痛み
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俺はなにやってんだよ……。
これじゃアイツの事なんにも言えねえじゃんか。
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「え?!浮気?!」
俺は道端で大声を出す。
「リョータくん声でかい。そ、浮気されて捨てられた」
まなみちゃんの意外すぎる言葉に大声を出さざる得なかったのだ。
「えぇー、なんか意外すぎて……」
ヤスも同感らしい。
こうして部活終わりに3人で帰るのは久々だった。
3人とは、俺、ヤス、まなみちゃんの3人だ。
同じ中学出身の俺らは一個年下でマネージャーでもあるまなみちゃんが湘北に入学した頃、部活が終わったあとによく3人で帰っていた。
けれど、まなみちゃんに「水戸」という彼氏ができてからはその回数は減っていた。
もちろんそれは彼氏であるアイツがまなみちゃんを送っていくからだ。
そしてさらに理由はある。
俺にも彼女が出来たからだ。
高校生活最後の年にアヤちゃんという可愛い可愛い彼女が。
俺とまなみちゃんは中学生の頃付き合っていた。
ふられたあとはかなり引きずったもんだ。
けれど、湘北に入って一目惚れをしたんだよな、アヤちゃんに。
そんなアヤちゃんとようやく付き合うことができて、俺は幸せの絶頂だったんだ。
そんな時にふと気づいた、、、最近水戸が部活を見に来ていないことに。
「最近水戸来ないね?バイト忙しいの?」
部活が始まる前にまなみちゃんに何気なく聞いたのに。
ホントに何気なく。
「あー、忙しいんじゃない?彼女とデートで」
そんなまなみちゃんの言葉に周りにいたヤツらがザワついたのは言うまでもない。
「別れたの?!」「どうして?!」
聞きたかったのに、嫌でも部活は始まってしまう。
「久しぶりに3人で帰ろっか」
そんなヤスの一言で俺たち3人は久々に一緒に帰路についているのだ。
いつもはもちろんアヤちゃんを送っていくけれど、今日アヤちゃんは家の用事で部活を休んでいる。
アヤちゃんが休んでいなかったら、こんな事にはなっていなかったのかもしれない。
それはただの言い訳だ。
「てか、浮気ってホントに?!」
俺は水戸の事はそんなに知らない。
けれど、ホントにまなみちゃんの事が好きで、大事にしていたように見えた。
「ホントだよ。この目で見たもん」
えーーー。
見た……だと?!
「それはそれは熱い口付けを交わしてましたよ」
「「えぇっ?!?!」」
俺とヤスは声を揃える。
「……その人と一緒にいたいんだって」
無理に作るそのくしゃっとした笑顔に俺の心は苦しくて、はち切れそうだった。
「リョータくん?」
「え?!」
「どしたの?ボケっとして」
「えっ?!アレ?!ヤスは?!」
俺は我に返り、キョロキョロと周りを見渡す。
「えぇ~?大丈夫?さっき別れたじゃん、ヤスくんとは」
まなみちゃんは少しだけニヤニヤしながら、俺の顔を覗き込んだ。
「じゃ、また明日ね!」
そう言って手を振ろうとするまなみちゃんに俺は慌てた。
「ちょっ、家の前まで送るよ!」
「いいよいいよ!」
「いや、近いんだし」
「……いいよ、ちょっと1人で歩きたいし」
まなみちゃんの涙声で俺の理性はぶっ飛んだ。
「リョータくん…?」
気付いたら俺はまなみちゃんをきつく抱きしめている。
「……やめてよ。弱ってる時にこんな事されたら、すがりつきたくなる…」
「すがりついてよ」
まるで誰かに仕組まれているかのようだった。
アヤちゃんが今日部活を休んだのも、俺の家に今日誰もいないのも。
「あーあ、やっちゃったね」
「うっ……」
まなみちゃんは俺に背を向け、制服に着替えながら話す。
けれど、振り向いたまなみちゃんの顔は、『やっちゃったね』そんな軽い感じの表情ではない。
寂しそうに少しだけ笑っている。
俺はこんな複雑な感情を知らない。
「じゃあ…また明日、ね」
「待って!!!」
俺は慌ててベッドから出て、俺の部屋から出て行こうとするまなみちゃんの手を掴んだ。
「送るから」
「大丈夫」
「ダメだって」
「安心して、彩子さんにはもちろん、誰にも言わないって!」
「ちがうよ!!そんな事じゃなーー」
「ジョーダンだって」
まなみちゃんはいたずらっぽく、それでも心無く笑う。
「ホントにこれ以上優しくしないで」
「まなみちゃん……」
「リョータくんには幸せになって欲しいもん」
ーー俺には何も言えなかった。
ゆっくりと閉まる部屋のドアを眺める事しかできなかった。
そしてよろよろと歩き、ベッドへと腰をかける。
「…んだよ、覚悟無しでするセックスってこんなキツイのかよ」
俺はこんな感情を知らない。
同情じゃないし、もちろん浮気心なんかでもない。
そして心変わりでもない。
俺は知らない。
こんな感情をーーー。
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