痛み
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なにやってんの、私。
これじゃ、あの女の人と一緒じゃん。
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「忙しいんじゃない?彼女とデートで」
そんな私の皮肉たっぷりな言葉は体育館にいた全員が度肝を抜かれた事だろう。
なんだか少しおかしくなるぐらい。
1年付き合っていた洋平と別れた。
理由?
ふられましたとも。
昔好きだった女には勝てなかったって所かな。
そんな事を中学の頃からの先輩だったヤスくんと、同じく中学の頃の先輩でもあり、元彼でもあるリョータくんに話した。
久々に3人で歩くこの道。
私が湘北に入ったばかりの頃はよく3人で帰ったっけ。
ヤスくんは「そっか…」って残念そうな顔で私の話を聞いてくれていた。
リョータくんは……ボケっとしてるなぁ。
ちゃんと私の話聞いてんのかな?
リョータくんとは中学生の頃半年ぐらい付き合っていた。
惚れっぽい私にしては長く付き合った方だと思う。
彼氏が出来てもすぐ他の人を好きになってしまう、ホントに私の悪い癖だ。
そんな私が1年も付き合っていたのが洋平だった。
でもリョータくんとも他に好きな人ができて別れたわけではなかった。
……リョータくんの気持ちが重くて別れたんだけど。
お互いまだまだ子供だったし、もっと歩み寄っていればうまくいっていたのかな?
いや、どっちにしろ湘北に入ったらお互い好きな人ができたのかな。
リョータくんは彩子さんという人。
私は洋平という人。
湘北に入って、元彼が別の女の人にお熱なのを見てなんとも思わなかったわけじゃない。
そりゃ複雑だった。
あんなに自分の事を好きでいてくれた人が、今は違う女の人を好きでいるなんて。
ーよかったねー
そんなのは綺麗事。
そんな風に思えるわけないじゃん。
正直イラッとしたし、ズキっと心が傷んだ。
けど、もう私の中でリョータくんは『過去の人』になっていたのも実感した。
だから洋平と付き合ったし、リョータくんが彩子さんと付き合い始めた時は正直に「よかったね」と言えた。
綺麗事なんかじゃなく。
それなのにーーーー。
久しぶりに感じるリョータくんの体温、ぬくもりに私は甘えた。
「すがりついてよ」
そう言って道端できつく私を抱きしめるリョータくんの背中に手を回し、きゅっとリョータくんのシャツをつかむ。
それに対しリョータくんは一瞬だけ、身体がピクリと動き私から離れ腕をつかみ歩き出した。
直に触れ合う肌、絡み合う舌、ぶつかり合う視線。
いつもとは違う声でお互いの名前を呼び合う。
何も考えずに身体を重ね合う。
ーーー何も考えたくない。
きっとリョータくんも同じ。
同じ気持ちで私たちは抱き合っている。
まだベッドで寝っ転がっているリョータくんに背を向けて、私は制服へと着替えた。
きっとリョータくんは、色んな感情で押しつぶされそうになっているに違いない。
「あーあ、やっちゃったね」
「うっ……」
こんな事ホントは1ミリも思ってない。
ダメなんだ。
リョータくんの中に私が少しでも残るのは。
今のリョータくんには私じゃない。
私じゃない人と幸せになって欲しい。
リョータくんの家から出て、1人で自分の家までを歩く。
ポツリ出てきた涙の意味は私にもわからないままーー。
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