切望
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私は同い年で、隣の家に住んでいる幼なじみの宮城リョータが好き。
でもそんな自分が嫌い。
だって私の『好き』はなんにもならないから、リョータの『好き』は違う女の子に向いているんだから。
「よぉーー!」
大きな声で私がバイトしているラーメン屋に入ってきたのはリョータ。
「いらっしゃい……って今日はまた随分大勢で」
いつもはだいたい1人か、せいぜいヤスくんと2人で来るのに今日はゾロゾロと大人数で店に入ってきたリョータ。
「この人数だと…カウンターとテーブルに分かれてもいい?」
「おぅ、別にいいぜ」
リョータが連れてきたのは湘北のバスケ部。
……なんかカウンターに座った人達ガラ悪くない???
デカいし。
カウンターに座ったのはリョータ含め4人。
リョータと私と同じ中学校だったヤスくん。
それに真っ赤な坊主頭の人と、顎に傷があるガラ悪いイケメン。
……湘北バスケ部怖すぎない?
「花道何食う?」
リョータが赤髪くんに話しかけているのを見て私は思い出した。
「おお、君が『花道』くんか」
「ぬ、この天才を知ってるんですか?」
「リョータから名前だけは聞いてたよ」
直接見るのは初めてだったが、以前リョータから話は聞いていた。
赤髪で1年生の花道くん。
ホントに髪の毛真っ赤だな……。
「三井サンは何にすんの?」
リョータはイケメンに問いかける。
……え、ミツイ?
「ミツイサン?!」
思わず私は大声を出してしまう。
もちろん部員達は一斉に視線を私へと向ける。
やば……。
「あぁ?なんだよ」
三井さん、と呼ばれている男は怪訝そうに眉をしかめ、私の顔を見る。
この人がバスケ部を潰そうとした人。
で、バスケ部に復帰した人。
何人かでリョータを病院送りにさせた人。
「つか、お前誰?宮城のダチ?」
「……幼なじみのまなみです」
三井さんは「ふぅん」とカウンターのテーブルに肘をつき、さほど興味無さそうな返事をする。
なら聞くなよ!!!
心の中で私はそう叫んだ。
この人が、いや、コイツがリョータにあんな怪我を負わせた張本人。
(チャーシュー抜いたろか!!!!)
……さすがにそれはやめておくか。
リョータから「今は湘北になくちゃならねぇ人」とも聞いていたし。
バスケの実力はホンモノらしい。
「ん?お前のだけネギ入ってねぇじゃん」
ズルズルとラーメンを食べながら、三井さんがリョータのラーメンに違和感を感じて話した。
「あ、俺ネギ嫌いなんすよ。なっ!」
私の方へと顔を向け、二カッと笑う。
リョータは小さい頃からネギがダメだった。
そんなリョータ豆知識を持っていたって、なんの意味もない。
私だけの一方的な想い。
リョータにとっては何でもないこの笑顔も、私にとっては最高のご褒美。
「なぁ、なんで最近お前試合見にこねーの?インターハイも来ねぇ気?」
リョータが帰る時間と私のバイト終わりの時間が重なったため、家までの帰り道を2人並んで歩く。
唐突なリョータの私への質問だった。
湘北は夏の全国大会への切符を手に入れていた。
「えっ、いや…バイトとか…あるし」
思わず私はリョータから顔を背ける。
「ふぅん」
リョータは納得のいかない顔をしている。
そりゃそうだろう。
小学生の頃から欠かさずに私はリョータの試合を見に行っていたのだから。
そんな私がいつの頃からかまったく見に行かなくなったのだ。
だって見たくないもん。
他の女の子の為にバスケを頑張るリョータなんて。
最初に話を聞いたのは高校へ入学してすぐだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「まなみ!まなみ!!」
バンっ!!と私の部屋のドアをノックもせずに開け、部屋に入ってくるリョータ。
ホントにコイツは……なんて思いながらも、この勝手な訪問を嬉しくも思う。
「俺やっぱりバスケやる!」
「え?!ホントに?!」
リョータは高校に入ってもバスケをするか悩んでいた。
小学生の頃からバスケをやっているリョータを見ている私にとって、バスケをやらないリョータなんて信じられなかった。
そして何よりバスケをしているリョータが大好きだった。
だから、まだ続けるというこの発言はすごく嬉しかった。
ーーのだが、リョータの次の発言で地の底へと落とされる。
「アヤちゃんの為に俺が湘北を強くする!!」
『アヤちゃん』?
誰???
「すっげぇ好みの子がマネージャーでさ!まじで超可愛いの!!!!」
……そういう事かと私は呆れた。
まあ、動機はどうであれバスケを続けてくれる事が嬉しかった。
最初は。
昔からリョータは惚れっぽかった。
ちょっと顔が好みの子がいるとスグ好きになっていた。
が、相手にされず終わる。
こんなパターンをいくつも見てきた。
どうせまた相手にされない。
リョータが好きになる子はいつでも美人で、高嶺の花だから。
そしていつも本気さが感じられなかった。
だから心のどっかで安心していたんだ。
なのにーー。
1年生でリョータはすぐにレギュラーとして、試合に出ていた。
学校は変わってしまったけれど、私は今までのように応援に行く。
私たちには決まりごとがあった。
リョータがナイスプレーをした時には真っ先に私に向かってピースをする。
いつの間にかこれがお決まりになっていた。
それは高校に入ってからも変わらなかった。
1つ変わったのは、私にピースをした後必ず『アヤちゃん』に猛烈なアピールをする事。
そんな姿を目の当たりにして、今まで通りに応援なんてできるはずないじゃん。
いつか私へのピースがなくなる…そんな気がして、それが怖かった。
そうしていつからか私は、リョータの試合へ足を運ぶことをやめたのだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
私は自分の部屋のカーテンを開け、窓の向こうにあるすぐ目の前のリョータの部屋の窓へと目を向ける。
手を伸ばせば、届いてしまいそうなぐらいお互いの部屋の窓は近い。
「こんなに近いのにな……」
もちろんリョータの部屋のカーテンは開くことはなく、私はそっとカーテンを閉めた。
でもそんな自分が嫌い。
だって私の『好き』はなんにもならないから、リョータの『好き』は違う女の子に向いているんだから。
「よぉーー!」
大きな声で私がバイトしているラーメン屋に入ってきたのはリョータ。
「いらっしゃい……って今日はまた随分大勢で」
いつもはだいたい1人か、せいぜいヤスくんと2人で来るのに今日はゾロゾロと大人数で店に入ってきたリョータ。
「この人数だと…カウンターとテーブルに分かれてもいい?」
「おぅ、別にいいぜ」
リョータが連れてきたのは湘北のバスケ部。
……なんかカウンターに座った人達ガラ悪くない???
デカいし。
カウンターに座ったのはリョータ含め4人。
リョータと私と同じ中学校だったヤスくん。
それに真っ赤な坊主頭の人と、顎に傷があるガラ悪いイケメン。
……湘北バスケ部怖すぎない?
「花道何食う?」
リョータが赤髪くんに話しかけているのを見て私は思い出した。
「おお、君が『花道』くんか」
「ぬ、この天才を知ってるんですか?」
「リョータから名前だけは聞いてたよ」
直接見るのは初めてだったが、以前リョータから話は聞いていた。
赤髪で1年生の花道くん。
ホントに髪の毛真っ赤だな……。
「三井サンは何にすんの?」
リョータはイケメンに問いかける。
……え、ミツイ?
「ミツイサン?!」
思わず私は大声を出してしまう。
もちろん部員達は一斉に視線を私へと向ける。
やば……。
「あぁ?なんだよ」
三井さん、と呼ばれている男は怪訝そうに眉をしかめ、私の顔を見る。
この人がバスケ部を潰そうとした人。
で、バスケ部に復帰した人。
何人かでリョータを病院送りにさせた人。
「つか、お前誰?宮城のダチ?」
「……幼なじみのまなみです」
三井さんは「ふぅん」とカウンターのテーブルに肘をつき、さほど興味無さそうな返事をする。
なら聞くなよ!!!
心の中で私はそう叫んだ。
この人が、いや、コイツがリョータにあんな怪我を負わせた張本人。
(チャーシュー抜いたろか!!!!)
……さすがにそれはやめておくか。
リョータから「今は湘北になくちゃならねぇ人」とも聞いていたし。
バスケの実力はホンモノらしい。
「ん?お前のだけネギ入ってねぇじゃん」
ズルズルとラーメンを食べながら、三井さんがリョータのラーメンに違和感を感じて話した。
「あ、俺ネギ嫌いなんすよ。なっ!」
私の方へと顔を向け、二カッと笑う。
リョータは小さい頃からネギがダメだった。
そんなリョータ豆知識を持っていたって、なんの意味もない。
私だけの一方的な想い。
リョータにとっては何でもないこの笑顔も、私にとっては最高のご褒美。
「なぁ、なんで最近お前試合見にこねーの?インターハイも来ねぇ気?」
リョータが帰る時間と私のバイト終わりの時間が重なったため、家までの帰り道を2人並んで歩く。
唐突なリョータの私への質問だった。
湘北は夏の全国大会への切符を手に入れていた。
「えっ、いや…バイトとか…あるし」
思わず私はリョータから顔を背ける。
「ふぅん」
リョータは納得のいかない顔をしている。
そりゃそうだろう。
小学生の頃から欠かさずに私はリョータの試合を見に行っていたのだから。
そんな私がいつの頃からかまったく見に行かなくなったのだ。
だって見たくないもん。
他の女の子の為にバスケを頑張るリョータなんて。
最初に話を聞いたのは高校へ入学してすぐだった。
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「まなみ!まなみ!!」
バンっ!!と私の部屋のドアをノックもせずに開け、部屋に入ってくるリョータ。
ホントにコイツは……なんて思いながらも、この勝手な訪問を嬉しくも思う。
「俺やっぱりバスケやる!」
「え?!ホントに?!」
リョータは高校に入ってもバスケをするか悩んでいた。
小学生の頃からバスケをやっているリョータを見ている私にとって、バスケをやらないリョータなんて信じられなかった。
そして何よりバスケをしているリョータが大好きだった。
だから、まだ続けるというこの発言はすごく嬉しかった。
ーーのだが、リョータの次の発言で地の底へと落とされる。
「アヤちゃんの為に俺が湘北を強くする!!」
『アヤちゃん』?
誰???
「すっげぇ好みの子がマネージャーでさ!まじで超可愛いの!!!!」
……そういう事かと私は呆れた。
まあ、動機はどうであれバスケを続けてくれる事が嬉しかった。
最初は。
昔からリョータは惚れっぽかった。
ちょっと顔が好みの子がいるとスグ好きになっていた。
が、相手にされず終わる。
こんなパターンをいくつも見てきた。
どうせまた相手にされない。
リョータが好きになる子はいつでも美人で、高嶺の花だから。
そしていつも本気さが感じられなかった。
だから心のどっかで安心していたんだ。
なのにーー。
1年生でリョータはすぐにレギュラーとして、試合に出ていた。
学校は変わってしまったけれど、私は今までのように応援に行く。
私たちには決まりごとがあった。
リョータがナイスプレーをした時には真っ先に私に向かってピースをする。
いつの間にかこれがお決まりになっていた。
それは高校に入ってからも変わらなかった。
1つ変わったのは、私にピースをした後必ず『アヤちゃん』に猛烈なアピールをする事。
そんな姿を目の当たりにして、今まで通りに応援なんてできるはずないじゃん。
いつか私へのピースがなくなる…そんな気がして、それが怖かった。
そうしていつからか私は、リョータの試合へ足を運ぶことをやめたのだ。
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私は自分の部屋のカーテンを開け、窓の向こうにあるすぐ目の前のリョータの部屋の窓へと目を向ける。
手を伸ばせば、届いてしまいそうなぐらいお互いの部屋の窓は近い。
「こんなに近いのにな……」
もちろんリョータの部屋のカーテンは開くことはなく、私はそっとカーテンを閉めた。
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