惑溺
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ー学祭当日ー
俺はあれから佐藤とほぼ会話をしていない。
別に喧嘩をした訳でもねぇけど、俺がいつも通りじゃいられなかったんだ。
アイツはいつも通りに挨拶とかしてくれたのに……
絶対気付いてるよなぁ、俺が避けてること。
だけど、好きなやつがいるってわかった今どんな顔で接したらいいんだよ。
俺のリュックには佐藤にもらったキーホルダーが虚しくユラユラと揺れている。
「清田ー!ちょっとガムテープで補修して!!」
「あいよー」
俺らのクラスの出し物はお化け屋敷だ。
これがなかなか評判が良い。
俺は裏方で、今日で最終日の為へたりが出てきているセットを直したりしていた。
「急いで急いで!次のお客さん入って来ちゃうから!」
「へいへーい」
ガムテープの補修を終わらせその場を去ろうとした時、ポンポンと手の上で跳ねさせていたガムテープが手から離れころころと床に転がってしまった。
そして1人の生徒の足元へとぶつかる。
「あ…」
それはお化け役として女幽霊の格好をしている佐藤だった。
……初日から思ってたけど、やっぱり綺麗だな。
薄暗い教室の中でぼんやりと見える佐藤の着物姿はとても綺麗に見えた。
あれ、着物じゃなくて白装束っつーんだっけ?
そんな事を思っていると佐藤は足元のガムテープを拾い、俺の目の前に差し出した。
「あ、わり…」
俺がガムテープを受け取ると、佐藤はくるりと後ろを向き、歩いていった。
黙ったまま。
『ねぇ!どぉ?!この格好!!』
今まで通りならこんな言葉も聞けたんだろうか。
全部自業自得じゃねぇか。
俺はその場からゆっくりと離れようとした、その時。
「ちょっと!離してください!」
「君でしょー?美人女幽霊さんてー、噂になってるよー?」
佐藤が歩いていった方向で嫌な会話が聞こえてきた。
俺は慌てて声が聞こえてきた方へと走り出す。
「佐藤!!」
「信長…」
そこで俺が見た光景は他校の男子生徒2人組に手首を掴まれている佐藤の姿だった。
そんなこったろうと思ったよ。
俺はつかつかと近寄り、佐藤の手首を掴んでいる男子生徒の手を無理やり離した。
「お兄さん達わりぃね!ここそーゆーお店じゃねぇから!」
「うわっ!!!」
俺は男2人組にその辺にあった布をバサっとかぶせ、その隙に佐藤の手を握りその場を猛ダッシュで逃げようとした……が、俺の手はぐっと引っ張られる。
佐藤によって。
「ちょっと、私走れないよ!」
佐藤の足元に目をやると、、、
「げ、下駄……」
まさかの下駄装着。
装着って言うのか?……いやいや!そんな事どうでもいい!!
「つかまれよ!!」
「は?!きゃぁ!!!」
俺はお姫様抱っこというやつをした。
生まれて初めての。
こんな状況でするなんて思ってもなかったぜ…。
とりあえず慌てて教室を出る。
「は?!信長にまなみ?!なにしてんの?!」
「説明はあとだ!!!」
「ちょっと!!まだお客さんいるんだよ?!ちょっとーーー!!!??」
そんなクラスメイトの声を背に俺はそのまま走り出した。
しっかりと佐藤を抱えて。
いつあの男たちが追いかけてくるかわかんねぇ、俺は喧嘩なんてした事ねぇし、まさかする気もねぇ。
どーにかこーにか隠れる場所を探した結果ーー。
「ふぅ…も、もういいだろ」
体育館と本校舎の間。
建物の間に俺らは身を潜めた。
「ね、ねぇ…そろそろおろして」
小さな声で言いにくそうに話す佐藤に俺はハッとする。
「わ、わり!!」
「いった!!!」
急いでおろしたものだから、佐藤は尻もちをついてしまった。
幸いここはコンクリートではなく、草っ原なので俺は少しホッとする。
「信じらんない…起こしてよ」
佐藤は俺に手を差し出した。
……こ、これは別に触ってもいいんだよな?
ドキドキしながら俺は手を出し、佐藤
の手を掴もうとした。
グイッ!!!
「おわっ?!」
いきなり引っ張られた俺の手。
もちろん佐藤に。
それによりバランスを崩し、俺は前のめりになって佐藤の隣で地面に両手を着いた。
「あはは!お返しだよー!!」
笑いながら佐藤は着物についた草を払いながらその場を立つ。
俺は久々に見た佐藤の笑顔に心臓がしめつけられ、立ち上がることが出来なくなっていた。
「なにしてんの?戻ろうよ」
グイッ!!!
今度は俺が地面に座ったまま佐藤の手を引っ張る。
もちろん体制を崩した佐藤は倒れこむ。
俺の腕の中に。
「ちょっと、何すんの…」
俺の腕の中にスッポリと収まった佐藤は慌てているが、抵抗する素振りはない。
俺はギュッと強く佐藤を抱きしめる。
が、それでも佐藤は抵抗しない。
「……なんで抵抗しねぇんだよ」
「……なんでこんな事するの」
「……お前好きなやついんだろ?」
「……なにそれ。私の事フったくせに。」
ーーーーーは?!
フった?!
まてまてまて。話がおかしいぞ。
俺は慌てて佐藤の身体を自分から離した。
すると目の前にはうっすら涙を浮かべた佐藤。
「え?!ちょっと待て!!どーゆー事だよ?!俺がフった?!お前を?!」
なんで好きなやつをフルんだよ。
つか、いつ告られたよ?!
……え、て事は。コイツ俺の事…?!
今俺は人生で1番のパニックを起こしていることだろう。
頭の中がごちゃごちゃで何がどうなっているのか1つも理解できない。
「だって…この間私が言った意味わかったから、ここ最近避けてたんでしょ?私の事。」
「は?!なんの事だよ?」
「……え?!」
俺がますます頭にハテナを浮かべていると、佐藤の顔は見る見るうちに真っ赤になっていく。
「嘘?!わかってなかったの?!え?!私自爆した?!」
佐藤は頭を抱え、俺に背を向けようしたが俺はそれを肩に手を乗せ阻止する。
「なぁ、説明しろよ」
「……」
佐藤は観念したかのようにポツリポツリと、小さく話し始めた。
「あの日、信長と買い出しに言った日。私言ったじゃん」
「なんて」
「『信長だけには好きな人教えない』って」
あぁ。
忘れるわけねぇよ。
それこそ俺はフラれたと思ったんだ。
「それから信長私の事避けてたじゃん」
「うっ……」
「だから言った意味わかっちゃったんだって思った…」
?????
意味?どーゆーことだよ。
それでなんで俺が佐藤をフった事になるんだ……
「え、まだわかんないの?」
佐藤は呆れ顔だ。
「ハッキリ言えよ」
「だから!私が信長の事好きってわかっちゃったんだって思ったの!!」
ーーーは?!
俺はようやくそこでピンと来た。
そーゆー事かよ……。
俺にだけは教えないって。
「俺の事が好きだから、俺にだけは教えないってことかよ!」
「そんな大っきい声で言わないでよ!!」
佐藤は真っ赤な顔で両手を広げ、俺の顔の前へ持ってくる。
その両手を俺はパシッと片手で掴んだ。
そして「はぁぁぁぁ」と大きなため息をひとつつく。
「お前手ちっせぇのな」
「だからさ、もう振り回すのやめてよ…」
「お互い振り回されてんじゃねぇか」
今度は佐藤が見るからに頭にハテナを浮かべている。
鈍いのはお互い様ってやつだな。
夢中になりすぎて判断力なくなってんのか、俺ら2人とも。
俺は片手で掴んでいる佐藤の手を、今度は両手でギュッと握った。
そして息を大きく吸う。
「俺はお前が好きだ」
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「やっとうまくいったの?あんた達」
「「へ?!」」
俺らが教室へ戻ると呆れ顔で俺たちを迎えたクラスメイトたち。
そして説教が始まる。
そりゃそうだろう、まだ客がいる時にメインの女幽霊を俺がさらってしまったのだから。
「い、いや。これにはわけが……」
俺は弁解を試みるが、クラスメイト達の睨みはおさまらない。
これは黙って怒られる方がいいな。
チラッと隣にいる佐藤を見るとバチッと目が合った。
自然に俺らは顔が緩み、笑い合う。
するとクラス中からため息が聞こえてきた。
「こりゃダメだ。バツとして打ち上げで洗いざらい全部話してもらうしかないね」
1人のクラスメイトが言うと「賛成!!」「うんうん」と賛同の声が上がる。
そしてクラスメイト達はゾロゾロと解散して行った。
「……みんなにはバレバレだったのね、私たち」
「そうみたいだな」
当の本人たちだけが鈍かったようだ。
早く素直になりゃよかったな。
だから、今、これからは素直になっていいんだよな。
「佐藤」
「ん?」
「その格好、綺麗だぜ!」
俺はあれから佐藤とほぼ会話をしていない。
別に喧嘩をした訳でもねぇけど、俺がいつも通りじゃいられなかったんだ。
アイツはいつも通りに挨拶とかしてくれたのに……
絶対気付いてるよなぁ、俺が避けてること。
だけど、好きなやつがいるってわかった今どんな顔で接したらいいんだよ。
俺のリュックには佐藤にもらったキーホルダーが虚しくユラユラと揺れている。
「清田ー!ちょっとガムテープで補修して!!」
「あいよー」
俺らのクラスの出し物はお化け屋敷だ。
これがなかなか評判が良い。
俺は裏方で、今日で最終日の為へたりが出てきているセットを直したりしていた。
「急いで急いで!次のお客さん入って来ちゃうから!」
「へいへーい」
ガムテープの補修を終わらせその場を去ろうとした時、ポンポンと手の上で跳ねさせていたガムテープが手から離れころころと床に転がってしまった。
そして1人の生徒の足元へとぶつかる。
「あ…」
それはお化け役として女幽霊の格好をしている佐藤だった。
……初日から思ってたけど、やっぱり綺麗だな。
薄暗い教室の中でぼんやりと見える佐藤の着物姿はとても綺麗に見えた。
あれ、着物じゃなくて白装束っつーんだっけ?
そんな事を思っていると佐藤は足元のガムテープを拾い、俺の目の前に差し出した。
「あ、わり…」
俺がガムテープを受け取ると、佐藤はくるりと後ろを向き、歩いていった。
黙ったまま。
『ねぇ!どぉ?!この格好!!』
今まで通りならこんな言葉も聞けたんだろうか。
全部自業自得じゃねぇか。
俺はその場からゆっくりと離れようとした、その時。
「ちょっと!離してください!」
「君でしょー?美人女幽霊さんてー、噂になってるよー?」
佐藤が歩いていった方向で嫌な会話が聞こえてきた。
俺は慌てて声が聞こえてきた方へと走り出す。
「佐藤!!」
「信長…」
そこで俺が見た光景は他校の男子生徒2人組に手首を掴まれている佐藤の姿だった。
そんなこったろうと思ったよ。
俺はつかつかと近寄り、佐藤の手首を掴んでいる男子生徒の手を無理やり離した。
「お兄さん達わりぃね!ここそーゆーお店じゃねぇから!」
「うわっ!!!」
俺は男2人組にその辺にあった布をバサっとかぶせ、その隙に佐藤の手を握りその場を猛ダッシュで逃げようとした……が、俺の手はぐっと引っ張られる。
佐藤によって。
「ちょっと、私走れないよ!」
佐藤の足元に目をやると、、、
「げ、下駄……」
まさかの下駄装着。
装着って言うのか?……いやいや!そんな事どうでもいい!!
「つかまれよ!!」
「は?!きゃぁ!!!」
俺はお姫様抱っこというやつをした。
生まれて初めての。
こんな状況でするなんて思ってもなかったぜ…。
とりあえず慌てて教室を出る。
「は?!信長にまなみ?!なにしてんの?!」
「説明はあとだ!!!」
「ちょっと!!まだお客さんいるんだよ?!ちょっとーーー!!!??」
そんなクラスメイトの声を背に俺はそのまま走り出した。
しっかりと佐藤を抱えて。
いつあの男たちが追いかけてくるかわかんねぇ、俺は喧嘩なんてした事ねぇし、まさかする気もねぇ。
どーにかこーにか隠れる場所を探した結果ーー。
「ふぅ…も、もういいだろ」
体育館と本校舎の間。
建物の間に俺らは身を潜めた。
「ね、ねぇ…そろそろおろして」
小さな声で言いにくそうに話す佐藤に俺はハッとする。
「わ、わり!!」
「いった!!!」
急いでおろしたものだから、佐藤は尻もちをついてしまった。
幸いここはコンクリートではなく、草っ原なので俺は少しホッとする。
「信じらんない…起こしてよ」
佐藤は俺に手を差し出した。
……こ、これは別に触ってもいいんだよな?
ドキドキしながら俺は手を出し、佐藤
の手を掴もうとした。
グイッ!!!
「おわっ?!」
いきなり引っ張られた俺の手。
もちろん佐藤に。
それによりバランスを崩し、俺は前のめりになって佐藤の隣で地面に両手を着いた。
「あはは!お返しだよー!!」
笑いながら佐藤は着物についた草を払いながらその場を立つ。
俺は久々に見た佐藤の笑顔に心臓がしめつけられ、立ち上がることが出来なくなっていた。
「なにしてんの?戻ろうよ」
グイッ!!!
今度は俺が地面に座ったまま佐藤の手を引っ張る。
もちろん体制を崩した佐藤は倒れこむ。
俺の腕の中に。
「ちょっと、何すんの…」
俺の腕の中にスッポリと収まった佐藤は慌てているが、抵抗する素振りはない。
俺はギュッと強く佐藤を抱きしめる。
が、それでも佐藤は抵抗しない。
「……なんで抵抗しねぇんだよ」
「……なんでこんな事するの」
「……お前好きなやついんだろ?」
「……なにそれ。私の事フったくせに。」
ーーーーーは?!
フった?!
まてまてまて。話がおかしいぞ。
俺は慌てて佐藤の身体を自分から離した。
すると目の前にはうっすら涙を浮かべた佐藤。
「え?!ちょっと待て!!どーゆー事だよ?!俺がフった?!お前を?!」
なんで好きなやつをフルんだよ。
つか、いつ告られたよ?!
……え、て事は。コイツ俺の事…?!
今俺は人生で1番のパニックを起こしていることだろう。
頭の中がごちゃごちゃで何がどうなっているのか1つも理解できない。
「だって…この間私が言った意味わかったから、ここ最近避けてたんでしょ?私の事。」
「は?!なんの事だよ?」
「……え?!」
俺がますます頭にハテナを浮かべていると、佐藤の顔は見る見るうちに真っ赤になっていく。
「嘘?!わかってなかったの?!え?!私自爆した?!」
佐藤は頭を抱え、俺に背を向けようしたが俺はそれを肩に手を乗せ阻止する。
「なぁ、説明しろよ」
「……」
佐藤は観念したかのようにポツリポツリと、小さく話し始めた。
「あの日、信長と買い出しに言った日。私言ったじゃん」
「なんて」
「『信長だけには好きな人教えない』って」
あぁ。
忘れるわけねぇよ。
それこそ俺はフラれたと思ったんだ。
「それから信長私の事避けてたじゃん」
「うっ……」
「だから言った意味わかっちゃったんだって思った…」
?????
意味?どーゆーことだよ。
それでなんで俺が佐藤をフった事になるんだ……
「え、まだわかんないの?」
佐藤は呆れ顔だ。
「ハッキリ言えよ」
「だから!私が信長の事好きってわかっちゃったんだって思ったの!!」
ーーーは?!
俺はようやくそこでピンと来た。
そーゆー事かよ……。
俺にだけは教えないって。
「俺の事が好きだから、俺にだけは教えないってことかよ!」
「そんな大っきい声で言わないでよ!!」
佐藤は真っ赤な顔で両手を広げ、俺の顔の前へ持ってくる。
その両手を俺はパシッと片手で掴んだ。
そして「はぁぁぁぁ」と大きなため息をひとつつく。
「お前手ちっせぇのな」
「だからさ、もう振り回すのやめてよ…」
「お互い振り回されてんじゃねぇか」
今度は佐藤が見るからに頭にハテナを浮かべている。
鈍いのはお互い様ってやつだな。
夢中になりすぎて判断力なくなってんのか、俺ら2人とも。
俺は片手で掴んでいる佐藤の手を、今度は両手でギュッと握った。
そして息を大きく吸う。
「俺はお前が好きだ」
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「やっとうまくいったの?あんた達」
「「へ?!」」
俺らが教室へ戻ると呆れ顔で俺たちを迎えたクラスメイトたち。
そして説教が始まる。
そりゃそうだろう、まだ客がいる時にメインの女幽霊を俺がさらってしまったのだから。
「い、いや。これにはわけが……」
俺は弁解を試みるが、クラスメイト達の睨みはおさまらない。
これは黙って怒られる方がいいな。
チラッと隣にいる佐藤を見るとバチッと目が合った。
自然に俺らは顔が緩み、笑い合う。
するとクラス中からため息が聞こえてきた。
「こりゃダメだ。バツとして打ち上げで洗いざらい全部話してもらうしかないね」
1人のクラスメイトが言うと「賛成!!」「うんうん」と賛同の声が上がる。
そしてクラスメイト達はゾロゾロと解散して行った。
「……みんなにはバレバレだったのね、私たち」
「そうみたいだな」
当の本人たちだけが鈍かったようだ。
早く素直になりゃよかったな。
だから、今、これからは素直になっていいんだよな。
「佐藤」
「ん?」
「その格好、綺麗だぜ!」