胸中
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リョータくんと合コンで出会ってから2ヶ月。
私達は時間を見て出かけたり、ご飯を食べに行ったりしていた。
もちろん、ヤる事もヤる。
でも付き合ってはいない。
相も変わらず私は「アヤちゃんに似た女」のままだ。
今日は仕事が終わった後、近くで開催されているビアガーデンに2人で来ていた。
「「おつーーー!」」
2人で声を揃え乾杯をする。
「ぷはー!仕事後のビール最高かよ」
「リョータくん働いてないじゃん」
「俺にとってバスケは仕事みたいなもんだもん」
今日も大学で練習があったようだ。
グビグビとビールを一気に飲み干すリョータくん。
「でもまじでバスケ仕事にしようかな……」
「応援しますよ」
「ホントに?」
「もちろん!来てるんでしょ?スカウト」
「そっ」
「受けなよ!超応援する!……むしろ応援しかできないけど」
「まなみちゃんが応援してくれるなら、俺頑張れる気がする」
二カッと笑うリョータくんに私の心臓が跳ね上がったのは言うまでもない。
『まなみちゃんが応援してくれるなら』
ホントにそう思ってくれてる?
……期待していいの?
~♪~♪~♪
その時私の携帯の着信音が鳴った。
「あ、ひとみからだ」
「お、ひとみちゃん」
ひとみはリョータくんの合コンへ誘ってくれた私の友人なので、リョータくんとも面識がある。
「ちょっとごめんね」
私はリョータくんに断りをいれてから、通話ボタンを押す。
「うん、金曜日?うん、空いてるよ……え?!合コン?!」
まなみのその言葉にピタッとビールを飲むのを止めたリョータ。
そしてまなみとひとみの通話に耳をかたむける。
「いや、あいてるけど…うん、うん」
(行くのか?!行くのかよ?!)
リョータは心の中でそう叫ぶ。
まなみはリョータの方をチラッと見る。
リョータはそれに気付き、気にしてないフリをする。
「やっぱり、ごめんね。うん、行けないや。」
そう言ってまなみは電話を終わらせた。
「リョータくん?」
私はボーッとしているリョータくんの顔の目の前で、自分の手をヒラヒラと動かす。
「わっ!」
我に返ったリョータくんは目を大きくさせ驚いた。
「なにをボーッとしてんの?」
「いや…まなみちゃん、あのさ……」
と、その時リョータくんは何かに気付き、その後の言葉を飲み込んだ。
「あら、リョータじゃない」
リョータくんが気付いたというのは1人の女性の姿だった。
「アヤちゃん!!」
パァっと顔をほころばせ、席をたちその女性の元へと駆け寄るリョータくん。
あの人が『アヤちゃん』……。
確かに雰囲気は私に似てるかもしれないけど、私はあんなに美人でもないしスタイルも良くないよ。
全然違うじゃん。
私は楽しそうに会話をする2人を横目で見て、気付いてしまったんだ。
あるひとつの事に。
「はー、びっくりした」
しばらくしてリョータくんは席に戻ってきた。
「……行こっかな、合コン」
「へ?!」
「似てないじゃん、私とアヤちゃん」
「え?!あ、うーん…」
しどろもどろになるリョータくんを後目に私は席をたった。
「え?!まなみちゃん?!」
「帰るね」
「え?!ちょっとどーしたの?!」
「うまくいきっこないんだよ…私達は」
私はそう言うとリョータくんの呼びかけを無視して、足早にその場を去った。
私が気付いたひとつの事。
たとえ私とリョータくんが付き合ったとしても、絶対にうまくいかない。
『アヤちゃんに似ているから』
そんな形で入ってしまったなら、私はアヤちゃんを超えることはできないだろうし、一生心の根元に引っかかってしまう。
この引っ掛かりを取る事は出来ないということ。
気付いたこと……と言っても、今まで気付かないフリをしていただけだ。
家に着くまでに何度かリョータくんから着信とLINEが入っていた。
私はリョータくんの番号を着信拒否設定をして、LINEもブロックした。
こうでもしないと忘れられないもん。
絶対にーーーー。
ポタポタとスマホの画面に涙がこぼれ落ちた。
ー金曜日ー
「かんぱぁぁぁい」
私はひとみから誘われていた合コンに来ていた。
元々うじうじするのが好きではない私は、これもひとつのキッカケだと合コンの参加をOKしたのだ。
が、そううまくはいくものではなく。
どうしても思い出してしまう、リョータくんの事を。
「ほら!まなみちゃん飲み足りないんじゃない?!」
1人の男が私の肩を抱きながらお酒をすすめてきた。
あーあ…リョータくんならこんな事しないよなぁ。
ため息をつきながら、「重症だ」とつぶやく。
ほら、こっちに来る人までリョータくんに見える………………って
「リョータくん?!?!」
私は慌てて席を立った。
それは紛れもなく本物のリョータくんだった。
「いた!!!!」
リョータくんは私に気付き、近づいてくる。
そして私のカバンを持ち、そのまま腕をつかみ歩き出した。
もちろん周りの人は驚き、ザワついている。
「ちょ、ちょ、ちょ」
「ひとみちゃん、ありがとね!」
「いいえ~貸しにしとくね」
ひとみはニヤニヤしながら手を振る。
「は?!どゆこと?!」
リョータくんはそのまま私を店の外へと連れ出す。
そしてタクシーに乗った。
タクシーに乗った私達は手を繋ぎながら無言。
な、なんで……?
てか、リョータくんが無言とか怖すぎるんだけど。
着いた先は何度か来たことがあるリョータくんの家。
そのまま手を引かれ、家の中へと入る。
そして玄関のドアが閉まる前に私はリョータくんの腕の中へと包まれた。
「合コンなんて行かないでよ…」
「え」
「てゆーか、どこにも行かないで」
リョータくんは私を抱きしめている力を強くする。
「俺のそばにいて……」
吐き出すようなリョータくんの言葉に私は泣きそうになる。
「俺はまなみちゃんが好きだ」
真っ直ぐに私を見つめ、リョータくんは言う。
「アヤちゃんに似てるから、じゃなくて。まなみちゃんが好きだ」
そんなリョータくんに私は思わず目を背けてしまう。
「で、でも…リョータくんはアヤちゃんの面影を私に探してんだよ」
私は目を背けながらも、リョータくんの腕をぎゅっと掴む。
「そんな事ねぇよ」
「だ、だってあんな顔見たことない!」
「あんな顔?」
「アヤちゃんと会った時、嬉しそうにして…それでも切なそうな顔。」
「あぁー」
「……忘れられないんでしょ?」
するとリョータくんはプッと笑いだした。
「なんで笑うの?!」
「あはは、ごめんごめん!アレは違うって」
「なにが?」
「気付いたんだよ、あの時」
そっと私の頬に手をかけるリョータくん。
すごく優しい瞳で私を見つめながら。
「いつの間にか俺の一番はアヤちゃんじゃなくて、まなみちゃんになってるって事に」
「…え」
「俺がどんな顔してたかわかんねぇけど……」
そう言ってリョータくんは私に優しくキスをした。
「今の俺の顔見ても信じられない?俺の事」
照れくさそうに、それでも嬉しそうに笑うリョータくん。
ずるいよ。
そんな顔されたらもう離れられなくなる。
私の心の引っ掛かりなんて、あっという間になくなってしまう。
「私、リョータくんの事まだ好きでいていいの?」
思わず涙が出る。
泣きたいわけじゃないのに、ポロポロと涙がこぼれ落ちる。
そんな私の涙をぬぐいながらリョータくんは優しく言った。
「ずっと好きでいて」
言ったな?
覚悟してよ?
ずっとずっと好きでいるんだから。
リョータくんの1番をキープしてやるんだから。
私はそのままぎゅっとリョータくんに抱きつき、彼の体温を全身で感じるのだった。