三井さんに一礼をし、私は足早にその場を走り去った。
ドキドキと高鳴る胸の鼓動を感じながら。
複雑だった。
見た目は全く変わっていても、ずっと想っていた人にあんな風にされるとやっぱり……。
結局私は三井さんへの恋心を胸にそのまま湘北高校へと入学する。
が、やはり入学してすぐ見に行ったバスケ部に三井さんの姿はなかった。
それより、校内でも三井さんを見ることはなかった。
入学して1ヶ月以上たったある日、私は三井さんがバスケ部に戻ったと風の噂で聞いた。もちろんすぐにバスケ部を見に行った。
そこには短髪になった三井さんがバスケをしていた。
ーーーえ、かっこよすぎじゃない?
こんなんすぐに彼女できちゃうじゃん!!!
そう思っている私に千載一遇のチャンスが訪れる。
バスケ部を見に来るようになって三日目。
いつものように体育館の入口で友達を道連れにして、三井さんを見ていた。
その時コロコロとボールが1つ、私の足元へと転がってきた。
そのボールを拾い、顔をあげた時私は身動きが取れなくなった。
「わり」
そう言って駆け寄って来たのは三井さん、その人だったから。
金縛りにあったかのように、私の身体はカチコチに動けなくなっている。
もちろんボールを手渡すことすらできない。
「おい?」
三井さんの呼びかけと、友達に肩を揺すられ、ようやくハッと我に返りゆっくりとボールを手渡す。
……無言で、うつむきながら。
今の私は緊張のかたまりだ。
話をする事なんてもちろん、顔を上げることすらできなかったのにーー。
「なぁ、お前どっかで会ったことねぇか?」
そんな三井さんの驚き発言で私は思わず顔をあげた。
「なんかどっかで見たことある気すんだよなぁ…」
まじまじと私の顔を見る三井さん。
あります!あの時の!
心の中でそう叫んだが、声に出せない。
「1年だろ?」
「は、はい…」
「流川手当か?」
る、か、わ?
あぁ、10組の流川くんか。
違う。違います。
「アイツの何がいいんだか……」
そう言って三井さんは立ち去ろうとする。
「違います!!」
気付いたら私は大きな声で言っていた。
もちろん三井さんは驚いて再び私を見る。
ーーもう後戻りはできない。
したくない。
「私のお目当ては三井さんです!」
「俺?!」
「早くツバつけとこうと思って!」
何言ってんの私。
人生初めての告白がこんな言い方ある?
自分で自分に呆れる。まじで。
もっと可愛い言い方あったでしょ。
「ぶっ!なんだよそれ!」
三井さんはギャハハと笑い出す。
そして私の頭をクシャクシャと少し乱暴に撫でた。
「いいぜ、部活終わるまで待ってろよ」
これが私たちの始まりだった。
その時の三井さんの笑った顔を私は一生忘れないだろう。
1/3ページ