不純
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「ちょっとまなみ!!どうなった?!」
朝イチ教室で私はひとみに物凄い勢いで問い掛けられた。
というか、問い詰められた?
「い、いや……どうもこうも……」
「とりあえずさ!サボろ!!」
「えっ」
私の意見は無視で、今入ってきたばかりの教室からグイグイと背中を押され、退室させられる。
やって来たのは学校から歩いて数分の公園。
「で?!問い詰めたの?!」
ベンチに座りながらグイグイと私に近づいてくるひとみ。
「近い近い」
私はそんなひとみを押し返す。
「……問い詰めてないよ。連絡すらしてないもん」
「えぇ?!?!まじで?!証拠の写メ送ったのに!!」
ひとみは信じられないといった顔で私を見ている。
そりゃそうだろう。
こっちにはバッチリ証拠があるのだ。
逃げられない証拠が。
「まあ、もう冷めてきてたっぽいもんねー、あんた」
「……」
私はそのまま黙り込んだ。
「……なんかあったね?」
さすが親友。
隠し事はできないか。
「あのね……」
私は昨日の三井さんとの事をひとみに話した。
「……まなみやるね」
「……言わないで。まじで恥ずかしい」
感心したかのようにひとみは私を見てくるので、それが恥ずかしくなり私は両手で自分の顔を覆う。
「で、どうだったの?」
「どうだったって?」
私は首を傾げる。
するとひとみはニヤニヤと私を見てきた。
「三井さんとのエッチ」
「?!?!?!」
私は思い出して赤面する。
そんな私を見てひとみは更にニヤニヤ。
面白がっている。一目瞭然だ。
「その様子だとわるくなかったんだねぇ?」
ひとみは人差し指で私の頬をつつく。
「……」
否定せずに黙っているのが私の答えだった。
正直悪くなかった所の話ではない。
そんなに経験人数が多い訳ではないが、あんなに身も心も満たされるのは初めてだった。
プスプスとゆでダコのように自分の顔に赤みが増すのがわかる。
「あ」
その時ひとみが何かを見て大きな口をあけ、一言そう言うとイキナリ立ち上がった。
「邪魔者は去るね」
「は?!何言って……」
私はひとみが見ていた視線の先へと体を向ける。
そこには大きなあくびをしながら歩いてる三井さんの姿があった。
「じゃね!」
ひとみはそそくさとこの場を去り、ポツンと取り残される私。
そんな私に三井さんは気付き、こちらへ歩を進めて来た。
「よぉ、なにサボってんだよ」
「み、三井さんこそ超遅刻じゃないですか」
「うっせぇよ」
そう言いながら三井さんはひとみが座っていた場所、すなわち私の隣へと腰をかけた。
「男とは話したのか?」
「い、いえ…」
待って。
見れない。
三井さんの顔を見れない。
目を合わすことができない。
私の視線は自分の足元へと向いている。
「あのよ」
「はいっ?!」
思わず声が裏がえる。
「……昨日のこと忘れろよ」
下を向いていた私はその言葉に、思わず顔をあげて三井さんを見た。
忘れろって……。
なかったことにしろってこと?
三井さんは後悔してるの?
私の心はズキンと音を立てて痛み出す。
「俺は冬まで部活続けるし、気まずいままなのはお互い嫌だろ……ってお前泣いてんのか?!」
三井さんの言葉で私は初めて気付いた。
ポロポロと自分の目から涙が出ていることに。
「な、なんでお前が泣くんだよ」
アワアワと慌てる三井さん。
「だ、だって……忘れろとか……なかったことにしろ、みたいな……そんな事……」
私は言葉を続ける事が出来ずに再びうつむく。
忘れたくない。
三井さんとのキス。
三井さんのぬくもり。
「まなみ」
今まで聞いたことがない三井さんの優しい声。
そっと私の手を両手で握る三井さん。
「こっち向けよ」
「嫌です」
「いいから向けって」
「無理です」
私は頑なに三井さんの申し出を断る。
絶対嫌だ。
こんな泣いてるブス顔なんて見せたくない。
「っだーーー!!いい加減にしろよ!」
ついに三井さんは強硬手段に出る。
私の両頬を包み込み、無理やり顔をあげさせたのだ。
嫌でも三井さんと目が合ってしまう。
見られたくもないし、見たくもないのに。
私の目は三井さんの視線から逃れられない。
「俺はお前が好きなんだよ」
一瞬、時が止まったかと思った。
が、徐々に顔が赤くなっていく三井さんを見てそんな事はないと確信した。
そして自分の想いも確信して、私はぎゅっと三井さんに抱きつく。
「好きです…三井さんの事が」
三井さんはそんな私を「おせーよ」と言って力強く抱きしめ返した。
「軽い女だと思わないんですか?」
「あ?思ってるぜ」
「え」
「それでも好きなんだからしょーがねぇじゃねぇか…」
私から身体を離しそっぽを向き、顔を真っ赤にさせる三井さんに愛おしさが込み上げてきたのは言うまでもない。
再び私はぎゅっと三井さんに勢いよく抱きついた。
たった1日。
ほんの数時間であなたを好きになりました。
動機は不純かもしれないけれど、あなたを愛しく思うこの気持ちはホントなんだ。
互いに求め合う気持ちは2人とも同じ。
身体だけじゃなく、心もーーーー。