恋雪
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「さーて、部活、部活!」
帰りのホームルームが終わり、ウキウキしながら部活へ行く準備をしているのは、隣の席の宮城リョータ。
バスケ部のキャプテンで私の好きな人。
そして、私の友人の彩子の事が大好きな人。
「今日はいつもよりウキウキしてんね」
帰り支度をしながら私は問いかける。
「だって!今日はバレンタイン!!」
ふんふんと鼻息を荒くするリョータ。
「アヤちゃんから貰えるかも!!」
「……義理でも嬉しいの?」
ちょっと意地悪を言う。
「アヤちゃんから貰えるなら!!って切ない事言うなよなぁ……」
はいはい。
わかってますよ。
「あたしがなに?」
「アヤちゃんっ!!」
女の私から見ても、彩子は美人だし魅力的。
私が男なら惚れちゃうよなぁ。
私が自分の気持ちに気付いた時、変な感じだったな…。
「絶対に叶わない」っていう絶望と「同じ空間にいるだけで幸せ」っていう恋独特のトキメキ。
リョータの彩子への気持ちを目の当たりにする度へこんでた時期もあったっけ。
だけど、嫌いになれないんだから…
というか、「好き」から離れられないんだからどうしようもない。
「あっ!アヤちゃん待ってよ!!」
「リョータ!!!」
彩子を追いかけようとするリョータに私は声をかける。
「ん?どうした?」
スっとラッピングされた小さな箱を手渡す。
「え、、、これ」
リョータは首をかしげる。
「バレンタイン」
「えっ?!まじで?!やべぇ!ありがとう!!!」
顔を明るくして喜ぶ、そんなリョータに私は言い放つんだ。
「本命だからね」
「え」
「だから、私はリョータが好き」
目を丸くして、明らかに戸惑っているリョータは少しずつ顔が赤くなっていく。
それから、バツの悪そうな顔になる。
「あ…俺、アヤちゃんが…」
「知ってる」
私はリョータの言葉を遮り、ニコッと笑い、教室から出ていく。
そしてバス停までの道のりを1人で歩く。
「あ…雪」
寒空を見上げながら、先程の出来事が頭の中を駆け巡る。
『俺、アヤちゃんが…』
知ってる、知ってるっつーの。
嫌ほど知ってる。
そんなの痛いほど知ってる。
さっき教室で私の無謀な告白を聞いていたクラスメイトがいたかもしれない。
だけど、そんな事気にしていなかった。
気になんてしていられなかった。
どうしても今日だった。
なぜかって?
思い出してくれるかもしれないじゃない?
バレンタインが来る度に、告白してくれた子がいたなぁって。
バレンタインの思い出は?って誰かに聞かれる度に、本命って言ってくれた子がいたなぁって。
少しでもリョータの心の中にいたい。
そんなかわいい乙女心じゃん。
「はぁ…雪とか寒いよぉ。」
コートのポッケに手を入れながら私は歩く。
「ホントに…涙が出るぐらい寒いなぁ。」
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