罪 (パターン2)
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「宮城、てめぇどういう事だ」
つかつかと近寄り、リョータくんの胸ぐらを掴む三井さん。
「待って!三井さん!!」
私は慌てて2人の間に割って入ろうとするが「お前は黙ってろ」と三井さんに一喝される。
「どうもこうもねぇよ」
リョータくんは三井さんに胸ぐらを掴まれたまま、それを離そうとする事はせず話を続ける。
「俺が世界で1番まなみちゃんを好きって事っすよ」
リョータくんは三井さんを真っ直ぐに見て力強く言った。
「……っ」
「わっ」
三井さんは私の腕を力強く掴み「いくぞ」と言いながら歩き出した。
「三井さん!!」
後ろからリョータくんは大声で呼びかける。
その声にピタリと歩くのをやめるが、三井さんは振り向くことをしない。
「俺、引く気ねぇから」
そんなリョータくんの言葉を背に、三井さんは私の腕を掴んだまま再度歩き出した。
「ちょっと…三井さんっ、腕痛いっ…」
そんな私の言葉は受け入れられず、三井さんは腕を掴んだままガチャガチャと私の家の鍵を開ける。
そして、勢いよくドアをあけ中に入り、玄関の壁に強く私を押し付けた。
「いたっ…」
「いつからだ」
「……」
「いつからアイツと会ってた?」
私の両手首を壁におさえ、今まで見たことの無い表情で聞いてくる三井さんに私は言葉を失った。
「……俺が気づかないと思ったか?」
「えっ…」
「なめんなよ。お前が最近様子おかしい事ぐらいわかってんだよ」
「三井…さん…」
まさか気づいていたなんてーー。
「だけど、まさか相手が宮城だとはな……」
「?!んぅっ…」
三井さんは無理やり私にキスをしてくる。
「なぁ、お前触らせたのか?」
そう言いながら、片手で私の両手首を壁におさえたまま、もう片方の手はスルスル服の中へといれ背中を撫でる。
「やっ……」
「…何したら、いいんだよ」
私を掴んでいた手を離し、三井さんは握りこぶしを作り両手を壁に勢いよく叩きつける。
「三井…さん」
「アイツみたいに『世界で1番好きだ』って言えばいいのか?いつでもそばにいて、態度で示せばいいのか?」
再び激しく唇を重ねる。
2人の吐息が玄関に響き渡る。
「っはぁ…まなみっ…」
「ぁっ…み、ついさっ…」
こんなに激しく、必死に三井さんに求められたのは初めてだった。
単なる独占欲なのかもしれないが、愛されているという幸福感を私は感じていた。
こんな時に感じたくなかった…。
ー私は三井さんを裏切ったー
そんな気持ちで心が潰れそうだったから。
「どこにもやらねぇからな…まなみの事」
そう言って三井さんは私を強く抱き締める。
「……うん」
私は頷き、三井さんを抱き締めかえした。
そしてひとつの決心をする。
ーーーーーーーーーーーーーーー
『仕事終わったら電話ください』
俺は職場のデスクで携帯のLINE画面を見ながら深い溜息をついた。
そして、席を立ち人通りの少ない廊下へ出る。
それから手に持っている携帯で、電話帳の中にあるまなみちゃんの番号へと電話をかける。
『も、もしもし…』
少し緊張しているようなまなみちゃんの声。
「仕事、終わったよ」
『お疲れ様』
「うん。で、ちゃんと俺をフる言葉は考えてきた?」
『えっ…?!』
「会ったら決心鈍るから、電話にしたんでしょ?」
『…リョータくんにはお見通しだね』
「まなみちゃんの事はわかるよ。好きな食べ物は桃!とか」
『ふふ、知ってんだね』
「高校の頃言ってたじゃん?」
『……よく覚えてるね』
「まなみちゃんの事だもん。覚えてるよ」
そう。
覚えてるに決まってる。
まなみちゃんの事、忘れたくても忘れらんねーんだもん。
だから、わかっちまうんだよなぁ……。
『…リョータ、、くん…』
「三井サンが好きなんでしょ?」
『…………』
「言ったでしょ。まなみちゃんの事ならわかるって」
『ホントにお見通しだね』
「あーあ!引く気はない!なんて言ったけどさーぁ、引くしかねーじゃん?!」
『ごめーー』
「だから、謝んないでって!」
俺はまなみちゃんの言葉を遮る。
聞きたくねぇもん……。
ごめんー、なんて。
「……謝んないでよ、惨めになるから」
『リョータくん……』
「ま、しゃーねぇよ!三井サンにも悪い事したしな!あ、でも謝んねぇよ!」
ははは、と俺は笑う。
少しでもまなみちゃんの罪悪感を消すために。
それにこうでもしねぇと……。
「じゃーね、まなみちゃん!」
『うん…リョータくん、さよなら』
そう言って2人の通話は終わった。
俺は廊下の壁にトンと、背中をつける。
「はは、あっけねぇー……」
リョータくんとの電話を終えた私は、必死で涙を堪えていた。
私に泣く資格なんてないのだから。
リョータくんの愛情に甘え、好き勝手に振り回してきたのは私だ。
そして結局リョータくんの元へはいかない。
そう決めたのだから、泣く事なんて許されないーー。