惑溺
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7月ーー。
インターハイ予選が終わり、外の空気はすっかり生暖く……というか暑くなり、県大会をもちろん優勝で突破した俺たち海南高校バスケ部は猛練習に励んで……いねぇ!!!
「信長!買い出し行くよ!」
「へいへーい」
買い出しとは…学祭の準備の買い出しの事で、本番まであと2週間。
学校全体で部活が禁止になる時期に差し掛かっているのだ。
な、なげぇ……。
バスケしてぇよぉぉぉぉ!!!
「ねえ、何その顔」
「は?」
俺を買い出しに連れ出したコイツはクラスメイトの佐藤。
並んで歩いていたはずなのに、いつの間にか俺の前に立ちはだかり、人差し指で俺の眉間をグリグリと押してくる。
バスケができねぇ事を考えている俺はきっと、眉間にシワがよっていたのだろう。
「な、なにすんだよ!」
俺は慌てて佐藤の指を手ではらう。
「あ、なに。照れてんの?」
ニヤニヤと意地の悪い顔をして佐藤は俺を見てくる。
……図星だった。
海南に入学して3ヶ月、コイツとはすぐに意気投合して仲良くなった。
女子でこんなに気が合うヤツは初めてで、お互い異性なんて気はこれっぽっちも感じていなかったんだ。
なのにーーー。
「…お前また告られてたろ」
「は?」
「隣のクラスのヤツに」
「やだー覗き見?!」
「たまたまだ!!!」
コイツはモテる。
俺の知ってる1年の中では恐らく1番と言っていいほどに。
最初、俺は女として全く意識していないコイツがどうしてモテるのか理解できなかった。
「なー!信長頼むよ!!」
と、友達にコイツとの仲を取り持ってくれと頼まれるようになってからだ。
俺がコイツを意識し始めたのは。
やたら腹が立った。
コイツが俺じゃない他の男と仲良くする、、、考えただけでイライラする。
そうして俺は自分の気持ちに気付いたんだ。
「信長?」
買い出しにやって来たとある百均の店の中で、佐藤は不思議そうな顔で俺を見る。
商品をしゃがんで見ていた俺の隣で同じくしゃがみこみ、顔を覗き込むようにして。
無防備な顔でジッと俺の顔をまじまじと見つめる佐藤。
俺の心臓はこれでもかというぐらい、バクバクとうるさい。
頼むからそれ以上近づくな……いや、それはそれで……。
いやいやいや!!!
「欲しいの?これ」
俺が見ていた商品を手に取る佐藤。
それは小さなバスケットボールが付いているキーホルダーだった。
「別に」
俺は立ち上がって、グッと腰を伸ばす。
……ホントはちょっと欲しいけど。
こんなガキくせぇの欲しいなんて思われたくねぇしな。
「それより、早く買うもん買って戻ろーぜ」
俺は佐藤が持っている買い出しリストのメモを奪い、歩き出した。
早く戻りたいなんて1ミリも思ってねぇけど。
「うわ、けっこうな量になったね」
カゴいっぱいに詰め込まれた商品たちは、ぎゅうぎゅう詰めになっている。
それでもまだ足りない物もあるらしい。
高校の学祭ってのは大規模なんだな。
レジで精算を済ませ、2つになった大きな袋を俺は持った。
「あ、いいよ!1個持つって!」
慌てて佐藤は俺から袋を奪おうとする。
「こんぐらい大丈夫だって」
「……じゃあ、そんな優しい信長くんにプレゼントだ!」
「は?!なんだよ、『くん』なんて気持ちわりぃ……」
チャリン…と俺の目の前にはさっき見ていた、バスケットボールのキーホルダー。
そしてその先にはキーホルダーをつまみ、にしし、と笑う佐藤の顔。
いつの間に……。
「欲しかったんでしょ?」
「い、いや別に……」
バカだなー俺は。
天邪鬼でガキみてぇじゃねぇか。
「なら、他の男バスの人にあげよー!私とおそろいになるけど」
「は?!」
「可愛いじゃん、これ。私も買っちゃった」
「ほら」と佐藤は得意げにもう1つ同じキーホルダーを指でプラプラと揺らす。
そしてそれを自分のカバンにつけた。
「誰にあげよっかなー。誰が私とおそろいになるのかなー」
そう言いながら佐藤はスタスタと俺の横を通り過ぎ歩き始める。
嘘だろおい。
んなの許せっかよ。
「おい」
俺は足早に佐藤に近づき、声をかける。
そして、顔はそっぽを向き手の平を空に向け、佐藤の顔の前に差し出す。
「くれよ」
すると佐藤は黙って俺が背負っていたリュックにそのキーホルダーを付けた。
そしてニッコリ笑ってこう言ったんだ。
「おそろいだね」
だ、抱きしめてぇ……。
その笑顔俺だけに見せて欲しい。
こんなに独占欲って強くなるもんなんだな。
そんな事を思いながら歩いていると、あっという間にもう学校が近づいてきていた。
「そーいやインターハイ広島だっけ?」
「おう、そーだぜ」
「広島…広島かぁー、行きたいなぁ」
そんな佐藤の言葉に俺はピクリと反応して、思わずその場に立ち止まった。
「……お前さ、バスケ部に好きなやつでもいんの?」
うちのバスケ部は基本部活の見学は禁止だが、佐藤はいつも試合を欠かさずに見に来ていた。
「いるよ」
アッサリと答えた佐藤。
まじかよ。
「だ、だれだよ…」
俺はゴクリと息を呑む。
「……信長にだけは教えないよー!」
「は?!なんだよそれ?!」
「さぁね~!あ、ひとみー!!」
そう言い残して佐藤は校門にいる友人の元へと走って行き、俺はその場にポツンと1人佇むしかなかった。
荷物を両手に抱えて。
なんだよ、なんなんだよ!
俺だけには教えねぇって……。
仲良いって思ってたのは俺だけかよ。
「信長」
「神さん……」
後ろから声をかけてきたのは、バスケ部で1年先輩の神さんだった。
俺が憧れている先輩のうちの1人だ。
「買い出し?」
「あ、はい」
神さんは俺が両手に抱えている荷物を見ながら話す。
「あの子さ佐藤さんでしょ」
?!
神さんは友人と楽しそうに話をしている佐藤の姿を見ながら話してきた。
俺は神さんの口から佐藤の名前が出てきたことに今日1番驚いた。
なんで学年が違う神さんが佐藤の事を?!
俺はあまりの驚きで口をパクパクさせることしかできない。
そして次の神さんの一言で俺はさらに追い打ちをかけられ、何も言えなくなる。
「あの子可愛いよね」
呆然と立ち尽くす俺に神さんは話を続ける。
「俺のクラスメイトもあの子にフラれた奴いるよ」
「……神さん好きなんすか?佐藤の事」
どうにか口から出た俺の言葉。
「教えない」
……神さんがライバルとか勝ち目ねぇじゃんかよ。
「…あいつバスケ部に好きな奴いるっぽいっすよ」
あーあ。
俺は何言ってんだか。
もしかしたら佐藤の好きな奴が神さんだという可能性もあるのに。
「へぇ?誰かは知らないの?」
「俺だけには教えないって言われました…」
すると神さんはプッと吹き出し大きな声で笑いだした。
「な、何がおかしいんすか!!」
「い、いや。ごめ…」
言いながらも神さんはお腹をかかえ、まだ大笑いしている。
「信長は子供だねぇ」
そう言って俺の肩にポンと1度手を置き、神さんはその場を去って行った。
またまた俺は本日2度目の1人ポツンと置き去り状態だ。
やけに晴れ渡る空にイラッとした、そんな1日だった。
インターハイ予選が終わり、外の空気はすっかり生暖く……というか暑くなり、県大会をもちろん優勝で突破した俺たち海南高校バスケ部は猛練習に励んで……いねぇ!!!
「信長!買い出し行くよ!」
「へいへーい」
買い出しとは…学祭の準備の買い出しの事で、本番まであと2週間。
学校全体で部活が禁止になる時期に差し掛かっているのだ。
な、なげぇ……。
バスケしてぇよぉぉぉぉ!!!
「ねえ、何その顔」
「は?」
俺を買い出しに連れ出したコイツはクラスメイトの佐藤。
並んで歩いていたはずなのに、いつの間にか俺の前に立ちはだかり、人差し指で俺の眉間をグリグリと押してくる。
バスケができねぇ事を考えている俺はきっと、眉間にシワがよっていたのだろう。
「な、なにすんだよ!」
俺は慌てて佐藤の指を手ではらう。
「あ、なに。照れてんの?」
ニヤニヤと意地の悪い顔をして佐藤は俺を見てくる。
……図星だった。
海南に入学して3ヶ月、コイツとはすぐに意気投合して仲良くなった。
女子でこんなに気が合うヤツは初めてで、お互い異性なんて気はこれっぽっちも感じていなかったんだ。
なのにーーー。
「…お前また告られてたろ」
「は?」
「隣のクラスのヤツに」
「やだー覗き見?!」
「たまたまだ!!!」
コイツはモテる。
俺の知ってる1年の中では恐らく1番と言っていいほどに。
最初、俺は女として全く意識していないコイツがどうしてモテるのか理解できなかった。
「なー!信長頼むよ!!」
と、友達にコイツとの仲を取り持ってくれと頼まれるようになってからだ。
俺がコイツを意識し始めたのは。
やたら腹が立った。
コイツが俺じゃない他の男と仲良くする、、、考えただけでイライラする。
そうして俺は自分の気持ちに気付いたんだ。
「信長?」
買い出しにやって来たとある百均の店の中で、佐藤は不思議そうな顔で俺を見る。
商品をしゃがんで見ていた俺の隣で同じくしゃがみこみ、顔を覗き込むようにして。
無防備な顔でジッと俺の顔をまじまじと見つめる佐藤。
俺の心臓はこれでもかというぐらい、バクバクとうるさい。
頼むからそれ以上近づくな……いや、それはそれで……。
いやいやいや!!!
「欲しいの?これ」
俺が見ていた商品を手に取る佐藤。
それは小さなバスケットボールが付いているキーホルダーだった。
「別に」
俺は立ち上がって、グッと腰を伸ばす。
……ホントはちょっと欲しいけど。
こんなガキくせぇの欲しいなんて思われたくねぇしな。
「それより、早く買うもん買って戻ろーぜ」
俺は佐藤が持っている買い出しリストのメモを奪い、歩き出した。
早く戻りたいなんて1ミリも思ってねぇけど。
「うわ、けっこうな量になったね」
カゴいっぱいに詰め込まれた商品たちは、ぎゅうぎゅう詰めになっている。
それでもまだ足りない物もあるらしい。
高校の学祭ってのは大規模なんだな。
レジで精算を済ませ、2つになった大きな袋を俺は持った。
「あ、いいよ!1個持つって!」
慌てて佐藤は俺から袋を奪おうとする。
「こんぐらい大丈夫だって」
「……じゃあ、そんな優しい信長くんにプレゼントだ!」
「は?!なんだよ、『くん』なんて気持ちわりぃ……」
チャリン…と俺の目の前にはさっき見ていた、バスケットボールのキーホルダー。
そしてその先にはキーホルダーをつまみ、にしし、と笑う佐藤の顔。
いつの間に……。
「欲しかったんでしょ?」
「い、いや別に……」
バカだなー俺は。
天邪鬼でガキみてぇじゃねぇか。
「なら、他の男バスの人にあげよー!私とおそろいになるけど」
「は?!」
「可愛いじゃん、これ。私も買っちゃった」
「ほら」と佐藤は得意げにもう1つ同じキーホルダーを指でプラプラと揺らす。
そしてそれを自分のカバンにつけた。
「誰にあげよっかなー。誰が私とおそろいになるのかなー」
そう言いながら佐藤はスタスタと俺の横を通り過ぎ歩き始める。
嘘だろおい。
んなの許せっかよ。
「おい」
俺は足早に佐藤に近づき、声をかける。
そして、顔はそっぽを向き手の平を空に向け、佐藤の顔の前に差し出す。
「くれよ」
すると佐藤は黙って俺が背負っていたリュックにそのキーホルダーを付けた。
そしてニッコリ笑ってこう言ったんだ。
「おそろいだね」
だ、抱きしめてぇ……。
その笑顔俺だけに見せて欲しい。
こんなに独占欲って強くなるもんなんだな。
そんな事を思いながら歩いていると、あっという間にもう学校が近づいてきていた。
「そーいやインターハイ広島だっけ?」
「おう、そーだぜ」
「広島…広島かぁー、行きたいなぁ」
そんな佐藤の言葉に俺はピクリと反応して、思わずその場に立ち止まった。
「……お前さ、バスケ部に好きなやつでもいんの?」
うちのバスケ部は基本部活の見学は禁止だが、佐藤はいつも試合を欠かさずに見に来ていた。
「いるよ」
アッサリと答えた佐藤。
まじかよ。
「だ、だれだよ…」
俺はゴクリと息を呑む。
「……信長にだけは教えないよー!」
「は?!なんだよそれ?!」
「さぁね~!あ、ひとみー!!」
そう言い残して佐藤は校門にいる友人の元へと走って行き、俺はその場にポツンと1人佇むしかなかった。
荷物を両手に抱えて。
なんだよ、なんなんだよ!
俺だけには教えねぇって……。
仲良いって思ってたのは俺だけかよ。
「信長」
「神さん……」
後ろから声をかけてきたのは、バスケ部で1年先輩の神さんだった。
俺が憧れている先輩のうちの1人だ。
「買い出し?」
「あ、はい」
神さんは俺が両手に抱えている荷物を見ながら話す。
「あの子さ佐藤さんでしょ」
?!
神さんは友人と楽しそうに話をしている佐藤の姿を見ながら話してきた。
俺は神さんの口から佐藤の名前が出てきたことに今日1番驚いた。
なんで学年が違う神さんが佐藤の事を?!
俺はあまりの驚きで口をパクパクさせることしかできない。
そして次の神さんの一言で俺はさらに追い打ちをかけられ、何も言えなくなる。
「あの子可愛いよね」
呆然と立ち尽くす俺に神さんは話を続ける。
「俺のクラスメイトもあの子にフラれた奴いるよ」
「……神さん好きなんすか?佐藤の事」
どうにか口から出た俺の言葉。
「教えない」
……神さんがライバルとか勝ち目ねぇじゃんかよ。
「…あいつバスケ部に好きな奴いるっぽいっすよ」
あーあ。
俺は何言ってんだか。
もしかしたら佐藤の好きな奴が神さんだという可能性もあるのに。
「へぇ?誰かは知らないの?」
「俺だけには教えないって言われました…」
すると神さんはプッと吹き出し大きな声で笑いだした。
「な、何がおかしいんすか!!」
「い、いや。ごめ…」
言いながらも神さんはお腹をかかえ、まだ大笑いしている。
「信長は子供だねぇ」
そう言って俺の肩にポンと1度手を置き、神さんはその場を去って行った。
またまた俺は本日2度目の1人ポツンと置き去り状態だ。
やけに晴れ渡る空にイラッとした、そんな1日だった。
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